エステバン・オコン「人生ずっと戦いだった」 F1までの過酷な道のりと夢の続き
エステバン・オコンのF1までの道のりは、困難と犠牲に満ちた物語だ。

裕福な家庭に育ったわけでも、潤沢な資金援助を受けたわけでもなかった。代わりに彼を支えたのは、努力と才能、そして家族による並外れた献身だった。オコンの家族は自宅と仕事を手放して彼のカートキャリアを支え、ヨーロッパ各地をキャラバンで転戦しながら生活を続けた。

その才能はやがて注目を集め、ロータスのジュニアチームに引き抜かれた後、メルセデスと契約。ヨーロッパF3とGP3シリーズでのタイトル獲得が、F1への扉を開いた。

先日のイギリスGPでCrash.netの単独インタビューに応じたオコンは、自身の育ちやF1までの険しい道のりが、今の自分を形作ったと語った。

「簡単な道のりではなかったのは確かだ」と、2021年のハンガリーGPウィナーは振り返る。「俺の人生はずっと厳しかった。犠牲、我慢、快適さなんてなかった。贅沢もない。ただひたすら厳しい道だった」

「でも、少しでも“甘さ”を感じられたとき、それがどれだけ特別なことか実感できる。その感覚をずっと大事にしてる。地に足をつけることが一番大切だ。自分がどこから来たのかを忘れないこと」

「目標はタイトルを争って、レースに勝つこと。すでに1勝してF1にたどり着いた。夢の2つは叶えた。残る最大の夢はチャンピオンになること。それが今後のゴールで、成し遂げるべきことだ」

エステバン・オコン F1オコンは2021年ハンガリーGPでのサプライズ勝利を挙げた

家族への恩返し
今やオコンは、かつて夢見た場所に到達した。その事実は、彼自身だけでなく、すべてを捧げた家族にとっても大きな意味を持つ。

ブダペストで初優勝を飾ったときに乗っていたA521アルピーヌは、現在、ノルマンディーの父親のガレージに誇らしげに飾られている。

「長い間、ストレスはかなりのものだった」と28歳のオコンは明かす。「しかも、それはスポーツのことじゃなくて、他の理由でだ」

「でも今は誇りに思ってる。両親には家があって、父にはかつてのようなガレージがある。もう車を修理して生活する必要はない。今は俺のマシンを扱ってくれてる──それが本来あるべき姿だ。ずっと夢見てきたことだよ」

「だから、今はもう俺次第なんだ。あのプレッシャーはなくなった。状況は整った。あとはレースに集中して、夢の実現に向けて突き進むだけ。今年は勝てないだろうけど、すべてを正しくこなせば、きっといつかチャンスは巡ってくると信じてる」

「俺たちはずっとそうやってレースしてきた」
コース上では、オコンはタフで妥協のないスタイルを貫いてきた。肘を張るようなアグレッシブな走りは、チームメイトとの接触や他ドライバーとの摩擦も生んできたが、それこそが彼の中に根付いている闘争心の表れだ。

「人生で何ひとつ簡単に手に入ったものなんてなかった。全部、戦って勝ち取ってきた」と彼は語る。「だからレースでも、同じ土俵に立ってる以上は全力で戦う。でも、俺よりハードに戦う奴もいるってことも分かってる」

「俺はマックス(フェルスタッペン)やシャルル(ルクレール)と一緒に育ってきたけど、当時のルールは“アウト側に出たら砂利行き”だった。だから抵抗すれば押し出されて『さようなら』ってわけさ」

「俺たちの世代はずっとそんなレースをしてきた。だからそれが自然なんだ。この世代は違った見方をするのかもしれないけど、俺たちはマックスとも、ずっとそうやって走ってきた」

「ホイール・トゥ・ホイールでぶつかり合う──それが楽しい。だからレースが好きなんだよ」

エステバン・オコン ハースF1チームオコンには、タフなライバルとしての評判がある

成功しても「変わらない」ことの大切さ
華やかなF1の世界に足を踏み入れた今も、オコンの人柄は変わらない。傲慢さや自己顕示欲とは無縁の、謙虚で丁寧な話しぶりが印象的だ。

「ちょっと成功しただけで態度が変わる人って、本当に嫌なんだ」と彼は語る。「そういうのは最悪だと思ってる」

「だから友達にはずっと言ってるんだ。もし俺が変なこと言ったり、変わっちまったと思ったら、遠慮なく平手打ちしてくれって」

そう言って笑いながら、「まだ頬っぺたは大丈夫だからね」と冗談めかして付け加えた。

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カテゴリー: F1 / エステバン・オコン / ハースF1チーム