エステバン・オコン 古巣アルピーヌF1チームの不振に「決して喜びはない」

オコンがルノー系のアルピーヌに加入したのは2020年。その関係は順調なスタートを切り、2021年のハンガリーGPではF1初勝利を挙げるなど大きな成果も残した。この勝利を挙げたマシンは、今でも彼の自宅に保管されており、フランスチームと過ごした栄光の日々を思い出させる記念品となっている。
しかし、その関係に亀裂が入ったのは昨シーズン後半。特にモナコGPで当時のチームメイト、ピエール・ガスリーとの接触事故が決定的となり、シーズン終了後の決別が現実味を帯び始めた。
2024年7月には、オコンが2025年にハースへ移籍することが正式に発表された。そしてそのわずか数ヶ月後、アルピーヌはシーズン最終戦アブダビGPでオコンの起用を見送り、代わりにオコンはヤス・マリーナでのポストシーズンテストに新チームのハースから参加するという異例の展開となった。
一方で、2025年のF1シーズンにおいてアルピーヌはコンストラクターズランキング最下位に低迷している。開幕からわずか6戦でジャック・ドゥーハンをフランコ・コラピントに交代させるなど、ドライバーラインアップにも混乱が見られた。
それとは対照的に、オコンの加入したハースは着実にポイントを重ね、現在はランキング6位につけている。
「アルピーヌの苦境を見ても笑顔にはならない」
こうした対照的な状況にもかかわらず、オコンはモントリオールでRacingNews365に対し、古巣の不振を見て満足しているわけではないと断言した。
「誰かが苦しんでいるのを見て笑顔になることはない」
「僕にとって、ここ(ハース)に来たいという気持ちはずっと明確だった」
「決断を下したときから、それははっきりしていた。チームと僕とでは目指すものが違っていたし、新しいチャレンジが必要だった。だって、僕たちは一緒に前進できないと分かっていたから。たくさんのことで意見が合わなかったんだ」
アルピーヌの今季成績については、場所によっては競争力を見せていたとした上で、F1の不確実性を指摘した。
「たとえばバーレーンとか、いくつかのサーキットでは彼らは速かった。彼らもまた、自分たちの状況に取り組んでいるところだと思う」
「1レースで差を取り戻すこともできる。だから、今は最下位でも、それが最終的な順位になるとは限らない」

過去への敬意と未来への集中
現在はハースでの新たな挑戦に全力を注いでいるオコンだが、アルピーヌ時代を振り返る視線にはバランスが感じられる。
「僕たちは全チームに注意を払いつつ、自分たちができるベストを尽くす必要がある。でも、ここでは確かに気分がいい」
「さっきも言ったように、アルピーヌは僕の心の中で特別な場所であり続ける。自宅にある勝利を挙げたクルマ、そして一緒に成し遂げたこと。それでも間違いなく、キャリア後期の部分は忘れるつもりだ」
オコンにとって、アルピーヌでの章はすでに閉じられている――そしてその別れは波乱を含んでいたかもしれないが、今彼の視線はハースでの新たな成功に向けられている。そこには、古巣の凋落を喜ぶような気配は一切ない。
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