2026年F1エンジン開発の現実 レギュレーションとADUOが決める進化の余地
F1パワーユニットの開発凍結は4年間続いたが、その制限が解除されたことで、2026年からは再び開発が可能になった。ただし、その自由度は極めて複雑なレギュレーションによって厳しく管理されている。

2022年から2025年まで、F1のハイブリッド・パワーユニットは性能に関わる開発が凍結されていた。だが、サステナブル燃料を使用する次世代1.6リッターV6ハイブリッドが2026年から実戦投入され、その開発サイクルが新たに始まった。

では、この新時代のパワーユニットは、いつ、どのような条件でアップグレードが許されるのか。

2026年F1パワーユニットレギュレーションのサイクル
2026年F1では、基本構成こそ従来世代と同じ1.6リッターV6ハイブリッドが採用されるが、その中身は設計思想からして全面刷新となる。

サステナブル燃料の導入と電動化の強化により、内燃機関(ICE)と電動出力の比率はほぼ50:50に近づいた。パワーユニットレギュレーションがシャシー規則よりも先に確定した点については懸念も示されてきたが、2025年後半にはエンジン形式変更の可能性は完全に否定されている。

サステナブル燃料を用いたV8やV10への移行案も議論されたものの、各方面で合意に至らず、さらにパワーユニットメーカー各社がすでに多額の投資を行っていたことから、エンジンレギュレーションは2026年から2030年末までの5年間にわたって継続されることが決まった。

2026年に参戦する5社すべてのパワーユニットメーカーは、3月1日までに新設計のホモロゲーション・ドシエをFIAに提出しなければならない。この書類には、ICE、コントロールエレクトロニクス(CE)、排気系、ターボチャージャー(TC)、エナジーストア(ES)、MGU-K、さらにすべてのPU要素に付随する小部品の詳細が含まれる。なお、新世代パワーユニットにはMGU-Hは存在しない。

このホモロゲーションは、供給先となるすべてのカスタマーチームにも同一仕様で適用される。例外として認められるのは、燃料サプライヤー、エンジンオイル仕様、そしてシャシーごとの搭載要件に対応するための最小限の変更に限られる。具体的には、配線、排気位置、ターボ位置(元の位置から20mm以内)、ウエイストゲートやポップオフバルブの配置変更などだ。

FIAは提出から14日以内に設計を承認し、4月1日までに各メーカーは封印用のリファレンス・パワーユニットを提出する義務がある。

フォーミュラ1エンジン

パワーユニットの通常アップデートはどう制限されるのか
2026年から2030年までのPU開発は、厳格なレギュレーションのもとで管理される。いったんホモロゲーションが完了すると、許可された範囲以外の変更は認められず、すべての改良は承認プロセスを経なければならない。

これらの規則は、コスト抑制、競技の公平性、そして信頼性確保のバランスを目的としている。通常のアップグレードは、テクニカルレギュレーション第3条の範囲内でのみ許可される。

これとは別に、FIAは性能面で後れを取ったメーカーを救済するため、「ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)」という制度を導入した。ADUOによるアップグレードも、パワーユニットメーカーの予算上限の枠内で行われる。

FIAはパワーユニットとエネルギー回生システムを細かく分解し、各コンポーネントごとに「いつ」「どの条件で」開発・変更が可能かをレギュレーション上で定めている。

そのリストは非常に詳細だ。例えば最初に挙げられるのが「メインICEアセンブリ」で、クランクケース、シリンダーヘッド(燃焼室やポート、インジェクターポート加工を除く)、クランクシャフト、カムシャフト(ローブ形状を除く)、カム駆動系、バルブ、フィンガーフォロワー、内部ギア類、ICEマウントを介してサバイバルセルとギアボックスを結ぶ構造部品などが含まれる。

この領域は2026年のみ通常開発が許され、2027年から2030年までは原則として凍結される。ただし、ADUO対象メーカーに限り、追加変更が認められる。

一方で、リスト中の3番目にあたるフライホイールについては、全メーカーが5年間を通じて開発可能とされている。ただし重要なのは、アップグレードは「許可された年の開幕戦」でしか導入できない点だ。2026年中に開発したフライホイールであっても、実戦投入は2027年開幕戦に限られる。

吸気系(トランペット、スロットル、プレナム)に関しては、2026年、2027年、2029年は開発可能だが、2028年と2030年は不可とされている。そのため、2027年に開発した新仕様は、2029年開幕戦まで投入できないことになる。

このような制限をより詳しく知りたい場合は、新テクニカルレギュレーションの付録4を参照する必要がある。

ADUOはどのように機能するのか
ADUOは、近年の空力テスト制限に似た考え方を、パワーユニット専用に適用した制度だ。

付録4第4条で定められた条件を満たすメーカーは、追加のホモロゲーション機会を得ることができる。対象となるのは評価年(Year N)とその翌年(Year N+1)だ。

ただし、燃料ポンプやインジェクター、ノックセンサー、各種温度・電気・規制センサーなど、一部コンポーネントはADUO対象外とされている。

FIAは5年間を通じて、各メーカーのICE性能を継続的に監視する。各エンジンについて「ICEパフォーマンス指数」が算出され、メーカーやカスタマーチームから提供されるデータを基に比較評価が行われる。

この指数が基準を下回った場合、追加アップグレードの権利が与えられる。

・最上位ICEから2%以上4%未満遅れている場合
 シーズンNで1回、シーズンN+1で1回の追加ホモロゲーション

・最上位ICEから4%以上遅れている場合
 シーズンNで2回、シーズンN+1で2回の追加ホモロゲーション

ADUOによるアップグレードはシーズン内で累積せず、未使用分は失効する。

2026年は24戦を6戦ずつ4期に分け、ADUOが認められたメーカーは次の期の初戦からアップデートを投入できる。例えば、開幕6戦後に権利を得た場合、導入可能なのは第13戦からとなる。

すべての変更について、メーカーは使用予定レースの14日前までに、更新されたホモロゲーション・ドシエを提出しなければならない。

また、信頼性、安全性、コスト削減、供給問題を理由としたごく小規模な変更については、別途承認のもとで認められる場合がある。ブランド変更や部品番号変更など、性能にほとんど影響しない修正も例外的に許可される。

このように、2026年F1のパワーユニット開発は「再び自由になった」一方で、実際には極めて厳密に管理されたレギュレーションのもとで進められることになる。

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カテゴリー: F1 / F1マシン