トヨタF1:パスカル・バセロン(ベルギーGPプレビュー)
トヨタF1チームのシャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーであるパスカル・バセロンが、スパ・フランコルシャンの特徴や必要となるセッティングなどを語った。
あなたのことを、“スパ・フランコルシャンのファン”と呼んで差し支えないでしょうか?
私はそのサーキットの近くに住んでいるし、次戦は私にとってはホームグランプリになる。もちろん、私はスパが大好きだよ。
ということは、スパからケルンまで毎日通勤しているのですか?
そう、でもそれ程悪いものじゃない。片道100キロだが、私のトヨタにとってはそれ程キツいものじゃないよ!クルーズモードで走れるし、実際にはかなりリラックスもできるからね。午前6時20分に自宅を出て、午後9時半過ぎに戻る。F1らしい仕事の日々さ!その時間帯には渋滞は問題にならないしね。
ですが、なぜフランス人であるあなたがベルギーに住んでいるのですか?
なによりもまず、フランス語圏だから私の家族にとっては都合がいい。また、周辺の人々の日々の生活に対するアプローチが違う。近所付き合いがとても容易なんだ。以前、フランスのクレルモン・フェランに住んでいた時は、隣近所の人達と知り合いになるのに3年もかかった。ベルギーでは社交的な生活を送れたし、2カ月程度で友人も数多くできた。みんなとてもリラックスしていて、良い生き方をしていると思う。また、この地区には様々な異なる文化がある。東に20キロ行けばドイツ語圏があるし、北に20キロ行けばオランダ語圏がある。また、リエージュの周辺にはちゃんとフランス語圏もあるしね。
そしてサーキットそのものもちょっと特殊ですよね?
まったくだね。そう考えているのは私一人だけじゃない。ドライバーたちのワクワクする気持ちを感じられる場所の一つだし、とにかくその場にいるだけで素晴らしいんだ。オールージュを駆け抜けるF1カーを見ているのは最高だ。とにかく速いからね。一つだけちょっとした問題があるとすれば、今はオールージュを全開で行けるということだね。それでもインパクトは凄いが、ただし、見ている側には各車が限界ギリギリじゃないことも分かっている。ドライバーとエンジニア含め、とにかくチームの全員がスパに行くのが好きなんだ。たとえ雨であってもね。日が射している時は素晴らしいしね。
オールージュは予選でもレースでも、どんな状況でも全開で行けるのでしょうか?
エンジンがV8の場合、雨のとき以外は全開だね。私の記憶が正しければ、V10の頃は予選で全開だったと思う。だがV8になってからは燃料搭載量やタイヤの摩耗の程度に関わらず、とにかく常に全開だ。それでもオールージュが凄いのは、コーナーを通過するときに生じる負荷とGフォースだ。スピード、タイヤのグリップ、空気の圧力のせいで、負荷とGフォースがほぼ限界に近いレベルになる。我々はサスペンションを極端な状況に耐えられるよう設計しているが、スパのオールージュは極限のコーナーと言える。サスペンションの部品を設計する際、極度の負荷を受けるコーナーとしてオールージュを念頭に置いている。ただし大変なのはサスペンションだけではない。タイヤにもまた大きなストレスがかかる。
技術的な観点から見た場合、スパの周回全体に関してどんなことが言えるでしょう?
スパのレイアウトは非常に個性的だ。高速コーナーが多いため、普通ならハイダウンフォースにする必要があるが、スパには長いストレートがあるため空力面でハイダウンフォースを追求することはできない。実際の所は中〜低ダウンフォースになる。また、独特のレイアウトのため、クルマの様々な部分がキツくなる。スパで唯一負荷が楽になるのはブレーキシステムだ。冷却の時間が十分にあるし、比較的急激なブレーキも少ないからね。
タイヤに関して主に気を付けなければならないのは、どんな点でしょう?
2種類のタイヤのどちらも摩耗の問題は厳しくなる。長い高速コーナーがあるためかなりグレイニング(めくれ摩耗)が発生するし、平均速度が速いためブリスタリング(タイヤ表面に気泡ができてしまう状態)も起こりやすい。今回はブリヂストンの4種類のコンパウンドのうち、最も硬い方の2種類を使うことになる。我々の立場からすると、タイヤに関してはソフトな側の方が好ましい。というのも、タイヤが問題になる状況では、大抵我々は他チームよりも良いパフォーマンスを発揮できるからね。
予測不能な変わりやすい天候に備えて、どんなことができるのでしょう?
近年のスパの統計を見てみれば、それほど雨にたたられていないことが分かるが、とは言え、天候が不順なのは確かに広く知られている通りだ。また、予測不能なのは天候だけじゃないから、その点も注意が必要だ。雨になるとコース状況も変わるからね。例えば1995年の場合、雨がやんでからわずか3周後にはスリックタイヤで速いタイムを出すことができた。これは陽射しの中で路面がすぐに乾いたからだ。ところが2005年の場合、状況は正反対で、雨がやんでからも全く路面は乾かなかった。あの時は陽射しが弱かったが、ただし、グランプリ当日まで毎日何が起こっていたのかも考える必要がある。地面が水浸しになったのかどうか? (コースが)浸水したのかどうか? そういった要素を考慮しておけば、どのくらい速くコースの排水が終わるのかが予測できる。スパで何が起こるのかを正確に予測するのは非常に困難だがね。
スパでは何か新しいパーツを投入しますか?
空力パッケージに、日々の開発作業から出来上がってきた新パーツを幾つか投入する。今回は我々の基本パッケージではないので、まずはその部分からして異なっている。先週モンツァでテストを行ったが、そのテストでの主眼はイタリアGPに向けての準備だった。モンツァでも独特な低ダウンフォースのセットアップが必要になるからね。
開催日程:ベルギーGP
カテゴリー: F1 / トヨタ
あなたのことを、“スパ・フランコルシャンのファン”と呼んで差し支えないでしょうか?
私はそのサーキットの近くに住んでいるし、次戦は私にとってはホームグランプリになる。もちろん、私はスパが大好きだよ。
ということは、スパからケルンまで毎日通勤しているのですか?
そう、でもそれ程悪いものじゃない。片道100キロだが、私のトヨタにとってはそれ程キツいものじゃないよ!クルーズモードで走れるし、実際にはかなりリラックスもできるからね。午前6時20分に自宅を出て、午後9時半過ぎに戻る。F1らしい仕事の日々さ!その時間帯には渋滞は問題にならないしね。
ですが、なぜフランス人であるあなたがベルギーに住んでいるのですか?
なによりもまず、フランス語圏だから私の家族にとっては都合がいい。また、周辺の人々の日々の生活に対するアプローチが違う。近所付き合いがとても容易なんだ。以前、フランスのクレルモン・フェランに住んでいた時は、隣近所の人達と知り合いになるのに3年もかかった。ベルギーでは社交的な生活を送れたし、2カ月程度で友人も数多くできた。みんなとてもリラックスしていて、良い生き方をしていると思う。また、この地区には様々な異なる文化がある。東に20キロ行けばドイツ語圏があるし、北に20キロ行けばオランダ語圏がある。また、リエージュの周辺にはちゃんとフランス語圏もあるしね。
そしてサーキットそのものもちょっと特殊ですよね?
まったくだね。そう考えているのは私一人だけじゃない。ドライバーたちのワクワクする気持ちを感じられる場所の一つだし、とにかくその場にいるだけで素晴らしいんだ。オールージュを駆け抜けるF1カーを見ているのは最高だ。とにかく速いからね。一つだけちょっとした問題があるとすれば、今はオールージュを全開で行けるということだね。それでもインパクトは凄いが、ただし、見ている側には各車が限界ギリギリじゃないことも分かっている。ドライバーとエンジニア含め、とにかくチームの全員がスパに行くのが好きなんだ。たとえ雨であってもね。日が射している時は素晴らしいしね。
オールージュは予選でもレースでも、どんな状況でも全開で行けるのでしょうか?
エンジンがV8の場合、雨のとき以外は全開だね。私の記憶が正しければ、V10の頃は予選で全開だったと思う。だがV8になってからは燃料搭載量やタイヤの摩耗の程度に関わらず、とにかく常に全開だ。それでもオールージュが凄いのは、コーナーを通過するときに生じる負荷とGフォースだ。スピード、タイヤのグリップ、空気の圧力のせいで、負荷とGフォースがほぼ限界に近いレベルになる。我々はサスペンションを極端な状況に耐えられるよう設計しているが、スパのオールージュは極限のコーナーと言える。サスペンションの部品を設計する際、極度の負荷を受けるコーナーとしてオールージュを念頭に置いている。ただし大変なのはサスペンションだけではない。タイヤにもまた大きなストレスがかかる。
技術的な観点から見た場合、スパの周回全体に関してどんなことが言えるでしょう?
スパのレイアウトは非常に個性的だ。高速コーナーが多いため、普通ならハイダウンフォースにする必要があるが、スパには長いストレートがあるため空力面でハイダウンフォースを追求することはできない。実際の所は中〜低ダウンフォースになる。また、独特のレイアウトのため、クルマの様々な部分がキツくなる。スパで唯一負荷が楽になるのはブレーキシステムだ。冷却の時間が十分にあるし、比較的急激なブレーキも少ないからね。
タイヤに関して主に気を付けなければならないのは、どんな点でしょう?
2種類のタイヤのどちらも摩耗の問題は厳しくなる。長い高速コーナーがあるためかなりグレイニング(めくれ摩耗)が発生するし、平均速度が速いためブリスタリング(タイヤ表面に気泡ができてしまう状態)も起こりやすい。今回はブリヂストンの4種類のコンパウンドのうち、最も硬い方の2種類を使うことになる。我々の立場からすると、タイヤに関してはソフトな側の方が好ましい。というのも、タイヤが問題になる状況では、大抵我々は他チームよりも良いパフォーマンスを発揮できるからね。
予測不能な変わりやすい天候に備えて、どんなことができるのでしょう?
近年のスパの統計を見てみれば、それほど雨にたたられていないことが分かるが、とは言え、天候が不順なのは確かに広く知られている通りだ。また、予測不能なのは天候だけじゃないから、その点も注意が必要だ。雨になるとコース状況も変わるからね。例えば1995年の場合、雨がやんでからわずか3周後にはスリックタイヤで速いタイムを出すことができた。これは陽射しの中で路面がすぐに乾いたからだ。ところが2005年の場合、状況は正反対で、雨がやんでからも全く路面は乾かなかった。あの時は陽射しが弱かったが、ただし、グランプリ当日まで毎日何が起こっていたのかも考える必要がある。地面が水浸しになったのかどうか? (コースが)浸水したのかどうか? そういった要素を考慮しておけば、どのくらい速くコースの排水が終わるのかが予測できる。スパで何が起こるのかを正確に予測するのは非常に困難だがね。
スパでは何か新しいパーツを投入しますか?
空力パッケージに、日々の開発作業から出来上がってきた新パーツを幾つか投入する。今回は我々の基本パッケージではないので、まずはその部分からして異なっている。先週モンツァでテストを行ったが、そのテストでの主眼はイタリアGPに向けての準備だった。モンツァでも独特な低ダウンフォースのセットアップが必要になるからね。
開催日程:ベルギーGP
カテゴリー: F1 / トヨタ