イエンツ・マークアート (トヨタF1 チームマネージャー)
トヨタF1チームのチームマネージャーを務めるイエンツ・マークアートが、チームマネージャーの仕事について語る。

チームマネージャーのあなたは、現在どんな職務を担っているのですか?
基本的な私の仕事は、F1の競技の部分(スポーティングレギュレーションに基づくスポーツ競技としてのF1)及びロジスティクスに関してFIAと連絡を取りつつ、チームの実務面のあらゆる機能が、間違いなくスムーズに進むようにすることだ。

グランプリの際は、サーキットの現場でのオペレーションの責任を負っている。つまり私は、チームの仕事のあらゆる要素に関わっていると言える。ピットストップから、ドライバーの予定、ケータリング(食事)まで、全てにね。チームの人々に可能な限り最善の仕事環境をしっかりと用意できるよう、そしてチームメンバーが最適な形で仕事ができるよう、私はチーム全体の仕事を隅々まで俯瞰する必要がある。FIAとの関わりについて言うと、私の仕事はチームにしっかりとレギュレーションを遵守させること、また、競技中の振る舞いやロジスティクスに関して生じたあらゆる問題について(FIAと)協議することだ。

かなり仕事が多いように聞こえますが、それは怖じ気づいてしまう程の挑戦と言えませんか?
確かに挑戦であるものの、ただし、自分の新しい仕事に怖じ気づくと言うよりは、わくわくしていると言うべきだろう。間違いなく忙しい仕事だし、時間的な要求も厳しくはあるものの、これは素晴らしい機会であり、究極的にはとても満足のいく仕事でもある。私は自分の仕事を楽しんでいる。レースカーの開発の最前線で仕事ができる、そんな新しい1日が自分の目の前にある状況をね。これは素晴らしいモチベーションだよ。

チームマネージャーになって初めて迎えた序盤戦では、2度の2連戦が行われ、シーズン全体を通じて最も長い移動を強いられました。今シーズンの滑り出しでは、色々な意味で難しい部分があったのでは?
スパ・フランコルシャンやニュルブルクリンクへの短い移動の手配の方が簡単だっただろうが、でも、様々な異なる状況があるからこそ、F1での仕事がこれほどまでに面白いわけでね。私自身はこの役職に着任したばかりとは言え、チームには、クルマと機材とチームメンバーをあるサーキットから数日以内に別のサーキットへと移動させる経験が既に豊富にある。こうしたことには事前の周到な計画が必要だし、サーキットで仕事をするスタッフにも大いにがんばってもらわなければならないが、今回は全てがとてもスムーズに進んだ。

今回からまたヨーロッパでレースをするわけですが、スペインGPの準備の方が、(ヨーロッパ以外の場所で行われた第4戦までよりも)簡単なのでしょうか?
大まかに言って、モーターホームと機材を積んだトラックを使えるヨーロッパでのレースの方が準備は簡単だ。仕事用のスペースを必要なだけきっちり確保できるし、チームメンバー全員がよく馴染んでいる快適な仕事環境を用意できるからね。ただし、ヨーロッパラウンドの初戦は、言うまでもなく、シーズンが始まってからそういった設備を使う最初の機会でもあるだけに、厄介な問題の1つや2つは間違いなく起こるものだ。これは避けたくても避けられないことだ。全く同じレースやサーキットなんてあり得ないわけで、従って私は常にあらゆる状況に備えておかなければならない。

今シーズンのスペインGPに関して、何か特別なことはありますか?
我々みんなが、日曜日の結果が特別なものになることを願っているが、これについてはとにかく待ってみるしかない。それ以外について言えば、今回はGP2シリーズが開幕し、我々のサードドライバー、小林可夢偉がこれに参戦する。彼はGP2アジアのタイトルを獲得したばかりだし、この週末の間、我々は全員で彼を支援していく。また、我々のチームドクターでチームの全員の健康を診ているリカルド・チェカレリにとって、今回が300回目のグランプリになる。彼は我々がF1に参戦して以来、ずっとチームドクターを務めているので、チームの誰もが彼を知っているし、我々としても間違いなく何かお祝いをすると思う。

チームマネージャーとしての最初のシーズンが既に始まっているわけですが、今はどんな気持ちですか?
チームからこのような責任を与えられたことは大変光栄なことだし、私はこの挑戦を本当に楽しんでいる。チームの全員にとってシーズン開幕前は忙しい時期だったが、私にとってもそうだった。と言うのも、覚えるべき情報や慣れておかなければならない手順やその他諸々のことが、とにかくたくさんあったからね。シーズン開幕の時期は例年特に忙しくなるものだが、チームマネージャーである私にとって開幕数戦の間はいつも以上に忙しかった。だが今は状況が落ち着いてきたし、最初の4戦を終えて3つも表彰台のトロフィーを持ち帰れたことには大いに満足している。チームの士気は素晴らしいし、みんなが本当に良い仕事をしてくれた。今シーズンの彼らは、更に幾つものトロフィーに値すると思う。

あなたは以前からずっとモータースポーツのファンだったのですか?
実は小さい頃はどちらかと言うと飛行機に興味があり、大学では航空宇宙学を勉強した。私の兄(または弟)はパイロットになったし、子どもの頃は一緒によく飛行場に出掛けて、飛行機が離着陸する様子に目を凝らしていた。今でも、あれだけの重量の金属が空を飛べるなんてすごいと思うよ! だから私は自宅に古くて価値のある自動車があるような典型的なクルマ好きではないが、私はキャリアの最初からずっと自動車業界で仕事をしている。

現在までのあなたのキャリアについて、すこし教えてください。
私の職業人としてのキャリアは、自動車の製造業での仕事がスタートだった。エギゾースト、触媒、そしてその後に直接噴射のエンジニアを務めた。だが約2年後にモータースポーツの世界に足を踏み入れる機会が訪れた。モータースポーツ界に入ることがずっと私の願いだったから、決断は簡単だった。私はイルモアにて、F1とカートプログラムの開発エンジニアとして働いた。1999年から2000年の間、私はアメリカにて、イルモアエンジンを使用するカートチームをサーキットの現場でサポートする仕事をした。これは素晴らしい経験だったが、その後、ドイツに戻るチャンスが訪れ、トヨタのF1プロジェクトの本当に最初の段階から関わることになった。トヨタ初のF1エンジンを開発したグループの一員となれたのは素晴らしかった。また、ウィリアムズへのエンジン供給を実現させる仕事に関われたことと、マネージャー・エンジン・カスタマー・サプライとして彼らとの関係を構築できたことは、とても満足のいく仕事だった。私はこれまでのトヨタでの体験を楽しんできたが、それは自分自身がチームと共に成長し、進化できたと感じているからだ。

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カテゴリー: F1 / トヨタ