フェラーリの車高問題がルクレールのF1ハンガリーGP優勝を奪った理由
予想外の好結果となった予選でポールポジションを獲得したシャルル・ルクレールとフェラーリだったが、ハンガリーでは期待したようなレースができず、表彰台を逃して4位に終わった。

今季初のポールポジションだけに、フェラーリにはもっと良い結果が期待されていた。何がうまくいかなかったのか、そして日曜に何を変えることができたのか。その答えはテレメトリーデータが示している。

またしても逃したチャンス
マクラーレンが支配する今季、勝利はもちろん、表彰台に上がるチャンスも極めて貴重だ。今やパパイヤカラーのチームにとって1-2フィニッシュ以外は物足りない結果とされ、他チームは残り物を争う状況になっている。

ルクレールは土曜、Q3で完璧なラップを決め、トップ10の中で唯一タイムを更新して自身とチームに今季初のポールポジションをもたらした。モナコと同様に、ハンガリーはフロントロウからのスタートが大きなアドバンテージとなるサーキットだ。

ハンガロリンクはオーバーテイクが notoriously difficult(極めて難しい)ことで知られる。短いラップと常に続くトラフィックも相まって、戦略が極めて重要になる。だが、フェラーリを失望させたのは戦略だったのか。

トップ10の他車と同様、ルクレールはミディアムタイヤでレースをスタートした。FP2のデータやこれまでのレースから予想された最も一般的な戦略は、ミディアムとハードを使った2ストップだった。

ルクレールはレース序盤を支配
重要だったのは、ルクレールがターン1で首位を守り、最初のピットストップまでトップを維持したことだ。

ランド・ノリスはスタートで出遅れ、最初の20周をジョージ・ラッセルの後ろで過ごしたため、勝利候補はルクレールとオスカー・ピアストリに絞られた。

19周目、ピアストリがルクレールをアンダーカットするためピットイン。モナコ出身のルクレールは翌周に即座に反応し、差は縮まったものの、ピアストリの前でコースに復帰。ルクレールは先頭を維持し、クリーンエアの中でレースをコントロールし続けた。

一方、ノリスは1ストップ戦略を選択。ステイアウトによって首位に立った。この時点で、20周目前後にピットインしたルクレールやピアストリが1ストップに切り替えるのは既に遅かった。残り50周では、2回目のストップは避けられない状況だった。

レース中盤もルクレールはクリーンエアを走り、ペースを支配。ノリスとの差を詰めると、ノリスがピットインし、再びルクレールは単独走行に。

これにより、ルクレールはハードタイヤで非常に安定した2スティント目を走り切った。

平均ペースはややピアストリに劣ったが、ピアストリが脅威となることはなく、むしろ脅威となったのは1ストップ戦略のノリスだった。ノリスは好ペースで走り、着実に勝利争いに絡んできた。

スクーデリア・フェラーリ F1 ハンガリーグランプリ シャルル・ルクレール

勝利目前からの崩壊
それでも、ルクレールは依然として勝利に最も近い位置にいた。ピアストリとエンジニアの無線でも、フェラーリの16号車が最大の警戒対象であることが明らかだった。そして41周目、ルクレールが2回目のピットインを行った瞬間、全てが崩れ始めた。

レース後に判明したのは、フェラーリのエンジニアがSF-25の合法性、特にプランク摩耗を非常に懸念していたことだ。これは今季初め、中国GPでルイス・ハミルトンが過度なプランク摩耗で失格になったケースを踏まえたものだった。

このリスクを減らすため、フェラーリは最終スティントでタイヤ圧を上げる判断を下した。これによりプランクが路面と接触する頻度が減り、失格の可能性も低下する。だが、その結果は以下のグラフが示す通りだった。

新しいハードタイヤで数周は好調だったものの、ルクレールのペースは急落。テレメトリーでは、3スティント目にピアストリより1周あたり1.4秒も遅かったことが示されている。

ピアストリに簡単にオーバーテイクされ、さらにラッセルにも急速に追いつかれてパスされるのは時間の問題だった。ルクレールは全く抵抗できなかった。

パワーユニットも制限、そして疑問
さらにレース後の情報では、フェラーリはスタートからパワーユニットモードを落として走っていたことも明らかになった。これはトップスピードを抑え、特にターン1進入前のブレーキングでプランク摩耗を抑えるためだった。

こうした極端なセットアップ変更が本当に必要だったのかは分からない。しかし確かなのは、この判断でルクレールのレースは損なわれたということだ。そして事前準備やレース前の明確な意思疎通があれば避けられた可能性が高い。

ドライバーは運転スタイルを適応させることができる。ブレーキングを早めたり、強いブレーキングゾーンで早めにアクセルを離すことで摩耗を減らせたはずだ。だが無線からは、チームがルクレールにその自由を与えるほど信頼していなかったことが伺える。

結局、フェラーリにとっては散々なレースとなった。ルクレールは4位に沈み、ハミルトンも順位を一つも上げられずノーポイントに終わった。

何より重要なのは、今季繰り返されているコミュニケーション不全が今回も露呈したことだ。シーズン後半戦で巻き返すには、まずこの問題を解決することがフェラーリの最優先事項になるだろう。

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カテゴリー: F1 / スクーデリア・フェラーリ / F1ハンガリーGP / シャルル・ルクレール