WRC:トヨタのオジエがラリー・モンテカルロ最多記録の9勝目
2023年FIA世界ラリー選手権(WRC)第1戦ラリー・モンテカルロの競技最終日デイ4が1月22日(日)にモナコを起点に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(GR YARIS Rally1 HYBRID 17号車)が優勝。カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組 (69号車)が総合2位を、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合4位を、TGR WRCチャレンジプログラムにより4台目のGR YARIS Rally1 HYBRIDで出場の勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)が総合6位を獲得した。

競技4日目最終日の日曜日は、モナコの北側に広がるフランス南部の山岳地帯で2本のステージを各2回走行。4本のSSの合計距離は67.88kmだった。最終日も天気は良く路面は全体的にドライコンディションとなった。しかし、一部には凍結を防ぐための塩が路面に大量に散らばり、非常に滑りやすい区間もあった。

デイ3で総合2位のロバンペラに16秒差を築いていたオジエは、オープニングのSS15でベストタイムを記録。続くSS16ではロバンペラがベストタイム、SS17ではオジエがベストタイムと、新旧世界王者による激しい首位争いがラリー終盤まで続いた。そして、ボーナスポイントがかかるパワーステージに指定された最終のSS18では、ロバンペラがベストタイムで締めくくるも、オジエが18.8秒差で首位を守り優勝。ラリー・モンテカルロ通算9勝(WRC開催としては8勝)と、伝統のラリーでの最多勝利記録を更新し、WRC通算優勝回数を56に延ばした。また、昨年の最終戦ラリージャパンでオジエと初めてコンビを組んだランデにとっては、記念すべきWRC初勝利となった。なお、トヨタにとっては今回で5回目のラリー・モンテカルロ制覇だが、いずれも異なるクルマによる勝利となる。また、GR YARIS Rally1 HYBRIDは今大会で用意された18本のステージのうち、16ステージでベストタイムを記録した。

優勝したオジエは今シーズンもまた全戦ではなく、数戦への出場を予定しているため、総合2位でフィニッシュし、パワーステージを制してボーナスの5ポイントを獲得したロバンペラにとっては、理想的なシーズンのスタートになった。ロバンペラはやや慎重にラリーをスタートしたが、確実に調子を上げていき、合計6本のベストタイムを記録。最終日までオジエとレベルの高い戦いを繰り広げた。

エバンスは、金曜日のSS5でタイヤにダメージを負って約40秒を失うまでは、オジエに次ぐ総合2位につけていた。その後も調子は良く、日曜日の朝にスピンを喫するもポディウムまで27.8秒の総合4位でフィニッシュ。最終のパワーステージでは3番手タイムで走行し、ボーナスポイントを獲得した。

勝田は初日のSS1で4番手タイムを記録するなど、走り始めから上位を争うことができるスピードを示した。残念ながらSS2でトラブルにより大幅にタイムを失ったが、その後も4番手タイムを何度も出すなど好調を維持。総合6位まで順位を挽回して臨んだ日曜日も調子は良く、SS17では今大会ベストとなる2番手タイムを記録。その時点で総合5位のオィット・タナックに0.1秒差に迫った。逆転を期して臨んだ最終ステージでは多くのタイムを失ったが、それでも総合6位の座を守り難関ラリー・モンテカルロを走破した。

豊田 章男 (TGW-WRT会長)
セブは9回目、ヴァンサンにとっては初めてのラリー・モンテカルロ優勝おめでとう!

GRヤリス ラリー1にとっては2年目のスタートでした。
チームは昨年のラリージャパンから今シーズンを見据えたチャレンジをはじめ、短いオフの間にも車両へのアップデートを積み重ねて今回の初戦に臨んでくれました。毎年のことですがクリスマスもゆっくり休めずに準備をしてくれているチームメンバー全員に感謝します。また、その努力に応えるようにセブたちは優勝、他のドライバーたちも全SSを走り切ってくれました。チームとして気持ちの良いシーズンスタートになったと思います。みんな、ありがとう!

今年のシーズンオフはもう一つ大きな変化がありました。
チームが新たな会社「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」として始動したことです。新会社はWRCでの勝利を目指すだけでなく、ラリーの裾野がもっと広がるような商品開発や、競技がもっとサスティナブルになるような様々な取り組みにチャレンジしていきます。Chief Rally Sporting Officer(CRSO)のヤリ-マティ、Chief Technical Officer (CTO)のトムをはじめ、ここの社員はみんなラリーが大好きでクルマが大好きです。ラリーを通じて、クルマがもっと人々の笑顔を増やしていけるよう一緒に様々なチャレンジをしていきましょう!

追伸 ドライバー、コ・ドライバーのみんなへ
ラリージャパンの後、みんなでダート走行を楽しんだことを覚えていますか? あのコースがあるのは蒲郡という町です。その蒲郡市が「ここでラリーを開催してみたい! 蒲郡をモナコのようにしたい!」と盛り上がりはじめてくれました。今日、そのイベントがあったのでTOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamの一員としてみんなと同じレーシングスーツを着て楽しくドーナツの絵を描いてきました。見てくれていた皆さんにラリーの楽しさを知ってもらえたと思います。将来、蒲郡がモンテカルロのようになったらまたみんなで走りに来てください!

ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)
この結果を非常に嬉しく思いますし、素晴らしい形でシーズンをスタートすることができました。今年は厳しい戦いになることが予想され、このラリーもどうなるのだろうかと思っていましたが、チーム全員の努力が報われました。昨年のこのラリーでセバスチャンは優勝まであと少しだったので、今回は非常に高いモチベーションを持ってここモンテカルロに来ました。木曜日の夜から彼の目には闘志が感じられましたし、その後も完璧なドライビングを見せてくれました。また、カッレ、エルフィン、貴元が素晴らしいペースで走ってくれたことにも満足しています。カッレはモンテカルロの初表彰台に向けて確実に成長してきましたし、来年はきっと優勝できると思います。今回、クルマは非常に好調でしたが、これからも努力し続ける必要があります。

カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 HYBRID 69号車)
非常に満足できる週末でした。ラリーの序盤は出走順による路面クリーニングの影響が予想以上に大きく、タイムをかなり失いましたが、その後は良いペースで走ることができました。路面クリーニングがなされたステージを走る時は、他のドライバーと同じペースで走ることが可能でしたし、ベストタイムを争うこともできました。最終的にはパワーステージでフルポイントを獲得し、シーズンの初戦で多くのポイントを得ることができました。チームの素晴らしい仕事によって我々のチームは全員が速く、自信を持って走ることができたと思います。モンテカルロのマスターであるセブに対しては、心からおめでとうと言いたいです。

エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 HYBRID 33号車)
全体的にはポジティブな週末でした。ペースはかなり良かったですが、さらに速く走ることもできるパフォーマンスがあったはずです。金曜日には表彰台争いから脱落してフラストレーションが溜まりましたが、それがラリーというものですし、時にはそういうこともあります。そのあとは4位につけるのが精一杯で、3位との差は少し大きすぎました。それでもシーズン開幕戦としては十分なポイントを獲得できましたし、まずまずのパフォーマンスだったと思います。クルマはとても調子が良かったですし、チームも一生懸命働いてくれました。それが今回のリザルトにも表れていると思います。

セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 HYBRID 17号車)
完璧な週末でした。このラリーは自分にとって大きな意味があり、勝つことは常に特別なことなので、優勝の喜びを満喫したいと思います。自分自身、そしてチームのことも誇りに思います。この週末はチームにとってかなり優位な展開でした。トヨタは今回も素晴らしいクルマを提供してくれたので、感謝しています。1-2フィニッシュでシーズンをスタートできたのは素晴らしいことですし、カッレも良いパフォーマンスを見せてくれました。昨日はもっと速く走れるとわかっていながら、リスクを冒したくないという気持ちが強く、ナーバスになっていました。今日はもっと純粋に走ることができると思っていましたし、ラリーの終盤を楽しむことができました。ヴァンサンが初優勝したことも本当に嬉しく思います。彼と組んで2戦目だったにも関わらず、私のサイドシートで完璧な仕事をしてくれました。優勝に相応しい働きをしたと思います。

ラリー・モンテカルロの結果
1 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) 3h12m02.0s
2 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +18.8s
3 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +44.6s
4 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +1m12.4s
5 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (フォードPuma Rally1 HYBRID) +2m34.9s
6 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +3m32.6s
7 ダニ・ソルド/カンディド・カレーラ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +3m47.5s
8 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +3m51.3s
9 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ Fabia RS Rally2) +10m03.4s
10 ヨアン・ロッセル/アルノー・デュナン (シトロエン C3 Rally2)+10m07.9s

次回のイベント情報
WRC次戦は、2月9日から12日にかけて、スウェーデンで開催される「ラリー・スウェーデン」。雪と氷に覆われた森林地帯が舞台となるラリー・スウェーデンは、今シーズン唯一のフルスノーイベント。昨年大会から安定した積雪が見込める北部のウーメオーにホストタウンを移動し、ステージは全て新しくなりました。ラリー・スウェーデンは、積雪路やアイスバーンを金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれた特殊な雪道専用タイヤで走ることで、非常に高いグリップが得られる。そのためスノーラリーではあっても平均速度は非常に高く、例年WRCの全イベントの中でトップクラスのハイスピードラリーになる。

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カテゴリー: F1 / トヨタ / WRC (世界ラリー選手権)