アルファタウリF1、AT04の不安定なリアの最適化を狙ったアップデート
スクーデリア・アルファタウリの2023年F1マシン『AT04』は、近年のレッドブル姉妹チームのマシンのなかで最高のものとは言えない。予選の平均ペースはアルファロメオを上回る程度で、主な欠点は低速コーナーであり、リアの車高が高くなるにつれて、ダウンフォースの弱くなることだ。
イギリスGPで導入された大きなアップデートは、数カ月前から計画されていたもので、特に低速コーナーでのリアエンドのグリップを向上させることを目標としている。
このアップグレードには第2段階があり、今週末のハンガリーGPで角田裕毅と新チームメイトのダニエル・リカルドがドライブする予定だ。
シルバーストーンでのアップグレードは、フロア、アッパーボディ、ディフューザーを中心に行われた。また、ミディアムダウンフォースのリアウィングの新バージョンも用意されたが、これは別開発だった。
トンネルインレットエリア
気流をリダイレクトすることでアンダーフロアのパフォーマンスを向上させるのはトンネルインレットから始まる。フロアのリーディングエッジを高くし、アンダーフロアを流れる流量を増やしている。対流する空気の量をアンダーフロアとサイドのアウトウォッシュとでどのように分けるかが、フロアのパフォーマンスを最大限に引き出すための重要なポイントとなる。
アウトウォッシュされた空気は、アンダーフロアのトンネルを通る空気の速度を上げるために使われる。外気とアンダーフロアの気圧差が、フロアのダウンフォースを決める。アンダーフロアの気流は、圧力の低い部分を満たすために勢いよく流れ、気流を速く誘導できればできるほど、ダウンフォースは大きくなる。外気流によってフロアを密閉できればできるほど、アンダーフロアの空気の流れは速くなる。
しかし、使用できる容積は限られている。アンダーフロアの気流とサイドのアウトウォッシュの最適な分担を決めることが重要で、これは気流をどれだけ速く誘導できるかによって決まる。そこでボルテックス・ジェネレーター(空気を回転させ、周囲の空気を加速させる小さな突起物)が威力を発揮する。
アルファタウリでは、アンダーフロアの容積を拡大するためにフロアを高くしたのに加え、トンネルエントランスのルーフとベーンの形状をすべて変更し、より大きな渦の力を誘発することで、新たに増大した容積にエネルギーを与えている。
フロアとフェンスの変更による新しい流れは、流れを再最適化するために新しいフロアエッジ形状を必要とした。フロアエッジで許容されていたシングルウイングプロファイルは、カットアウトを通して後方のアンダーフロアに向かって内側に延長された。これにより空気圧を操作してフロアエッジの密閉性を高め、トンネルがより大きなダウンフォースを生み出すことを可能にした。
リアボディワーク
リアのボディワーク上部は拡幅され、大砲のような形状になっている。アルファタウリは、これによりヨーやステアによる気流へのダメージが軽減されると主張している。
ボディワークの幅を広くすることで静圧を高め、対向気流を横切る際にその部分の気流に生じる乱流に対する抵抗力を高めている。これにより、その部分の気流はより強固で安定したものとなり、その結果、その下のフロアエッジがより効果的に機能するようになる。
AT04のリアウイングは再設計され(左がオーストリア仕様、右がシルバーストーン仕様)、リアボディワークの幅が広がっている。
ディフューザー
トンネルの出口にあるディフューザーの壁が弓形に曲げられ、気流の横方向への広がりが大きくなっている。これにより気流の後流がリアタイヤから引き出され、ディフューザーに形成される詰まりが軽減される。
リアウイング
ミディアムダウンフォースのリアウイングが改良され、中央部の荷重が増加し、外側端部の荷重が減少している。より楕円に近い形状のため、同等のダウンフォースが得られ、空気抵抗が軽減されるはずだ。
このアップグレードの大きさを考えると、シルバーストーンで2台ともQ1進出を果たせず、角田裕毅とニック・デ・フリースがそれぞれ16位と17位でレースを終えたことはチームにとって残念なことだった。
とはいえ、シルバーストンのレイアウトはハンガロリンクほど低速コーナーでのパフォーマンスが重視されるものではない。
シルバーストーンで行われた圧力測定では、アップデートが望ましいダウンフォースの増加をもたらしていることが示唆されたものの、マシンのバランスは最適化されていなかった。チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルスは金曜日の夜、シルバーストーンで「分析の結果、アップデートがうまく機能していることがわかった。FP2ではさらにクルマに変更を加えたが、ソフトタイヤのショートランでのバランスという点では、どちらのクルマもスイートスポットにに到達できず、フロントエンドが不足していたため、ここでのラップタイムキラーとなったと言ってよいだろう」と語った。
「路面温度が高かったことがフロントタイヤのオーバーヒートを悪化させ、フロントのグリップ不足を招いた。バランスを改善することでラップタイムがさらに向上すると考えている」
「要約すると、空力アップデートはデータ上では利点を示しており、一晩の作業の焦点は、セットアップとドライビングで何が必要かを確認し、この追加のパフォーマンスを活用してラップタイムに変えることだ」
テクニカルディレクターのジョディ・エギントンは、「今回導入した空力アップデートは、おおむね期待通りだったようだが、シルバーストンで前進するには十分ではなかった。ハンガリーで予定されている空力アップデートは、この問題を解決するための重要なステップとなる」と語った。
カテゴリー: F1 / スクーデリア・アルファタウリ / F1マシン
イギリスGPで導入された大きなアップデートは、数カ月前から計画されていたもので、特に低速コーナーでのリアエンドのグリップを向上させることを目標としている。
このアップグレードには第2段階があり、今週末のハンガリーGPで角田裕毅と新チームメイトのダニエル・リカルドがドライブする予定だ。
シルバーストーンでのアップグレードは、フロア、アッパーボディ、ディフューザーを中心に行われた。また、ミディアムダウンフォースのリアウィングの新バージョンも用意されたが、これは別開発だった。
トンネルインレットエリア
気流をリダイレクトすることでアンダーフロアのパフォーマンスを向上させるのはトンネルインレットから始まる。フロアのリーディングエッジを高くし、アンダーフロアを流れる流量を増やしている。対流する空気の量をアンダーフロアとサイドのアウトウォッシュとでどのように分けるかが、フロアのパフォーマンスを最大限に引き出すための重要なポイントとなる。
AT04のフロアのリーディングエッジが高くなった。
アウトウォッシュされた空気は、アンダーフロアのトンネルを通る空気の速度を上げるために使われる。外気とアンダーフロアの気圧差が、フロアのダウンフォースを決める。アンダーフロアの気流は、圧力の低い部分を満たすために勢いよく流れ、気流を速く誘導できればできるほど、ダウンフォースは大きくなる。外気流によってフロアを密閉できればできるほど、アンダーフロアの空気の流れは速くなる。
しかし、使用できる容積は限られている。アンダーフロアの気流とサイドのアウトウォッシュの最適な分担を決めることが重要で、これは気流をどれだけ速く誘導できるかによって決まる。そこでボルテックス・ジェネレーター(空気を回転させ、周囲の空気を加速させる小さな突起物)が威力を発揮する。
アルファタウリでは、アンダーフロアの容積を拡大するためにフロアを高くしたのに加え、トンネルエントランスのルーフとベーンの形状をすべて変更し、より大きな渦の力を誘発することで、新たに増大した容積にエネルギーを与えている。
フロアとフェンスの変更による新しい流れは、流れを再最適化するために新しいフロアエッジ形状を必要とした。フロアエッジで許容されていたシングルウイングプロファイルは、カットアウトを通して後方のアンダーフロアに向かって内側に延長された。これにより空気圧を操作してフロアエッジの密閉性を高め、トンネルがより大きなダウンフォースを生み出すことを可能にした。
フロアエッジ内のシングルウイングは延長され、リアで内側に向けられ、カットアウトを通してアンダーフロアに向けられ、アンダフロアトンネルの密閉性を高めるために空気圧を操作するデバイスが形成されている。
リアボディワーク
リアのボディワーク上部は拡幅され、大砲のような形状になっている。アルファタウリは、これによりヨーやステアによる気流へのダメージが軽減されると主張している。
ボディワークの幅を広くすることで静圧を高め、対向気流を横切る際にその部分の気流に生じる乱流に対する抵抗力を高めている。これにより、その部分の気流はより強固で安定したものとなり、その結果、その下のフロアエッジがより効果的に機能するようになる。
AT04のリアウイングは再設計され(左がオーストリア仕様、右がシルバーストーン仕様)、リアボディワークの幅が広がっている。
ディフューザー
トンネルの出口にあるディフューザーの壁が弓形に曲げられ、気流の横方向への広がりが大きくなっている。これにより気流の後流がリアタイヤから引き出され、ディフューザーに形成される詰まりが軽減される。
リアウイング
ミディアムダウンフォースのリアウイングが改良され、中央部の荷重が増加し、外側端部の荷重が減少している。より楕円に近い形状のため、同等のダウンフォースが得られ、空気抵抗が軽減されるはずだ。
このアップグレードの大きさを考えると、シルバーストーンで2台ともQ1進出を果たせず、角田裕毅とニック・デ・フリースがそれぞれ16位と17位でレースを終えたことはチームにとって残念なことだった。
とはいえ、シルバーストンのレイアウトはハンガロリンクほど低速コーナーでのパフォーマンスが重視されるものではない。
アルファタウリは、シルバーストンでマクラーレンのような飛躍はなかったものの、チームはアップグレードのパフォーマンスに満足してしており、ハンガロリンクではさらなるクルマの改良が期待される。
シルバーストーンで行われた圧力測定では、アップデートが望ましいダウンフォースの増加をもたらしていることが示唆されたものの、マシンのバランスは最適化されていなかった。チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルスは金曜日の夜、シルバーストーンで「分析の結果、アップデートがうまく機能していることがわかった。FP2ではさらにクルマに変更を加えたが、ソフトタイヤのショートランでのバランスという点では、どちらのクルマもスイートスポットにに到達できず、フロントエンドが不足していたため、ここでのラップタイムキラーとなったと言ってよいだろう」と語った。
「路面温度が高かったことがフロントタイヤのオーバーヒートを悪化させ、フロントのグリップ不足を招いた。バランスを改善することでラップタイムがさらに向上すると考えている」
「要約すると、空力アップデートはデータ上では利点を示しており、一晩の作業の焦点は、セットアップとドライビングで何が必要かを確認し、この追加のパフォーマンスを活用してラップタイムに変えることだ」
テクニカルディレクターのジョディ・エギントンは、「今回導入した空力アップデートは、おおむね期待通りだったようだが、シルバーストンで前進するには十分ではなかった。ハンガリーで予定されている空力アップデートは、この問題を解決するための重要なステップとなる」と語った。
カテゴリー: F1 / スクーデリア・アルファタウリ / F1マシン