アストンマーティンF1に何が起きたのか? ニューウェイ×ホンダ体制の誤算
2026年F1シーズン開幕を前に、最も高い期待を背負っていたチームのひとつがアストンマーティンだった。

だが、バーレーンでのプレシーズンテストを終えた今、その現実はあまりにも厳しい。マシンは最下位のペース、走行距離も最少。信頼性問題が頻発し、チーム内には動揺が広がっている。なぜここまで事態は悪化したのか。

期待に満ちていた“完璧な布陣”
1月末、バルセロナで初めて姿を現した新型車は、ピットレーンで注目を集めた。

暫定のオールブラックカラーに包まれたマシンは攻撃的な印象を放ち、他チームとは明らかに異なるコンセプトを採用していた。2025年3月からアストンマーティンに加わったエイドリアン・ニューウェイが主導した設計である。

しかし走行開始直後に現実は牙をむいた。

初日はわずか4周でストップ。ピットレーン入口でマシンは動かなくなった。その後も状況は好転せず、テスト最終日までに最も遅く、最も走れなかったチームとなった。

オーナーのローレンス・ストロールはバーレーンのパドックを険しい表情で歩き、怒りと落胆を隠せなかった。

マシンは断続的にしか走れず、ドライバーにとって扱いづらく、不安定な挙動を示している。

表向きチームとホンダは多くを語らない。しかし内部では問題の深刻さを誰も隠していない。解決には時間が必要だと理解している。

アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

“成功の方程式”は本当に揃っていたのか
紙の上では、これ以上ない布陣だった。

■ エイドリアン・ニューウェイ加入(2024年9月発表)
■ ホンダとのワークス提携
■ 最新鋭ファクトリーと風洞設備
■ サウジ資本を含む強力なスポンサー体制
■ フェルナンド・アロンソという世界王者

2026年はF1史上最大級のレギュレーション変更。ニューウェイは過去にも規則変更時に革命的マシンを生み出してきた。

1998年のマクラーレン、2009年と2022年のレッドブルがその例だ。

今回も同じことが起こると期待された。

だが状況はそれほど単純ではなかった。

F1において成功は“安定”の上に築かれる。しかしアストンマーティンにはここ数年、安定が欠けている。

■ 技術責任者エンリコ・カルディレが長期ガーデニング休暇を経て2025年7月に合流
■ 2024年10月にCEO就任したアンディ・コーウェルが1年余りで事実上の降格
■ ニューウェイとの路線対立

コーウェルは現在、日本でホンダ支援に多くの時間を割いている。

リーダーシップの入れ替わりが続く中で、開発の一貫性は保たれていなかった。

さらに重要なのはタイミングだ。

2026年空力レギュレーションは2025年1月2日に正式公布。ニューウェイが正式に働き始めたのはその2か月後の3月。

実際には各チームはそれ以前から開発を進めていた。

関係者によれば、ニューウェイは着任直後にマシンの再設計を指示したという。つまり現在の車は、他チームより数か月遅れている可能性が高い。

彼自身、このマシンを「より極端な解釈のひとつ」と表現している。

だが現時点では未成熟で、遅く、不安定だ。開発余地がある可能性は残るが、ホンダの問題が解決しない限り真のポテンシャルは測れない。

ホンダはなぜここまで苦戦しているのか
状況は2015年の悪夢を想起させる。

当時、ホンダはマクラーレンと組んでF1復帰したが、パワー不足と信頼性問題に苦しんだ。

今回も似た構図だ。

ホンダは2021年末でF1撤退を発表し、2023年5月にアストンマーティンとの復帰を発表した。

説明としては、その間にF1部門が事実上解体され、エンジニアが他部署へ配置転換されたという。

しかしホンダは完全に離れていたわけではない。

レッドブル2チームは2025年末までホンダ製PUを使用。開発凍結期間中でも信頼性向上名目での改良は可能であり、実際どのメーカーもその枠を利用して性能向上を図っていた。

もしホンダがそれを行っていなければ、2022〜2025年に大きく後退していたはずだが、そうはなっていない。

さらにホンダは新PUレギュレーション策定会議にも参加していた。

それでも現状は大きく出遅れている。

「なぜここまで遅れたのか」という明確な説明は出ていない。

レッドブル・パワートレインズもゼロからPU部門を立ち上げたが、タイムラインは大差ない。

それでも差は明白だ。

アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム フェルナンド・アロンソ

フェルナンド・アロンソ、再び試練の十字路へ
新車、ホンダとの提携、信頼性問題、そしてアロンソ。

この組み合わせは10年前を思い出させる。

2015年、アロンソはフェラーリを離れ、ホンダの可能性を信じてマクラーレンへ移籍した。しかし成功は2020〜21年まで訪れず、その時にはすでに両者は決別していた。

アロンソは2013年5月を最後に勝利から遠ざかっている。現在44歳。

だがそのパフォーマンスは依然として高水準であり、グリッド内の評価も極めて高い。

ニューウェイとのタッグは、キャリア最後の希望だった。

「すべては直せる」とアロンソは語る。

「短期的にも中期的にも、修正不可能なものはない」

「オーストラリアまでに直せる部分は直す。その後の数戦でも可能な限り修正する。でないと選手権では遅すぎる」

「僕は楽観的だ。解決策はあると思っている」

だが時間は限られている。

パートナーのメリッサ・ヒメネスは3月末に第一子を出産予定だ。

今季が厳しいものになるのはほぼ確実。その先も続けるのか、それともここで区切りをつけるのか。

ニューウェイは巻き返せるかもしれない。

だがホンダは間に合うのか。

そしてアロンソは、もう一度賭けに出るのか。

アストンマーティンの2026年は、まだ始まったばかりだが、すでに重大な分岐点に立たされている。

Source: BBC

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カテゴリー: F1 / アストンマーティンF1チーム / ホンダF1