2025年 F1アブダビテスト 参加ドライバー:来季タイヤ評価と若手育成が焦点
2025年のF1シーズン最終戦アブダビGPを終えた翌日の火曜日、ヤス・マリナ・サーキットで恒例のポストシーズンテストが実施される。全10チームが2台体制で走行し、2025年のトラック走行はこれが最後となる。

走行は現地時間9時から18時(日本時間14時~23時)まで。1台はピレリによる2026年タイヤ開発テスト、もう1台は若手ドライバーテストを担当し、1日を通じて多岐にわたる評価項目が予定されている。

2026年新レギュレーション対応タイヤの最終検証
ピレリが投入するのは、2026年の大規模な空力レギュレーション変更を前提に開発されたC2〜C5の試作タイヤ。ホイール径は継続されるが、構造・形状・コンパウンドの多くが刷新されており、2026年車両の空力負荷に合わせた広範な設計が求められた。

ピレリのマリオ・イゾラは、チーム間のシミュレーション値に大きな差があり、来季序盤と終盤の車両パフォーマンス予測が大きく異なったことを明かしている。これにより、ピレリは「開発余地の幅を吸収できるタイヤ」を用意する必要があった。

2026年車両はアクティブエアロ導入による直線での抵抗低減が特徴だが、現行2025年車両にこれを完全再現することは不可能なため、各チームの“ミュールカー”にはダウンフォース削減仕様が施されている。さらにテスト時にはストレートの速度制限(290〜300km/h)が設定され、過剰荷重による誤差発生を抑制する手法も導入された。このテスト結果が、2026年に各グランプリへ持ち込まれるタイヤ選択のベースとなる。

ヤングドライバーテスト:次世代F1候補が10台揃い踏み
若手ドライバーテストには、今年も各チームの育成プログラムを象徴する逸材たちが名を連ねる。F2タイトル争いの常連から、すでにF1昇格が内定している将来のスター候補、WECやインディカーで実績を積んだ“別カテゴリーの精鋭”まで、多様な才能が一挙に集結する。

ヤングドライバーに許されるのは「F1決勝2戦まで」という厳格な条件だが、このテストはキャリアの分岐点として毎年重要視されている。走行距離はレースウィークより圧倒的に長く、1日で“1年分の実戦データ”を得ることも珍しくない。チーム側も燃料搭載量、セットアップ、ロングラン、ショートラン、スタート練習など、実戦同様のプログラムを細かく指示するため、単なる“若手走行枠”ではなく、F1への適性を総合的に見極める機会となる。

今年の注目筆頭は、2026年にレーシングブルズからF1デビューを果たすアービッド・リンドブラッド。まだ18歳ながら驚異的なスピードと適応力を武器にF1昇格を勝ち取り、今回のテストはデビュー年に向けた事実上の“本格始動”。チームがどこまで本番仕様のプログラムを与えるかが注目される。

また、日本からは岩佐歩夢(レッドブル)と平川亮(ハース)が参加。岩佐は今年スーパーフォーミュラを制し、レッドブル育成の強力な昇格候補として存在感を示してきた。一方の平川はWECでトヨタの主力を務める経験豊富なドライバーであり、F1では“即戦力型のテスター”として高く評価されている。

さらにパト・オワード(マクラーレン)、ジャック・クロフォード(アストン)、ベガノビッチ(フェラーリ)など、各チームの育成体系の中心メンバーも揃い、F1の未来を担う才能が幅広いカテゴリーから集結した形となった。これらの走行データは、2026年以降の空席やリザーブ枠、シミュレータードライバー契約にも影響する極めて重要な試金石となる。

平川亮 アブダビグランプリ

主力ドライバーの欠席も相次ぐ
一方で、全チームがレースドライバーを参加させるわけではなく、今年は例年以上に“主力の欠席”が目立つテストとなった。最大の理由は、2025年が極めてタフなシーズンだったこと、そして2026年仕様のミュールカーが“制限付き走行”であるため、必ずしも正確なフィードバックが得られるわけではない点にある。

レッドブルを退団する角田裕毅とチームメイトのマックス・フェルスタッペンはそろってテスト欠席。フェルスタッペンは「走らなくていいなら喜んで休む」と率直に語り、長いタイトル争いの疲労をリフレッシュする模様だ。

メルセデスのジョージ・ラッセルも不参加を決断し、ミュールカーを担当するのはルーキーのアンドレア・キミ・アントネッリのみとなった。チームはすでに2026年の技術方向性が固まっているとして、若手の長距離走行によるデータ収集を重視する姿勢に切り替えている。

アストンマーティンはさらに大胆で、フェルナンド・アロンソ、ランス・ストロールともに参加しない。ストフェル・バンドーンが単独で2026年仕様のミュールカーを走らせるが、アロンソはシーズン終盤から「AMR25をこれ以上運転する気はない」と語るほど精神的な疲労をにじませており、欠席は既定路線だった。

こうした欠席の背景には「2026年マシンは根本的に別物」という共通認識があり、現在のミュールカーによるタイヤテストは“参考値の収集”にとどまる可能性が高い。多くのチームが、レースを戦い抜いた主力を休ませる判断を下しつつ、若手やリザーブドライバーを積極的に起用している。

その一方で、フェラーリはルクレールとハミルトンの両名が揃って参加。新生フェラーリは2026年に向けて直接フィードバックを得ることを重視しており、チーム内でも「トップドライバーが比較データを蓄積すべき」という意見が強かったとみられる。来季へ向けたアプローチがチームごとに大きく分かれるテストとなった。

2025年アブダビ合同テスト 参加ラインアップ一覧
■ マクラーレン
・ピレリテスト:ランド・ノリス、オスカー・ピアストリ
・ヤングドライバー:パト・オワード

■ メルセデス
・ピレリテスト:アンドレア・キミ・アントネッリ
・ヤングドライバー:フレデリック・ベスティ

■ レッドブル・レーシング
・ピレリテスト:アイザック・ハジャー
・ヤングドライバー:岩佐歩夢

■ フェラーリF1
・ピレリテスト:シャルル・ルクレール、ルイス・ハミルトン
・ヤングドライバー:ディノ・ベガノビッチ

■ ウィリアムズ
・ピレリテスト:カルロス・サインツJr.、アレクサンダー・アルボン
・ヤングドライバー:ルーク・ブラウニング

■ レーシングブルズ
・ピレリテスト:リアム・ローソン
・ヤングドライバー:アービッド・リンドブラッド

■ アストンマーティン
・ピレリテスト:ストフェル・バンドーン
・ヤングドライバー:ジャック・クロフォード

■ ハースF1チーム
・ピレリテスト:エステバン・オコン、オリバー・ベアマン
・ヤングドライバー:平川亮

■ ザウバー
・ピレリテスト:ガブリエル・ボルトレト、ニコ・ヒュルケンベルグ
・ヤングドライバー:ポール・アロン

■ アルピーヌ
・ピレリテスト:ピエール・ガスリー
・ヤングドライバー:クシュ・マイニ

注目ポイント:2026年への“先取り開幕戦”
今回の合同テストは、単なる年末イベントではない。

2026年のF1はアクティブエアロ、縮小されたダウンフォース、ERS強化、軽量化など、近年で最大級の技術革新が実施される年であり、ピレリが提供するタイヤの方向性はレースの戦略性にも直結する。

また、リンドブラッド、岩佐歩夢、ベガノビッチ、クロフォードら“次世代F1候補”が実戦距離に近いロングランを経験することで、各チームの2026〜2027年のドライバー市場にも影響を及ぼす可能性がある。

2025年のF1活動はこの合同テストで正式に終了し、全チームは2026年新車開発の最終段階へとシフトする。

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カテゴリー: F1 / F1ドライバー