アントネッリ F1エミリア・ロマーニャGP「ファンの熱気に呑まれた」

地元ボローニャから列車でわずか30分のイモラに凱旋したアントネッリは、クラスメート全員をサーキットに招待し、チームに100皿のラザニアを差し入れるなど話題を集めたが、その舞台裏では緊張感とプレッシャーに苛まれていたという。
しかしその舞台裏で、彼のメンターであるメルセデスF1代表トト・ヴォルフの姿はなかった。ヴォルフはロサンゼルスで長男の卒業式に出席しており、今回のGPでは初めて現場との無線やデータ通信すら完全に遮断された状態だった。
ヴォルフは事前に独紙『Bild』の取材にこう語っていた。
「これが初めて完全に現場と遮断されるレースになる。キミにとってこのグランプリはとても重要なものになるだろう。イタリア・メディアからのプレッシャーも相当なはずだ。だからこそ、『自分にとって良くないものはすべて排除しろ』と伝えたんだ」
しかし現実には、アントネッリは今季ここまでで最も苦戦。最終的にはマシントラブルによりリタイアとなったものの、本人もその内容に納得していない。
「自分のドライビングにもっと取り組む必要がある」とチェッカーフラッグ後に振り返った。
「どこを改善できるかを見極めないといけないし、特に暑いコンディションでのレースペースを上げる必要がある。自分にとって最悪の週末だったと思う」
そして彼は、自身にとって初めての“ホームレース”を取り巻いた雰囲気が、冷静さを欠く原因になったと率直に語った。
「ファンの熱気にうまく対応できなかった。リラックスできていなかったし、走っている間も緊張していた。でも今回の経験で、次の母国レースまでに学びを得られたと思う」
「もっと自分のための時間を取るべきだった。いろんなところでエネルギーを無駄にしてしまって、それがパフォーマンスにも影響した」

ヴォルフの不在中、現場でチームをまとめたのは広報責任者のブラッドリー・ロードで、彼は独『Sky Deutschland』に対し、「イモラはチームにとって痛い後退だった」と語った。
さらに、1997年F1ワールドチャンピオンのジャック・ヴィルヌーヴは、メルセデスとアントネッリに対して厳しい言葉を投げかけた。『Sky』のインタビューで皮肉交じりにこう述べた。
「可愛い話だよね、友達を連れてきたなんて。でもここは職場なんだ。職場に友達や家族を連れてくるもんじゃない」
またヴィルヌーヴは、メルセデスの育成責任者グウェン・ラグリューが、イモラGPを巡る“サイドイベント”について「あまり快く思っていなかった」との情報も伝えた。
一方、現地イモラにはモトGPのレジェンド、バレンティーノ・ロッシの姿もあった。アントネッリとは過去にカートでも親交があるロッシは、母国レースで苦戦した後輩に対し『Sky Italia』を通じてエールを送った。
「彼にとって、イモラでの初めての週末は本当に厳しいものだったと思う。でもそれがイタリアで走るということなんだ」
「経験を積んでいけば、そのうち人付き合いも断れるようになるさ」
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