角田裕毅 レッドブル残留にはF1モナコGPで「クリーンな週末」不可欠

2025年F1シーズン開幕からわずか2戦後、角田裕毅はレーシングブルズからレッドブルへと昇格。明確な目標は、ポイントを獲得し、マクラーレンとのタイトル争いにおいてチームをサポートすることだった。しかし昇格以降、彼は週末を通してノーミスで走りきることができておらず、クラッシュや低調なレース結果が続いていることが、厳しい評価につながっている。
角田裕毅は、2戦で結果を残せなかったリアム・ローソンに代わって起用された。ローソンはクラッシュに加え12位という成績しか残せず、それを上回ることが角田裕毅の最低限の使命だった。
その最低限の期待には応えているが、決して十分とは言えない。レッドブルでの5戦で最高位は9位、累計ポイントはわずか4点。一方、チームメイトのマックス・フェルスタッペンは同期間に2勝を挙げ、88ポイントを獲得している(スプリントを除く)。
イモラでは、その実力差がはっきりと表れた。角田裕毅は予選Q1で激しくクラッシュし、決勝はピットレーンからのスタートとなった。一方のフェルスタッペンは予選2番手からスタートし、勝利を収めている。
「大きな事故だったが、何より大事なのは彼が無事だったことだ」と、チーム代表のクリスチャン・ホーナーはコメントしている。
角田裕毅は自らのクラッシュを「不必要で愚かだった」と全面的に非を認めた。このアクシデントによりマシンは全面修復となり、狭いイモラでは追い上げが極めて難しい状況に。しかし、そのような中でも角田裕毅は10位までポジションを上げ、貴重な1ポイントを加算した。
「もし通常の位置からスタートできていれば、もっと上の順位にいけたはずだ。今後のレースでそれを見せてほしい」とホーナーは語る。
レース後には、レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコも「おめでとう。次はクラッシュなしでな」と声をかけており、一定の評価は得た形だ。
角田裕毅自身も、「レースで自信を取り戻せたことが何より良かった」と語りつつ、「このような環境では、プレッシャーで自分を見失いがちになる。自分自身を見つめ直す必要がある」と振り返る。

レッドブル昇格以降、彼は母国GPの日本を皮切りに、サウジアラビアやマイアミといった狭く難易度の高い市街地サーキットに連戦で挑んできた。そして、イモラでは常設サーキットでありながら追い抜きが難しいという別の試練に直面した。
こうした背景もあり、今後のレースで角田裕毅が「クリーンな週末」を通じて、レッドブルにふさわしい存在であることを証明できるかどうかが鍵を握る。サウジアラビアではピエール・ガスリーとの接触、日本GPではノーポイントといった事例もあり、安定性への疑念は払拭されていない。
イモラでの挽回劇は、本人だけでなくチームにとってもポジティブな要素だったが、真の試練は次戦モナコGPにある。モナコの市街地コースは壁が近く、ランオフエリアがほとんど存在しないため、些細なミスでも即リタイアにつながる。しかも、予選で後方に沈めば、追い上げはほぼ不可能に近い。
角田裕毅は「もう気持ちは切り替えている」と語るが、一方で「クラッシュの記憶がまだ頭に残っている」とも認めており、それが精神面での不安材料になる可能性もある。
そして問題はメンタルだけではない。イモラでのクラッシュにより、今季のスペアパーツ配分にも影響が出ている。
今回の修復では、新しいサバイバルセルとフロアが必要となったが、それは事故の前日にようやく角田裕毅のマシンに投入された新仕様だった。さらに、エンジン関連パーツも多数交換されており、内燃エンジン(ICE)、ターボチャージャー、MGU-H、MGU-K、エナジーストア、コントロールエレクトロニクスが新たに使用された。
これらの部品は年間使用数に上限があるため、角田裕毅は今後、グリッドペナルティを受けるリスクが高くなる。ようやくチームに馴染み始めたタイミングでペナルティが重なれば、レッドブルが見込んだ才能を開花させる前に評価が下されてしまうかもしれない。
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