アウディF1 エンジンに構造的課題か 2028年新コンセプト検討の背景

その差の大半はパワーユニットに起因するとされるが、単純な出力差では説明できない複雑な問題が絡んでいる。
アウディF1プロジェクト責任者のマッティア・ビノットは、この課題を受けて2027年または2028年に向けた新エンジンコンセプトの検討を進めていることを明かした。
単なるパワー不足ではない複合的な弱点
ビノットは、現在の遅れは単なる馬力差ではなく複数の要素が絡み合った結果だと説明する。
「それはパワー、エネルギーの使い方、効率性、そしてドライバビリティの組み合わせだ」
「コントロールやソフトウェアのキャリブレーションの面でも、まだやるべきことが多く残っている」
特に深刻なのがドライバビリティの問題だ。ギアチェンジのショックが大きく、ブレーキング時の安定性や加速時の挙動にも悪影響を及ぼしている。
「ギアチェンジが非常に荒く、それがブレーキング時のマシンの不安定さにつながっている」
「加速時にも影響が出ていて、非常に扱いにくい」
この影響によりリアの保護が必要となり、本来の理想的なバランスでマシンをセットアップできない状況に陥っている。
ソフトウェアでは解決できない構造的課題
エネルギー回収やデプロイメントの改善など、ソフトウェア面での進化によって一定の前進は可能だが、それだけでは根本解決には至らない。
特にスタート性能の弱さは、グリッド最大級とも言われるターボサイズに起因していると見られている。この領域はシーズン中に簡単に変更できるものではなく、抜本的な改善には時間が必要となる。
そのためドライバーとチームは、この問題が長期的な取り組みになることを認識している。
ADUOでも埋まらないギャップ
アウディはパフォーマンス不足により、ADUO(追加開発機会)制度による開発優遇を受ける可能性が高い。
しかしビノットは、短期的なアップグレードだけではトップに到達できないと明言する。
「短期的な改善だけでは、長期的にトップに立つために必要なものにはならない」
そのため、既存設計の延長ではなく、根本から見直した新コンセプトが必要との判断に至っている。
「エンジン設計のコンセプト自体を変える必要があるかもしれない。それは2027年ではなく、2028年になる可能性もある」

2030年タイトルを見据えた“待つ戦略”
一見すると遅すぎるとも思える開発スケジュールだが、これはアウディの最終目標と密接に関係している。それが「2030年タイトル獲得」という長期計画だ。
ビノットは、すべての要素がピークで揃うタイミングを重視しており、準備が整わない段階での大規模変更は避ける方針を取る。
「我々は忍耐が必要だと理解している」
「だが忍耐しながらも、できることは進めていく」
現在のパフォーマンスについては一定の評価をしつつも、まだ発展途上であることを認めている。
信頼性問題は“未成熟さ”の表れ
アウディは信頼性面でも課題を抱えているが、特定の問題が繰り返されているわけではない。
「同じ問題が繰り返されているわけではない。それは前向きな点だ」
一方で、設計・運用・人的ミスなど多岐にわたる問題が発生しており、プロジェクトの未成熟さを示している。
「設計の問題もあれば、オペレーション、基本的なミスもある」
「まだ若いチームだから起こることだ」
短期と長期のバランスが鍵
現在の開発環境はコストキャップにより制限されており、すべてを同時に改善することはできない。そのためアウディはリソース配分において明確な優先順位を設定している。
「短期と長期のバランスを取ることが重要だ」
「未来に向けた目標こそが最優先だ」
「短期のために未来を犠牲にはしない」
この方針のもと、アウディは現行パッケージの改善を続けながらも、将来の成功に向けた基盤構築を優先している。
2030年という遠い目標に向けて、アウディは“登山”のように一歩ずつ確実に前進する道を選んでいる。その過程で浮上した新エンジンコンセプトは、単なる改良ではなく、勝利のための転換点となる可能性を秘めている。
Source: The Race
カテゴリー: F1 / アウディ
