フェラーリ 2026年F1エンジンの鋼製シリンダーヘッドの真相と重心の問題
2026年F1に向けて、フェラーリのパワーユニットに「鋼(スチール)製シリンダーヘッド」を採用しているのではないか、という話題が広く取り沙汰されている。パフォーマンス最適化を狙った特異なソリューションとして注目されているが、FIAレギュレーションを読み解くと、確かに理論上は許容される。一方で、潜在的なメリットの裏には、車両力学の観点から無視できない重要な論点が存在する。それがパワーユニット全体の重心位置だ。

2026年F1におけるV6ターボICEとシリンダーヘッドの役割
まず前提として、近年出回っている噂を整理する必要がある。対象となっているのは、マラネロの技術陣が開発しているとされるフェラーリ製V6ターボICE(内燃エンジン)のシリンダーヘッド部分だ。シリンダーヘッドとは、シリンダーブロック上部を覆う構造部材であり、バルブ、スパークプラグ、インジェクターを収め、燃焼室そのものを形成する。

燃焼と点火が行われる中枢であるため、シリンダーヘッドは熱的・機械的負荷が最も厳しい部位のひとつとなる。したがって、材質の選択はエンジン性能や信頼性に直結する極めて重要なテーマだ。

FIAレギュレーションが認める素材の範囲
2026年F1パワーユニット規則の「materials and construction – internal combustion engine」の項目では、ICEの素材について明確な規定が存在する。そこでは、シリンダーブロックおよびシリンダーヘッドについて、「アルミニウム合金または鉄合金で製造してよい」と定められている。

つまり、鋼(鉄系合金)を用いたシリンダーヘッドは、少なくともレギュレーション上は禁止されていない。この点から見ても、フェラーリが鋼製ヘッドを検討、あるいは実際に採用していたとしても、規則違反にはならない。

鋼製シリンダーヘッドがもたらす可能性のある利点
2026年世代のF1パワーユニットでは、燃焼室内の最高圧力が従来よりも大きく高まると考えられている。この点は、フェラーリのエンジニアが鋼を選択する動機として十分に合理的だ。鋼はアルミニウム合金と比べて機械的強度が高く、高圧燃焼への耐性という観点では有利になる。

もうひとつの理由として考えられるのが熱特性だ。鋼はアルミニウムよりも熱伝導率が低く、燃焼時の熱エネルギーが外部へ逃げにくい。その結果、燃焼効率の向上につながる可能性がある。これはICEの熱効率が重視される2026年レギュレーション下において、見逃せない要素だ。

このような背景から、鋼製ヘッドは内燃機関全体の効率を高めるポテンシャルを持つ。ただし、F1では常にトレードオフが存在し、ひとつの利点は別の不利を生み出す可能性も併せ持つ。

スクーデリア・フェラーリ フォーミュラ1エンジン 2026年のF1世界選手権

避けて通れない重心上昇という代償
最大の懸念点は、設計上の純粋な物理問題だ。鋼はアルミニウムよりも比重が大きく、たとえ重量増がわずかであっても、エンジン上部に質量が集中することになる。

これはICE全体、ひいては車両全体の重心を引き上げる要因となる。F1マシンの設計において、重心高の上昇はハンドリングや車両挙動に直接悪影響を及ぼすため、各コンストラクターが最も避けたい要素のひとつだ。

そのため、仮にフェラーリが鋼製シリンダーヘッドを実際に採用しているのであれば、重心上昇を相殺するために、他の部分で相当な工夫と最適化が施されているはずだ。

真偽とエンジニアリングの核心
現時点では、この鋼製シリンダーヘッドが事実であるかどうかを外部から断定するのは難しい。仮に事実であったとしても、その背後には、メリットを最大化しつつ、重心上昇というデメリットを最小限に抑える高度なエンジニアリングが存在するはずだ。

フェラーリは2026年F1パワーユニットに強い自信を持っているとされており、内燃機関と電動システムの両面で、期待に応える性能を実現できると考えている。鋼製シリンダーヘッドの噂は、その自信の一端を示す象徴的なテーマと言えるかもしれない。

なお、この技術的選択の最終的な評価は、実際に2026年F1シーズンが始まり、各メーカーの競争力が明らかになったときに初めて見えてくることになるだろう。

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カテゴリー: F1 / スクーデリア・フェラーリ