角田裕毅に必要な「結果と安定」 レッドブルF1幹部が語るセカンドシート条件
角田裕毅の立場が揺らぎつつある。スペインGP後、レッドブルF1のヘルムート・マルコとクリスチャン・クリエンが、予選での失速や精神面の課題に言及。イモラでのクラッシュの影響もあり本来の実力を発揮できていない中、チームが求める“理想のセカンドドライバー像”との差が浮き彫りになっている。

オスカー・ピアストリが勝利を収めた2025年スペインGP。レッドブルにとっては、マックス・フェルスタッペンの表彰台争いが終盤に崩れ、チームとしても戦略面での反省が残る週末となった。

そんな中、レース後に放送されたServusTVの番組で、マルコとクリエンはこの週末を徹底的に振り返り、フェルスタッペンの行動から角田裕毅の立場、さらには将来のセカンドドライバー像まで踏み込んだ議論を展開した。

セーフティカーがすべてを狂わせた
「我々は2ストップ戦略で入った。ピットウォールには70人がいて、それぞれが役割を担っている。序盤の判断としては正しかった」とマルコは語る。

クリエンも「ノリスに対してマックスはしっかりプレッシャーをかけていた。ペースは不足していたが、戦略は機能していた」と同調した。

だが、終盤に出されたセーフティカーがすべてを変えた。

「残っていたのはハードタイヤだけ。それを履いたのは明らかにミスだった。代替案としてステイアウトもあり得た。マクラーレンには抜かれても、ルクレールは抑えられた可能性がある」とマルコは悔やむ。

「マックスがハードを履いた瞬間、厳しい展開になるとすぐに感じた」とクリエン。

なぜハードタイヤを選んだのか
フェルスタッペンは無線でタイヤ選択への疑問を投げかけていた。

「彼は『なぜハードなんだ?』と問いかけてきた。新品タイヤが中古より良いという前提が裏目に出た」とマルコは打ち明ける。

「セーフティカー中にピアストリはタイヤ温度を落としすぎて失いかけていた。我々も温度管理に苦しんだ。ランドは射程圏内だったが、オスカーは手が届かなかった」と続けた。

ラッセルとの接触とフェルスタッペンの“導火線”
終盤のリスタート後、フェルスタッペンはラッセルと接触。その過程もマルコは冷静に分析する。

「マックスはルールを隅々まで理解している。ラッセルが制御を失っていた。だから避けるしかなかった。我々はあれを50:50と見ていたが、ペナルティリスクを避けるため、渋々ポジションを戻した」

だが、その後の“再加速”が混乱を招いた。

「突然踏み直して、流れが崩れた。完全な判断ミスだった」とマルコは断言。

クリエンは「謝罪は評価するが、F1ではあれはやりすぎだった。マックスはコクピットで一瞬の判断を誤ると、感情の爆発に繋がってしまう。今回はその典型だった」と指摘した。

角田裕毅 F1クリスチャン・クリエン

マクラーレンの完成度、レッドブルの現実
「週末を通してコンマ3秒は遅れていた。互角だと思っていたが、マクラーレンが完全に上だった。マックスは限界まで引き出しているが、それでも勝てるマシンではない」とマルコ。

「終盤までは良い戦いだった。けれど、マクラーレンの完成度がすべてを物語っていた」とクリエンも同調した。

「マクラーレンと互角に戦えるのは3~4戦に1回。今はそのくらいの差がある」とマルコは現実を受け入れている。

角田裕毅の“限界”と精神面の課題
マルコは、角田裕毅の現状についてより踏み込んだ分析を加える。

「角田はフリー走行では時にマックスと0.1秒差しかないこともあるが、予選になるとそれが一気に開く。マックスはすぐに全力を出せるが、角田はそれを取り戻そうとしてミスを犯す」

さらに、スペインGPでの不振の背景にはイモラでのクラッシュの影響があったという。

「イモラでのアクシデントのせいで、必要なスペアパーツが揃わなかった。マシンのスペックだけで0.2~0.3秒のハンデを背負っていた」

マルコは、角田裕毅が“その枠”に入りきれていないことも示唆している。

「チェコ(ペレス)は当初良かったし、何度かグランプリも勝った。だが、やがて崩れていった。我々に必要なのは、マックスに張り合うのではなく、自分の道を見失わず、精神的に安定しているドライバーだ。みんなそこに失敗してきた」と語り、角田裕毅も“その枠”に入るには結果が必要だと示している。

ヒュルケンベルグの一発と“理想の2番手像”
この日、ポイントを獲得したザウバーのヒュルケンベルグにも話題が及んだ。

「ザウバーにとっても、結果を出すことは重要だった。セーフティカーがヒュルケンベルグに味方したね」とクリエンは評価した。

それを受け、マルコは過去の選考についても振り返る。

「実はペレスを起用したとき、ヒュルケンベルグも候補だった。ペレスは当時バーレーンで勝ったが、その後は安定しなかった。我々が必要なのは、マックスに勝とうとせず、自分の道を見失わない精神的に安定したドライバーだ。みんなそこに失敗してきた」

クリエンも「マックスの隣に座るには、速さだけでなく、戦略理解と精神面のタフさが必要。それがなければ機能しない」と補足する。

角田裕毅 レッドブル F1ヘルムート・マルコ

ハジャーの台頭と角田裕毅の立場
チームメイト争いの焦点は、いまやアイザック・ハジャーに移りつつある。

「彼は安定してポイントを獲得し、VCARBの中で存在感を放っている。いまのところレッドブルは動く気配を見せていないが、角田裕毅が結果を出せなければ話は変わる可能性がある」とクリエンは語る。

契約報道とマルコの後継問題
フェルスタッペンの契約を巡る“退出条項”報道について、マルコはきっぱり否定した。

「ナンセンスだ。マックスが出たいと思えば、そんなまわりくどいやり方はしない。もっと直接的に動くだろう」

そして、自身の去就についてもこう語った。

「私はもう若くはない。セバスチャン(ベッテル)は理想的な後任だと思っているが、具体的な話にはなっていない。まだ元気だし、2026年まで契約はある」

カナダGPへ――“波乱のない週末を”
最後にマルコは、次戦カナダGPに期待を寄せた。

「気温が高すぎると我々のタイヤは厳しくなる。以前は暑さが有利だったが、今は逆だ。マクラーレンがどうやってタイヤを持たせているのかは謎だが、カナダは高速コーナーが少ない。穏やかで、混乱のない週末を期待しているよ」

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カテゴリー: F1 / 角田裕毅 / レッドブル・レーシング