2026年F1マシンに同時発生 メルセデスとフェラーリのディフューザーの核心
メルセデスが2026年F1マシンで初走行を行った直後、多くの注目を集めたのがディフューザー部分に設けられた“開口部”だった。フェラーリの新車にも同様の解決策が確認されているが、これは何を意味し、どのような効果を狙ったものなのだろうか。

新車発表、とりわけ新レギュレーション導入時のローンチでは、細部をそのまま受け取るべきではない。

数年前、レッドブルはサイドポッドのインレット形状について、ミルトンキーンズでの発表と公式レンダーで異なるデザインを見せ、続くバーレーンテストではさらに別の仕様を投入した。これは、チームがプレシーズンにおいてライバルに余計なヒントを与えないよう、意図的に“見せ方”を操作する好例だ。

真の姿が明らかになるのはメルボルンでの開幕戦だが、それでも2026年型マシンの初走行からは、いくつかの興味深い方向性が見えてきた。2021年以前を思わせる高いレーキ角の復活、多くのチームがフロントにプッシュロッド式サスペンションを採用している点、そしてフェラーリがアクティブエアロの挙動を初めて実走で示したことなどが挙げられる。

シンプル化されたフロアが生んだ新たなディフューザー思想
メルセデスのシェイクダウン後、特に注目を集めたのがディフューザーだ。2026年レギュレーションではフロアが大幅に簡素化され、グラウンドエフェクト時代と比べて発生するダウンフォースが明確に減少している。そのため、ディフューザーから最大限の性能を引き出すことが、これまで以上に重要な課題となっている。

走行中のW17の初期画像では、ディフューザーに明確な開口部が確認できた。2022年以前に一部マシンで見られた、いわゆる“マウスホール”を思わせるが、今回のものはさらに大きい。翌日には、フェラーリもフィオラノでのテストで同様の開口部を備えたディフューザーを走らせている姿が確認された。

この開口部は、アンダーカット形状のサイドポッドと連動して機能する。サイドポッド下を通過し、フロアエッジ上方へと流れる空気を、ディフューザー内部に導き入れることで、その性能向上を狙っている。ディフューザーに向かう空気の勢いが強ければ強いほど、理論上はより多くのダウンフォースを生み出すことができる。

この考え方は、前レギュレーション時代のディフューザーとは正反対とも言える。2022年から2025年にかけては、ヴェンチュリトンネルを用いたフロア下面で大きなダウンフォースを発生させており、ディフューザー周辺の空気を“完全に封じる”ことが重要だった。圧力差を最大化し、床下の流れを逃がさないことが性能の鍵だったからだ。

しかし2026年は状況が異なる。FIAが“フラットフロア”を導入し、フロア形状を大幅に簡素化したことで、従来ほど強い床下流れを得られなくなった。その結果、チームはディフューザーに十分な流速を与えるため、別のアプローチを模索している。メルセデスとフェラーリが採用したスロット付きディフューザーは、サイドポッド下の流れを活用し、近年とは異なる形でディフューザー内の空気を加速させようとする試みだ。

メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツフォーミュラ1カー

インウォッシュと床下性能への影響
フロア性能低下に関しては、もう一つ重要な要素がある。サイドポッド前方には、かつてのバージボードを思わせる要素が再び登場している。ただし、その役割は大きく異なる。以前は前輪から発生する乱流を外側へ逃がす“アウトウォッシュ”が主目的だったが、今回はFIAの意図により“インウォッシュ・デバイス”として設計されている。主翼素子は内側を向き、後続車に対する乱流の影響を減らす狙いがある。

チームは、この乱れた空気が内側へ流れ込むのを可能な限り抑えようとしているが、完全に防ぐことはできない。結果として、床下の空気の質はどうしても影響を受け、その影響はディフューザー性能にも及ぶ。メルセデスとフェラーリの開口部は、こうした影響を補うための代替策の一つであり、サイドポッド下の比較的クリーンな流れをディフューザーに活用する狙いがある。

この部分の空気流が強まれば、副次的な効果として“タイヤスクワート”の影響を抑えることも期待できる。リアタイヤから横方向に噴き出す乱流は、ディフューザーの効率を低下させる要因だが、より強い流れがあれば、それを押し返す助けになる可能性がある。理論上は、二重のメリットを得られる構成と言える。

「興味深いが、完全なサプライズではない」
他チームの反応は、「興味深いが、大きな驚きではない」というものだった。アルピーヌのテクニカルディレクターであるデビッド・サンチェスは、バルセロナでのローンチの場で次のように語っている。

「一見すると少し変わって見えるし、興味深い解釈だが、完全なサプライズではない」

サンチェスはディフューザーの重要性を認めつつ、今後もこの分野で多くの開発が進むと見ている。

「ボディワーク、ディフューザー、そしてマシン後方全体の相互作用は、間違いなくまだ開発途上だ。すでにいくつか異なるアイデアが見られる。外から見ると大差がないように思えるかもしれないが、グラウンドエフェクトがなくなった今、誰もがディフューザー下面の写真を見たがっているはずだ」

2026年F1では、表からは見えにくいディテールこそが、パフォーマンスの分かれ目になる可能性が高い。その最前線にあるのが、メルセデスとフェラーリが示したこの“開口部付きディフューザー”なのかもしれない。

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カテゴリー: F1 / F1マシン