アストンマーティンF1 2026年型ホンダPUを称賛「エンジンも電動系も理想的」
アストンマーティンF1のCEO、アンディ・コーウェルがシンガポールGP後に日本のさくらの施設を訪問し、ホンダとの2026年共同プロジェクトについて新たな手応えを語った。

2026年に向けてフェルナンド・アロンソ、エイドリアン・ニューウェイ、ホンダ、アラムコという強力な布陣を揃えるチームにおいて、彼の技術的リーダーシップがますます注目を集めている。

コーウェルはかつてメルセデスAMG F1でパワーユニット部門を率い、2014年から2020年まで7連覇を達成した人物。現在もマクラーレンが使用するメルセデスPUの設計に関与した経歴を持つ。その彼が「アストンマーティン×ホンダ」の現場を視察した感想は、極めて前向きなものだった。

「日本で2日間、さくらのホンダ開発センターを訪問した。非常に良いミーティングができたよ。今は趣味のようにエンジンを研究しているが、彼らのパフォーマンス、信頼性、そして速さを追求する姿勢を見るのは刺激的だった」とコーウェルは語る。

彼によれば、アラムコ・バルボリンの担当者とも同席し、燃料や潤滑技術を含めた総合開発体制を確認したという。「彼らの努力、効率改善、そして情熱は本当に印象的だった」とコーウェルは強調した。

ホンダとの連携が生む“ワークスチーム”の強み
コーウェルは特に「カスタマーチーム」と「ワークスチーム」の違いを明確に指摘した。

「カスタマーチームだと、パワーユニットはブラックボックスのようなものだ。その中身を変更することはできない。だが、我々はホンダのワークスチームとして、すべてのシステムについてオープンに議論し、パフォーマンスを最大化することができる」

そして彼はこう続ける。「すべての議論の“通貨”はラップタイムなんだ。質量、放熱、燃料消費、重心、空力的なチャンス──すべてがラップタイムに換算される。これらを総合的に最適化することが、真のワークス体制の価値だ」

HRD Sakura (ホンダF1)

技術的進化:熱効率、軽量化、そしてギアボックス開発
「エンジンの性能は非常に良好で、熱放散が少なく、フロー効率も高い。クランクシャフトの出力も優れており、電動系の往復効率も理想的だ」と語るコーウェル。

2026年型マシンでは総重量制限の厳格化が大きな課題だが、彼はそれを「全エンジニア共通の挑戦」と捉えている。

「軽量化、剛性確保、空力効率、冷却性能──どれも妥協できない。2026年もまた、難易度の高い年になるだろう」と述べた。

また、アストンマーティンはメルセデス供給から完全に独立し、独自開発のギアボックスとリアサスペンションを設計中だという。

「シルバーストーンとさくらの両拠点で試作ギアボックスのベンチテストを行っている。クランクシャフトからトランスミッションへの動力伝達の剛性を詰める議論をホンダと重ねており、両拠点のエンジニアが協働して解析している」と説明した。

さらに「シルバーストーンにいるエンジニアが、さくらのエンジンベンチデータをリアルタイムで確認できるよう、情報共有インフラも整備した」と、距離1万2,000kmを超える両拠点の連携強化を明かした。

2026年に向けた成熟と自信
風洞やシミュレーターの拡張により、アストンマーティンF1のシルバーストーン本拠は著しく進化している。「チームは成熟してきた。イモラでのアップデートのように、改善を実証できる体制が整っている」とコーウェル。

そして、ホンダとの連携体制をこう総括する。

「CFD解析から風洞試験、シミュレーションまで、すべてが“周回あたりのタイム短縮”に直結している。ホンダのパフォーマンスシミュレーション担当と我々のエンジニアが密に連携し、すべてのシステムを最適化している」

2026年型AMR26が“次世代F1の基準車”となる可能性は決して夢物語ではない。アストンマーティンF1はいま、技術、人材、そして資本のすべてで「真のワークスチーム」へと変貌を遂げつつある。

Source: Marca

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カテゴリー: F1 / アストンマーティンF1チーム / ホンダF1