元F1ドライバーのダニール・クビアト、AIマシンに敗北 “人間 vs 機械”新展開
元F1・レッドブルのドライバーであるダニール・クビアトが、アブダビでAIによる自律走行マシンとの10周バトルに挑み、敗北を喫した。この対決は昨年発足した「アブダビ・オートノマス・レーシング・リーグ(A2RL)」の注目イベントとして実施されたものだ。

A2RLは、スーパーフォーミュラ規格のシングルシーターを使用しつつ、ドライバーは搭載しない“AIドライバーレス”レースカテゴリー。各チームのエンジニアがアルゴリズムと制御技術を競う、次世代レースシリーズとして注目を集めている。

クビアトはヤス・マリーナ・サーキットにて、AIチーム「TUM」と対戦。AI側にはハンデとして先行スタートが与えられたが、元F1ドライバーの経験をもってしても追いつくことはできず、初めてAIマシンに敗れる結果となった。

ロシア人ドライバーのクビアトはF1で3度の表彰台を獲得し、2020年まで参戦後はスポーツカーへ転向。実績あるレーサーだけに、今回の敗北は象徴的な一幕と言える。

AIが“人間の限界”に迫った:クビアト vs AIマシン「HAILEY」
元F1ドライバーのダニール・クビアトは、TUMのAIマシン「HAILEY」と10周勝負の特別対決に挑んだ。ローリングスタートで10秒後方から追う形式で始まり、
・クビアト最速:57.57秒
・AI最速:59.15秒
差はわずか1.58秒。

AIは急速進化 “2024年の10秒差勝利”から一転
クビアトは2024年のアブダビで行われたAIマシンとの初対決では10秒差をつけて勝利しており、翌2024年の鈴鹿ではスタート前にAIマシンがクラッシュするなど“機械側の未熟さ”が話題を集めていた。

だが今回の10周対決では、1年で見違えるほど成熟したAI技術がクビアトを苦しめた形となった。

SNS上で揶揄されがちだったAIレーシングだが、今回の進歩を見れば、もはや笑い事では済まされない水準に近づきつつある。

ダニール・クビアトは「開発開始当初は“人間とAIの差は数分”だった。それが昨年は10秒差、そして今はコンマ数秒。進化は信じられないほどだ。AIと走る感覚は他に例えようがないし、今日はファンに最高のバトルを届けられたと思う。」と語った。

ダニール・クビアト

“人間 vs AI”はどこへ向かう? モータースポーツの新たな問い
AIマシンが今後フルグランプリ距離を走り切れるのかは未知数だが、制御技術と学習性能は確実に飛躍しており、偶発的ミスと判断力で戦う人間ドライバーとは異なるレースの概念を提示しつつある。

A2RLの登場は、ドライバーの判断力・危機回避・機械との対話を前提としてきた従来のモータースポーツに対し、「AIはどこまで“競技”として成立するのか」という問いを投げかける存在でもある。

今回のクビアト敗北は、“人間はAIに勝てるのか?”という古典的テーマを、モータースポーツ界に改めて突き付けた象徴的な瞬間となった。

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カテゴリー: F1 / ダニール・クビアト