フェイク画像が拡散 フェルスタッペンとメルセデスF1代表の接触報道の真相

この噂の発端は、イタリアの島サルデーニャ周辺でヴォルフとフェルスタッペンのヨットがそれぞれ係留されていたという位置情報だった。そこから噂は一気に加速した。
やがて、ふたりが会合を持ったという「証拠」として、FacebookやInstagram、X(旧Twitter)には画像が出回り、2026年に向けた契約準備が始まっているとする投稿が相次いだ。
ただし、問題なのは──その画像はすべて偽物だったという点だ。そして、実際には会談など行われていなかった。
画像をよく見れば、いくつか明らかに不自然な点があった。
なぜフェルスタッペンはF1パスを首から下げているのか?なぜふたりはオランダのナンバープレートがついたミニバスで移動しているのか?そして、なぜ現フェラーリの副チーム代表であるジェローム・ダンブロジオが一緒にいるのか?
これらの疑問の答えは、画像の出所を追跡することで明らかになった。もともとの素材は、2022年のF1オランダGP後にプライベートジェットへと向かうヴォルフと、当時メルセデスで働いていたダンブロジオを撮影したYouTube動画だった。
その映像を確認すればわかるように、フェルスタッペンとされていた人物は実際には彼ではなく、当時スカイスポーツで解説を務めていた元F1ドライバーのポール・ディ・レスタだった。その顔が切り取られ、画像編集でフェルスタッペンの顔に差し替えられていたのだ。
他にも、ヴォルフがフェルスタッペンのプライベートジェットに乗り込むとされる画像も加工されたもので、実際にはヴォルフ自身のジェット機に乗り込むシーンを撮影したものであり、機体の種類も色も全く違っていた。
この一連のフェイク画像に端を発した最新のフェルスタッペン移籍説について、ヴォルフは今週、オーストリア放送協会(ORF)の取材に対し、画像加工が噂の発端となったのは初めての経験だったと語った。
「飛行機を使ってコラージュ画像を作るなんて、今までにないことだ」とヴォルフは言う。「こんなことは初めてだよ」
そして彼は、フェルスタッペンとの会談は「なかった」と明言し、F1関係者が人気の観光地で休暇を過ごすのは特別なことではないとも説明した。
「たまたま同じ場所で休暇を過ごしていたからといって、一緒にF1で働くことにはならない」と彼は語った。
「我々は以前から良好な関係を築いているし、たまたま同じ場所で休みを取るのが好きなんだよ」
この件について、木曜にベルギーGPの現地で話したフェルスタッペンも、自分が「会談した」と聞いたのはその噂が広まってからだったと明かしている。
「そのとき俺は海で泳いでたよ」と彼は言う。「正直言って、そんな話どうでもいい。家族や友人と一緒にバカンスを過ごしてただけだし、他の人がたまたま同じ場所にいたって、それだけの話だ」
「島にいたのは俺とトトだけじゃない。たまたま同じ島にいれば、そういうこともあるさ」

選択肢は開いたまま
ヴォルフとフェルスタッペンの会談は事実ではなかったが、フェルスタッペン陣営とメルセデスの間に何のやり取りもなかったわけではない。
関係筋によれば、フェルスタッペンのマネージャーであるレイモンド・フェルミューレンとヴォルフとの間では、将来の展望について理解を深めるための会話が行われているという。
これは2026年の「電撃移籍」を前提とした動きではなく、2027年以降を見据えた話だという。
この将来像の確認作業は、ヴォルフが現在のドライバーであるジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリの去就を判断する際にも影響しているようだ。
もしヴォルフがラッセルとアントネッリを長期契約で固めるなら、そこにフェルスタッペンの席はなくなる。だが仮にフェルスタッペンが将来レッドブルを離れることを選べば、メルセデスにとっては千載一遇のチャンスを逃すことにもなる。
このような背景は、ラッセルやアントネッリも十分に理解しており、ヴォルフ自身も「その可能性が背景にある」と認めている。
「我々としては、ジョージとキミと共に継続するのが基本方針だ」とヴォルフはORFに語る。
「だが、マックスのような存在や彼の将来の計画を無視することはできない。だから我々も検討はしている。ただ、大きな驚きがあるとは思っていない」
つまり、2026年についてはラッセルとアントネッリが残留する見通しだが、それ以降については柔軟性が残されているということだ。

フェルスタッペンの契約解除条項
フェルスタッペンは2028年末までレッドブルとの契約を結んでいるが、実際には一定の条件を満たせば契約を解除できる「パフォーマンス条項」が存在することが広く知られている。
関係筋によると、夏休み前の時点でドライバーズランキング3位以内にいなければ、2026年からフリーエージェントになれるとされている。
現状では、残るベルギーGPとハンガリーGPを残してフェルスタッペンはランキング3位につけており、このままいけば2026年の残留が確定する。
メルセデスが2026年の獲得を狙うには、彼がランキング外へ落ちるか、レッドブルと巨額の契約解除合意を結ぶ必要がある。
皮肉にも、彼を3位から引きずり落とせる可能性があるのは現在18ポイント差で4位につけるラッセルだけだ。残り2戦で両方ともラッセルが上回る必要があるが、確率としては低い。
それでも、たとえ解除条項が発動可能であったとしても、フェルスタッペンが2026年もレッドブルに残留する公算は高い。理由は、翌年以降の各チームの車両パフォーマンスが読めないという不確実性にある。
新レギュレーション導入初年度にどこかへ移籍するのは、大きな「賭け」であり、選択を誤ればキャリアに深刻な影響を及ぼしかねない。
理にかなっているのは、2026年のマシンの勢力図が判明してから判断することだ。
特に重要なのは、フェルスタッペンが2027年にフリーエージェントになる可能性が高いと見られている点である。来季(2026年)にドライバーズランキング2位を逃せば、解除条項が適用されるという見通しだ。
こうした将来の不確実性こそが、フェルスタッペンがクリスチャン・ホーナーの退任とローラン・メキースの新代表就任について「自身の将来に影響しない」と語った理由でもある。
「将来の決断にあたって、あまり関係ないと思う」と彼は言った。「結局のところ、重要なのは僕たちがマシンを速くするために努力するかどうか、それだけだ」

ラッセルは今や落ち着いている
フェルスタッペンの去就がまだ定まっていない中、ラッセルは自身の契約更新を待つ立場となっており、夏休み前には決まらないだろうと見ている。
「当初の意図としては、夏休み前に決着をつけたかった」とラッセルは語った。
「でも現実的に考えて、夏休みに入る前に何かが決まるのかと言われれば、分からない。まだ契約書すら提示されていないし、残り2週間で何かがまとまる可能性は低い。しかも、これは双方が納得する必要があることだ」
もし契約がすでに決まっていれば、自分の人生はもっと楽だったはずだが、ラッセルはすでに状況を受け入れている。
特に今年の初めに感じていた将来への不安について、今はもう気にしていないという。
「この数か月で、自分の将来についてストレスを感じていた状態から、パフォーマンスを維持しながら前向きになれた」と彼は語る。
「自分のパフォーマンス次第なのだから、気にしすぎても仕方ない。メルセデスはベストなドライバーを必要としているし、俺はそのひとりだと信じている。俺が彼らを必要としているし、彼らも俺を必要としている。レースの世界ってそういうものだ」
また、夏休みが始まるころには、フェルスタッペンの2026年の契約もパフォーマンス条項によって事実上確定しているだろうと見ており、将来に向けた駆け引きが行われるのは当然のことだとラッセルは話す。
「今の状況って、そんなに特別なものだとは思ってないよ」と彼は言う。「俺の側には緊張感はない。どのチームにもマシンは2台あるしね」
「今が自分のキャリアの中で一番いいパフォーマンスをしていると思うし、チームの大半のポイントも俺が獲得してる。だから客観的に見れば、俺のシートは安全と言っていいだろう」
「もしパフォーマンスが落ちたら心配する必要があるかもしれないけど、大事なのは自分の将来じゃなく、パフォーマンスそのものなんだよ」
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