F1の2ストップ義務化は結論を先送り 2026年シーズンも議論継続
1レースあたり2回のピットストップを義務付けるという、非常に賛否の分かれる提案が、F1コミッションに正式に提出され、議論された。しかし、明確な結論には至らず、メンバーは「このアイデアを即座に否定しない」という点にのみ同意した。

今年4回目となるF1コミッションの最終会合は、11月14日(金)にロンドンのFIAオフィスで開催され、FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスが議長を務めた。

強制2ストップ案は、今年のモナコGPで一度導入された際に賛否が割れ、結果も芳しくなかった。しかしシーズン後半に入り、戦略の多様性が乏しいレースが続いたことで、ここ数週間で再び勢いを得ていた。これは、ピレリがアメリカGPとメキシコGPでコンパウンドの“ステップ”を導入したにもかかわらず、依然として1ストップ戦略が成立してしまったことも背景にある。

チーム代表たちが“事前に示していた”強制2ストップへの懸念
提案の支持者は、2ストップ義務化がレースにさらなる不確実性を生み、戦略の幅をもたらすと主張する。一方、反対派は、全車がほぼ同じ周回でピットインする“最適解の収束”が起き、実際には逆効果になると懸念している。

FIAは会合後の声明で次のように述べた。

「グランプリにおける2回のピットストップ義務化の検討に加え、タイヤ仕様、タイヤ寿命制限、レース中に3種類のコンパウンドを使用する案などが議論された」

「議論は、チームおよびピレリから提出された分析やシミュレーションに基づくフィードバックが中心となった。現時点では変更は合意されなかったが、このテーマについては2026年シーズンを通して議論を継続することが決まった」

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チーム代表たちが“事前に示していた”強制2ストップへの懸念
F1コミッションでこの案が扱われる前から、複数のチーム代表はすでに「強制2ストップは逆効果になり得る」と警告していた。

ウィリアムズのチーム代表ジェームス・ボウルズは、ブラジルGP週末に次のように語っていた。

「最も心配なのは、我々全員がほぼ同じ戦略、ほぼ同じ周回でピットインするようになることだ。2ストップを義務付ければ、そうせざるを得なくなる」

元メルセデスの戦略責任者であるボウルズは、さらに続けた。

「まず重要なのは、タイヤのデグラデーションとコンパウンド間の性能差という“基礎”を整えることだ。それが整っていれば、強制ルールにも反対しない。しかし現状では、来年のレースで戦略の多様性が減るだろうという懸念がある」

マクラーレンのアンドレア・ステラも強制ルールが“自然な戦略差”を失わせると指摘していた。

「1ストップのドライバーと、2ストップのドライバーがいて、2ストップのドライバーが1ストップを追い詰める——そうしたレースを我々は多く見てきた。しかし義務化すれば、それが明確に消えてしまう」

「だから非常に慎重に考える必要があり、我々も慎重に対応している。F1コミッションでも議論されるだろうし、正しい結論に到達すると確信している」

レーシングブルズのアラン・パーメインも同様の警告を発していた。

「みんな2ストップ以上のレースは好きだと思うが、注意すべき点がある。2ストップレースが難しい理由のひとつは、タイヤが本当に2ストップ向きではない場合があることだ。2ストップを要求するタイヤが必要だ」

「もし2ストップを強制すると、全車が同じ戦略になり、実際には逆効果になる可能性がある」

モナコGPでの“強制2ストップ”が残した悪影響
今年のモナコGPでは単発ルールとして2回のタイヤ交換が義務付けられたが、多くのチームが前方の味方車が交換を済ませられるよう、意図的にペースを落として後方を抑えるという不自然な状況が発生した。

複数のドライバーはこれを「とても醜いレース」「望むレースではない」と批判した。

一方、F1 CEOステファノ・ドメニカリは「正しい試みだった」と述べ、「この議題が議論され続けていることは良いことだ」と語っている。

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カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟)