アウディ
アウディ R18 e-tron クアトロ 2014年モデルは、アウディのプロトタイプカー史上、最高の燃費性能を誇っている。

燃費とラップタイムの向上には、パワートレインだけではなく、優れたエアロダイナミクスが大きく貢献する。FIA世界耐久選手権(WEC)第2戦スパ・フランコルシャンでは、ル・マンのハイスピードレイアウト向けに最適化したエアロダイナミクスを持つ、別バージョンのアウディ R18 e-tron クアトロがデビューを飾った。

レースマシンのエアロダイナミクス開発は、マシンの基本コンセプトと密接に関連するのが通例。アウディスポーツの2014年モデルのエアロダイナミクス開発は、2012年の夏に新型マシンのコンセプトが決定した時から始まった。

アウディスポーツ エアロダイナミクス部門リーダーのヤン・モンショーは「最初に大まかなレイアウトを作ります。エンジンの基本コンセプト、ホイールベース、ラフデザインの3要素をキーとして、基本的なエアロダイナミクス形状を決定します。その後、コンピューターによる空力シミュレーション(CFD : Computational Fluid Dynamics)を活用しポテンシャルを分析します。その結果をもとに、作業に無駄が出ない様に少しずつ詳細を煮詰めました」と説明しています。コンピューターによるCFDは、マシンの設計データをもとにボディ表面の空力を算出します。開発の初期段階でCFDを活用することで、より多くのコストを必要とする風洞実験を省略することが出来ます」と説明する。

アウディスポーツ技術開発部門リーダーのDr. マーティン・ミュルメイアーは「レギュレーションにより、これまで以上に高い燃費性能が必要となったため、空気抵抗とダウンフォースのベストバランスを探さなければなりませんでした。実走行テストの前に何度もシミュレーションを行い、必要なコーナリングスピードを支えるダウンフォースを発生させる形状を探しました。その一方で、ストレートでのトップスピード向上のために、空気抵抗は出来るだけ抑えなければなりません。2014年から始まったより厳しい燃費規制は、パワートレインだけでなく、エアロダイナミクス開発にも新しいチャレンジを生み出しました」と述べた。

ル・マンは長いストレートと多くのハイスピードコーナーからなっており、他のサーキットとは次元の異なる高速領域で闘われる。昨年のレースで、アウディのアンドレ・ロッテラーが記録したファステストラップ(3分22.746秒)の平均速度は242km/hにも達している

アウディはこの問題に対処するため、多くのダウンフォースが求められる他のWEC開催サーキット向けとは別に、空気抵抗を最小限に抑えたル・マン バージョンのボディを専用開発した。

2つのバージョンは、一目見ただけで違いが明らかだが、スパ フランコルシャン大会で2台が並ぶことにより、違いがより一層明らかになった。

フロント部分は、開口部が上部から内側に移されたフェンダーが特徴的。そしてリヤ部分はもっと顕著な違いが生まれている。ル・マン専用マシンのボディはリヤウイングと一体化され、全長がレギュレーションで認められる4,650mm最大長まで伸ばされている。これに比べ、通常モデルの全長は短め。テールパイプの形状も異なる。ル・マン専用モデルでは、センターフィンの左右に分かれたレイアウトから、ディフューザーの上部ボディへ変更されている。

アウディは、新しい燃費規制に対応するためボディの空気抵抗を徹底的に低減するシミュレーションを繰り返した。しかし、それと同時にコーナリングスピード向上のためのダウンフォースも必要とされる。

ル・マン専用モデル開発についてヤン・モンショーは「ボディのほぼ全ての部分で、通常モデルと対照的な違いが現れています。2014年からの燃費規制によって、空気抵抗低減の要求がより一層厳しさを増しました。我々は、今までにない厳しい状況の中、針に糸を通すかのようなわずかな可能性を探し当てました」と説明。

5月3日のスパ・フランコルシャンで初めて、2種のボディが同じ環境で同時に走行した。ル・マンのデータ収集のためにエントリーしたアウディ R18 e-tron クアトロのゼッケン3号車は、フィリップ・アルバカーキーとマルコ・ボナノミのドライブによって、アウディスポーツが狙った効果が発揮されていることを確認した。それらの成果を踏まえ、アウディは6月に行われるル・マン24時間レースに磨き抜かれたエアロダイナミクスで臨む。

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カテゴリー: F1 / アウディ / ル・マン24時間レース / WEC (FIA世界耐久選手権)