フェルナンド・アロンソ 雨天の視界改善案「F1サーキットに高速道路の舗装」

ベルギーGPでは、スタート前に80分の中断を挟み、さらにセーフティカー先導による数周の後にレースがようやく始まった。
この慎重な進行に対し、特にハイダウンフォース仕様でセッティングしたドライバーたちは、すでに乾きつつある路面にもかかわらず、レースコントロールが保守的すぎると不満を口にしていた。
だが問題はグリップではなく、「危険な高速区間でのスプレーによる視界不良」にあった。
アロンソは、視界の悪化は2017年に導入されたF1マシンのワイドタイヤとボディ幅の拡大に起因するとし、さらにコース舗装の変化も影響していると主張する。
「タイヤ、特にワイドタイヤの影響で確実に視界は悪くなった。加えて今のアスファルトも昔とは違う。セパンでは大雨の中でも問題なくレースできていた」とハンガリーGPの会見で語った。
「最近のアスファルトは黒くてドライではグリップが高いけど、ウェットになるとまるで鏡のようで、視界がひどい。中にはスプレーがまったく上がらない高速道路もある。ああいう舗装を全サーキットに導入すれば、スプレーはゼロになる」
「もちろんドライでは摩耗が激しくなるかもしれないし、僕はただのドライバーだから分からない。でも出発点にはなるはずだ」
とはいえ、全サーキットの再舗装は巨額の費用がかかるうえ、タイヤ寿命やグリップなど予期せぬ副作用もある。
視界改善アスファルトの実際の仕組みと課題
アロンソの言う「スプレーが出ない高速道路」の舗装は、実際には「OGFC(オープングレーデッド・フリクション・コース)」と呼ばれる構造を採用している。これは、粗い骨材を使い、細かい粒子(ファイン)を少なくした開放的な表面構造により、雨水を表面だけでなく下方向にも排水できるようにしたものだ。
ただしOGFCは施工費が高く、施工精度によっては耐久性にも課題がある。また、サーキットのような高負荷環境では、開放構造の舗装がタイヤの摩耗に大きく影響する懸念もある。バーレーンのようにOGFCに近い舗装を持つコースも存在するが、砂塵などで排水性能が失われる可能性もある。
このように、理論上は可能でも実用化には多くの課題が伴う。

カルロス・サインツも賛同、だが慎重論も
このアロンソの主張に、同郷のカルロス・サインツも同調している。
「僕もF1がもっと革新的なアプローチをすべきだと思っている。スプレーが出ない舗装は確かに存在するし、理論的にはストレート部分だけでも導入すれば効果がある」
しかし、スパでの運営判断については一部理解を示し、次のように語った。
「スパは過去に悲劇的な出来事があった場所でもあるし、FIAは非常に慎重な姿勢をとっていた。木曜の時点で我々にもそれは伝えられていた。もしかしたらもっと広く、ファンにもその意図を共有すべきだったかもしれない」
「個人的には、もう少し早くレースを再開できたと思っている。でも、レース開始の決断を下す立場の人のリスクも理解できる。視界不良で大きな事故が起これば、その責任は彼らが負うことになる」
F1はこれまでにも「レインスプレー抑制装置」のテストを行ってきたが、実戦導入には至っていない。アロンソの提案は現時点では「興味深い仮説」にとどまるが、安全性とエンタメ性を両立するための議論は今後も続きそうだ。
カテゴリー: F1 / フェルナンド・アロンソ / アストンマーティンF1チーム