ニューウェイの“極端設計” アストンマーティンF1 AMR26の狙いと代償

現時点でのパフォーマンスは苦戦が続いているものの、その設計には明確な意図が存在する。
特に空力効率を極限まで追求した構成は、従来のセオリーを大きく逸脱するものであり、成功すれば大きなアドバンテージを生む一方で、実装には高いリスクを伴う。
極端なアンダーカットが生む空力ポテンシャル
AMR26の最大の特徴のひとつが、モノコックとサイドポッドの間に設けられた大きなアンダーカットだ。これはグリッド上でも最も大きい部類に入り、リアのコークボトル形状へ向かう気流を加速させる狙いがある。
この設計により、フロア下の空気の流速を高め、結果としてマシン全体のダウンフォース増加が期待されている。ただし、そのためには気流が剥離しないよう精密な制御が不可欠であり、設計の難易度は極めて高い。
さらに、サイドポッド内部のラジエーターは、空力形状に合わせて横方向・縦方向の両方に湾曲させられている。これにより外側のボディワークは極端なダウンウォッシュ形状を実現しているが、そのぶん内部パッケージングは非常にタイトになっている。

一体型サスペンションという大胆な選択
フロントサスペンションでは、上下のウィッシュボーンを左右分割せず、1本の構造としてノーズを貫通させる“一体型”を採用している。現行グリッドでは唯一の構成だ。
この設計は空力的には有利とされる。構造をスリム化できることで気流の抵抗を減らし、よりクリーンなエアフローを確保できる可能性がある。また剛性が高まれば、タイヤ接地の精度向上にもつながる。
一方でデメリットも明確だ。単一構造であるがゆえに荷重集中によるたわみが大きくなりやすく、それを抑えるための補強が重量増につながる可能性がある。また左右独立の調整ができないため、セットアップの自由度は制限される。
さらに、損傷時の交換作業も複雑で時間がかかるという実用面での弱点も抱えている。

マルチリンク化で弱点を補う設計思想
AMR26のサスペンションは、見た目こそウィッシュボーンだが、実際にはマルチリンク構造となっている。前後のアームが独立してハブに接続されることで、ステアリング時のタイヤ接地特性をより細かく制御できる。
これにより、トーやキャンバー、キャスターといったセットアップ要素をより独立して調整できるようになり、一体型サスペンションの弱点を補う狙いがある。
結果として、極端な空力設計と機械的な制御精度の両立を図る構成となっているが、その成立には膨大なデータ解析と精密な設計が不可欠となる。

“成功すれば革命”だが成立は困難な設計
AMR26は、空力効率を最優先に据えた結果として、従来の設計バランスを大きく崩したマシンとなっている。各要素は理論的には高いポテンシャルを持つが、それらを実走で成立させるには非常に高い完成度が求められる。
現状のパフォーマンス不足は、その“極端さ”ゆえの難しさを示しているとも言えるが、裏を返せば開発が進めば大きく化ける余地を残している構成でもある。ニューウェイが描いたこの挑戦的なコンセプトが、今後どこまで現実の速さへと結びつくかが焦点となる。
Source: Formula1.com
カテゴリー: F1 / アストンマーティンF1チーム / ホンダF1
