F1開発戦争:レッドブルとフェラーリのフロア吸気口の再配置
レッドブル・レーシングとスクーデリア・フェラーリの開発競争は続いており、両チームともF1フランスGPでフロア吸気口の配置を大幅に改良させてレースに臨んだ。
両チームともアンダーフロアトンネルの吸気口フェンス周囲に変更えた。F1チームは、外側の「バージボード」(事実上の第4のフェンスを形成する)に加えて、3つのフェンスが認められている。
全般的に、フェンスは、ベンチュリトンネルに向かう空気を加速させ、マシンのアンダーボディのダウンフォースを生成するために機能する。気流に誘導される空気が速ければ速いほど、ダウンフォースは大きくなる。
トンネルと地面の隙間が最も小さくなる「チョークポイント」の周囲でそれはピークに達する。
ダウンフォースには、トンネルの吸引効果によって生じるものと、前方のフロアが露出した上面と下面の空気の相互作用によって局所的に生じるものがある。エアロダイナミシストは、マシンのフロントとリアの間の空力バランスを変化させるために、どちらか一方を他方に対して妥協している。
空力バランスは、空力の重量配分的な意味合いを持っている。すなわり、全体のダウンフォースを前後の車軸にどのように配分するかとなる。
一般的に、低速サーキットでは方向転換で鋭いレスポンスを得るために、前寄りの空力配分が望ましい。
一方、ポール・リカール・サーキットような高速で長いコーナーを回るためには、安定性を求めて全体的に後ろ寄りが望ましい。
圧力の中心を後方に移動させる最も簡単な方法は、大きなリアウイングを搭載することである。しかし、それでは直線スピードが犠牲にする。特にレッドブル・レーシングは直線スピードを優先して、ポール・リカールにローダウンフォースのウィングを持ち込んだ。
したがって、それを補うためにアンダーボディで圧力の中心を後方にすることがより重要になった。そして、直線スピードと、圧力の中心を後方に移動して高速コーナーで安定させるという相反する目標をフェンスの再配置によって解決した。
レッドブル・レーシング
レッドブル・レーシングはトンネル前方のフェンスの配置を利用して、サーキットごとに空力学的配分を変えているように見える。彼らは今年すでにさまざまな配置で走らせており、これがRB18の重要な精巧さかもしれない。
レッドブル・レーシングのポール・リカール用フロア吸気口。ポール・リカールでは、空力学的バランスを後方寄りにするために、一番外側のベーンをさらに遠くに移動させた。
では、フェンスの配置は空力バランスにどのような影響を与えるのか? その手がかりは、レッドブル・レーシングがポール・リカールでFIA(国際自動車連盟)へ提出した新しいフェンスの説明の中にある。
変更理由:パフォーマンス - 局部的な荷重
相違点:フロアエッジまで延長したフェンス形状の変更
説明:気流の安定性を維持しつつ、負荷を改善するため、局部的な圧力を再配分するようにフェンスのレイアウトを変更した。
「局部的な荷重」とは、トンネル後方で生じるダウンフォースに対して、フロア前方で生じるダウンフォースの大きさを指す。ウイングと同じように、フロアの露出上面と下面の圧力差を利用して、ボディワークのその部分に直接ダウンフォースを発生させることができる。その際、最も外側にあるフェンスがそのほとんどを担い、最も内側にあるチャネルを通る空気はベンチュリトンネルに直接向かう。
F1フランスGPまでは、外側の2つのフェンスを極端に近づけて後方に向かって収束させており、おそらくその相互作用でトンネルから外側に流される空気を加速させていたと思われる。その場合、フロアの上面と下面には圧力差が生じる。これはマシンの前寄りにあるため、空力バランスを前方に持っていこうとする傾向がある。そのため、トンネル内に導かれない気流を利用し、前寄りのバランスをさらに強化することができる。
フランスGPでは、その外側のふたつのフェンスが離れていた。これは空力バランスを後方へ移動させ、トンネルに供給される気流の比率を増やし、フロア前方部分への荷重を減らすことを狙ったのだと考えられる。これは、直線スピードを高めるために必要な小さいリアウイングの使用と一致する。
また、圧力の中心を後方に移動することで、フロントタイヤのサーマルデグラデーションを最小限に抑えることができる。タイヤのサーマルデグラデーションは、路面温度が高温となったポール・リカールでは全員にとって非常に問題だった。
レッドブル・レーシングは、ポール・リカールで外側のフェンス2つを分離。黄色の破線は、以前のフェンスが「バージボード」のすぐ近くまで来ていたことを示している(円図参照)。2つのフェンスの内側をバージボードから車体側にさらに移動させることで、小さいリアウイングにもかかわらず、空力バランスを後方へ移動させることができた。
スクーデリア・フェラーリ
フェラーリのフロアの変更は、レッドブルのようなサーキット特有のものではなく、一般的な開発の一環として導入された。
スクーデリア・フェラーリは、車体側のトンネル吸気口部分の高さを上げて、外側部分は従来と同じ高さを保つようにボディワークに段差をつけた。また、外側の「バージボード」をさらに前方に延長した。
車体側の吸気口の高さを上げることで、トンネルにより多くの流量を送り込める。レッドブルの変更と同様、これは空力バランスを後方に移動させるためと思われるが、総ダウンフォースも増加させる可能性がある。それがフェラーリの狙いのようであり、ポール・リカールにおけるFIAへのマシン変更の説明でもそれが確認できる。
この新しいフロアは、標準的な開発サイクルの一環である。マシンの全体的な空力パフォーマンスの改善を目指したものであり、ポール・リカールのサーキットのレイアウトに特化したものではない。
車体側トンネル吸気口(Shellのロゴに隣接したカーボンブラック部分)の高さを上げ、底部吸気口までのボディワークセクションに段差をつけた。
カテゴリー: F1 / F1マシン
両チームともアンダーフロアトンネルの吸気口フェンス周囲に変更えた。F1チームは、外側の「バージボード」(事実上の第4のフェンスを形成する)に加えて、3つのフェンスが認められている。
全般的に、フェンスは、ベンチュリトンネルに向かう空気を加速させ、マシンのアンダーボディのダウンフォースを生成するために機能する。気流に誘導される空気が速ければ速いほど、ダウンフォースは大きくなる。
トンネルと地面の隙間が最も小さくなる「チョークポイント」の周囲でそれはピークに達する。
ダウンフォースには、トンネルの吸引効果によって生じるものと、前方のフロアが露出した上面と下面の空気の相互作用によって局所的に生じるものがある。エアロダイナミシストは、マシンのフロントとリアの間の空力バランスを変化させるために、どちらか一方を他方に対して妥協している。
空力バランスは、空力の重量配分的な意味合いを持っている。すなわり、全体のダウンフォースを前後の車軸にどのように配分するかとなる。
一般的に、低速サーキットでは方向転換で鋭いレスポンスを得るために、前寄りの空力配分が望ましい。
一方、ポール・リカール・サーキットような高速で長いコーナーを回るためには、安定性を求めて全体的に後ろ寄りが望ましい。
圧力の中心を後方に移動させる最も簡単な方法は、大きなリアウイングを搭載することである。しかし、それでは直線スピードが犠牲にする。特にレッドブル・レーシングは直線スピードを優先して、ポール・リカールにローダウンフォースのウィングを持ち込んだ。
したがって、それを補うためにアンダーボディで圧力の中心を後方にすることがより重要になった。そして、直線スピードと、圧力の中心を後方に移動して高速コーナーで安定させるという相反する目標をフェンスの再配置によって解決した。
レッドブル・レーシング
レッドブル・レーシングはトンネル前方のフェンスの配置を利用して、サーキットごとに空力学的配分を変えているように見える。彼らは今年すでにさまざまな配置で走らせており、これがRB18の重要な精巧さかもしれない。
レッドブル・レーシングのポール・リカール用フロア吸気口。ポール・リカールでは、空力学的バランスを後方寄りにするために、一番外側のベーンをさらに遠くに移動させた。
では、フェンスの配置は空力バランスにどのような影響を与えるのか? その手がかりは、レッドブル・レーシングがポール・リカールでFIA(国際自動車連盟)へ提出した新しいフェンスの説明の中にある。
変更理由:パフォーマンス - 局部的な荷重
相違点:フロアエッジまで延長したフェンス形状の変更
説明:気流の安定性を維持しつつ、負荷を改善するため、局部的な圧力を再配分するようにフェンスのレイアウトを変更した。
「局部的な荷重」とは、トンネル後方で生じるダウンフォースに対して、フロア前方で生じるダウンフォースの大きさを指す。ウイングと同じように、フロアの露出上面と下面の圧力差を利用して、ボディワークのその部分に直接ダウンフォースを発生させることができる。その際、最も外側にあるフェンスがそのほとんどを担い、最も内側にあるチャネルを通る空気はベンチュリトンネルに直接向かう。
F1フランスGPまでは、外側の2つのフェンスを極端に近づけて後方に向かって収束させており、おそらくその相互作用でトンネルから外側に流される空気を加速させていたと思われる。その場合、フロアの上面と下面には圧力差が生じる。これはマシンの前寄りにあるため、空力バランスを前方に持っていこうとする傾向がある。そのため、トンネル内に導かれない気流を利用し、前寄りのバランスをさらに強化することができる。
フランスGPでは、その外側のふたつのフェンスが離れていた。これは空力バランスを後方へ移動させ、トンネルに供給される気流の比率を増やし、フロア前方部分への荷重を減らすことを狙ったのだと考えられる。これは、直線スピードを高めるために必要な小さいリアウイングの使用と一致する。
また、圧力の中心を後方に移動することで、フロントタイヤのサーマルデグラデーションを最小限に抑えることができる。タイヤのサーマルデグラデーションは、路面温度が高温となったポール・リカールでは全員にとって非常に問題だった。
レッドブル・レーシングは、ポール・リカールで外側のフェンス2つを分離。黄色の破線は、以前のフェンスが「バージボード」のすぐ近くまで来ていたことを示している(円図参照)。2つのフェンスの内側をバージボードから車体側にさらに移動させることで、小さいリアウイングにもかかわらず、空力バランスを後方へ移動させることができた。
スクーデリア・フェラーリ
フェラーリのフロアの変更は、レッドブルのようなサーキット特有のものではなく、一般的な開発の一環として導入された。
スクーデリア・フェラーリは、車体側のトンネル吸気口部分の高さを上げて、外側部分は従来と同じ高さを保つようにボディワークに段差をつけた。また、外側の「バージボード」をさらに前方に延長した。
車体側の吸気口の高さを上げることで、トンネルにより多くの流量を送り込める。レッドブルの変更と同様、これは空力バランスを後方に移動させるためと思われるが、総ダウンフォースも増加させる可能性がある。それがフェラーリの狙いのようであり、ポール・リカールにおけるFIAへのマシン変更の説明でもそれが確認できる。
この新しいフロアは、標準的な開発サイクルの一環である。マシンの全体的な空力パフォーマンスの改善を目指したものであり、ポール・リカールのサーキットのレイアウトに特化したものではない。
車体側トンネル吸気口(Shellのロゴに隣接したカーボンブラック部分)の高さを上げ、底部吸気口までのボディワークセクションに段差をつけた。
カテゴリー: F1 / F1マシン