エイドリアン・ニューウェイ 「内通者」を味方にアストンマーティンF1を改革
エイドリアン・ニューウェイは、アストンマーティンF1で大規模な変革を推し進めている。その原動力のひとつとなっているのが、シルバーストンのファクトリー内部にいる“内通者”だ。

この人物は、工場内の実際の運営状況や職場の空気を定期的にニューウェイへ伝えており、それが技術部門を中心とした抜本的な改革を引き起こしている。

AutoRacer Italiaの報道によれば、チームの筆頭オーナーであるローレンス・ストロールは、ニューウェイに完全な裁量を与えたという。これにより、ニューウェイがかつてレッドブル・レーシングで実践していたマネジメントモデルが、アストンマーティンにも導入された。

この方針転換の結果、元空力責任者のエリック・ブランダンをはじめ、複数階層のエンジニアがチームを離脱し、その多くがF1のライバルチームへ移籍することとなった。

再編の本質と新たなリーダー像
改革は単なる人員整理にとどまらない。チームは経験豊富な人材と若手の両面で補強を進め、とりわけ新時代の課題に対応できるシニア人材の獲得に力を入れている。その一環として注目されたのが、マックス・フェルスタッペンのレースエンジニアであるジャンピエロ・ランビアーゼに対する打診だ。チーム代表(チームプリンシパル)やCEOといった要職を任せる構想が示され、ニューウェイが2026年F1マシン「AMR26」および将来車の開発に専念できる体制づくりが目指されていた。

しかしランビアーゼは、少なくとももう1シーズンはレッドブルに残留する決断を下した。彼は引き続きフェルスタッペンのレースエンジニア兼、ミルトンキーンズ拠点での現場運営責任者を務める。レッドブルは私的事情による一部レース欠場の柔軟性も認めており、その場合はサイモン・レニーが代役を務める予定だ。

時代を超えて刻まれた功績
ニューウェイは、F1史に名を刻んだ数々のマシンの“父”でもある。ウィリアムズ時代にはアイルトン・セナのマクラーレン・ホンダを打ち破り、マクラーレンではミハエル・シューマッハのフェラーリを上回るマシンを生み出した。さらにレッドブルを黄金期へ導き、メルセデスとルイス・ハミルトンの支配を終わらせ、再びエナジードリンクチームを頂点へ押し上げた。F1史上屈指の技術者と評される所以である。

エイドリアン・ニューウェイ アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム F1

アナログ思考と規則解釈の達人
ニューウェイの設計手法は今も昔ながらだ。紙にスケッチを描くことから始める。

「私はよくA4用紙に最初のスケッチを描く。そこから製図板で手描きのラフを重ねていく。コンピューターではできない作業で、とても自然に感じられる」

40年以上F1の現場を知る“旧世代”のエンジニアである彼は、技術規則を徹底的に読み込み、合法の範囲で限界を突くことに長けている。グレーゾーンを巧みに突き、規則の隙間を最大限に活用するその姿勢こそが、彼の真骨頂だ。

2022年にグラウンドエフェクトが復活した際、その経験は大きな武器となった。他チームがポーポイジングに苦しむ中、レッドブルだけは大きな問題を抱えず、ニューウェイは再び“切り札”のような存在となった。

ピットでは今もノートを手に、図を描きながらマシンの特性や調整点を書き留めている。スマートフォンではなく手書きを選ぶ理由は明確だ。それが最も成果を生んできた方法だからである。事実、彼が関与したマシンは通算26回の世界タイトルを獲得しており、これはF1史上最多の実績だ。

アストンマーティンで、ニューウェイは再び成功の再現を狙っている。自らのやり方を一切曲げることなく。

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カテゴリー: F1 / アストンマーティンF1チーム