2026年F1エンジンは「電力が尽きればスクーター並み」とアウディF1ビノット

そう語るのは、アウディの2026年F1プロジェクトを率いるマッティア・ビノットである。彼は、新時代の最高峰カテゴリーの裏側には、ストップウォッチだけでは説明しきれない要素が数多く存在すると明かした。
「挑戦の核心はエネルギーマネジメントになる」とビノットは語った。
MGU-Hが廃止されたことで、電動モーターは最大350kWまで出力が増した。しかし逆説的に、それを活用することはより難しくなった。
「1周の中で大きな回収のチャンスはない」
さらに、加速時に使用できる電力は数秒しか持続しない。
「コーナー出口で3〜4秒使えば、“電気の燃料”は終わりだ」
その結果、総合出力約1000馬力を発揮できるのは加速時のみとなり、その後は急激に内燃エンジン主体の状態へと移行する。
「今のF1エンジンと比べれば、まるでスクーターのエンジンのようなものだ」
エネルギー回収が勝敗を分ける
だからこそ、回収効率こそが技術的な主戦場となる。電動モーターで減速すること、減速開始を早めること、直線の一部を犠牲にして次の加速に備えること。これらすべてがパフォーマンスに直結する。
「効率的に回収できるかどうかが、メーカー間の差になる」
そのため2026年型マシンではリアブレーキが小型化される。減速の一部を電動システムが担うためだ。
ドライバーの役割も変わる
ドライバーにとっても未知の世界となる。マシンは従来とは異なる方法で減速し、加速する。電動モーターは、ドライバーがすでにアクセルを踏み始めている間も制動を続ける可能性がある。
「ダウンシフト中でも扱いやすいエンジンでなければならない」
トルク、回生、リアの安定性。その均衡を築くことが重要になる。
ビノットは2014年のハイブリッド初年度と似た反応を予想している。最初は驚き、その後すぐに適応が進むと見る。

持続可能燃料も大きな鍵
もう一つの重要要素は持続可能燃料だ。
「燃料は影響する。10〜15馬力の差は、1周あたりコンマ4〜5秒に相当する」
問題は排出量ではなく化学特性である。非化石燃料の開発は複雑で容易ではない。開発に失敗すれば代償は大きい。
「どの時代の始まりでもそうだが、大きな差が出る可能性がある。シャシー、空力、エンジン…すべてだ」
2014年ほど極端ではないにせよ、あるエンジンメーカーが抜け出す可能性は十分にある。
直線は速く、コーナーは遅く
空力面でも変化は大きい。直線でのパワーが減るため、ドラッグ低減が最優先課題となる。2026年型マシンはより効率的だが、ダウンフォースは減少する。
「直線では速く、コーナーでは遅くなる」
例えばバルセロナでは、最高速が20〜30km/h向上する一方、象徴的なターン3はフルスロットルではなくなる可能性がある。
「開発が進めばダウンフォースは増えていく」
マシンはより高い車高で走行し、ポーポイズ現象は大幅に抑制される。さらに抵抗低減のための“ダブルDRS”のようなシステムも導入される。
ビノットは新車の第一印象についてこう語った。
「とても軽いことに驚いた」
MGU-Hの廃止によりサウンドも変わる。見た目も音も魅力的だ。しかしオーバーテイクはより難しくなる。電力をどこで使うかが戦略となるからだ。1本の直線に集中させるのか、それとも決定的な瞬間まで温存するのか。
2026年は単に最速のマシンを持つ者ではなく、何が“本当に速い”のかを最も早く理解した者が勝つ時代となる。
カテゴリー: F1 / アウディ
