F1 トロロッソ ホンダF1 本田技研工業 アゼルバイジャンGP 2018年のF1世界選手権
トロロッソ・ホンダは、F1アゼルバイジャンGPの決勝で、予想通り、バクーならではの波乱の展開となったレースで生き残り、2台揃って完走を果たした。

ブレンドン・ハートレーは10位入賞。F1で自身初となるポイントを獲得した。ブレンドン・ハートレー自身の喜びとともに、チームにとってもこれまでの苦労が少し報われ、今後の励みになる成果だった一方で、前戦からの問題解決には至らないパフォーマンスに終わった。

第4戦アゼルバイジャンGPの舞台であるバクーの市街地コースは、シリーズの中でも特徴的で難易度の高いサーキットである。全長約6kmの中に、グランプリコースの中でも1、2を争う2kmの長いストレートがあるほか、ほぼ直角の低速コーナーが多く、市街地コースの特徴である路面のうねりや非常にタイトなコース幅の要所があり、ドライバーにとっても、マシンにとってもギリギリのチャレンジを要求するコースとなっている。

加えて今年は、例年よりもおよそ2カ月早い開催となったことで、気温、路面温度が従来よりも上がらないコンディションとなった。このことが、すべてのドライバー、チームを、タイヤの温度管理という面で悩ませ、市街地路面と相まってグリップ不足を引き起こしている。

トロロッソ・ホンダにとっては、この難しい状況の中で、前戦での不振をばん回しなければならないという課題があった。

「前戦を終えての解析で、ある程度原因の特定はできているのですが、それをこのコースで検証し確認することはとても難しいことです。さまざまなトライも含め、できるだけのことを進めるしかありません」と田辺豊治。

ドライバーの経験も大きい要素となるコースで、ピエール・ガスリーはGP2での走行経験はあるが、ブレンドン・ハートレーにとっては初めてのコースで、マシン、ドライバーともに手探りの状態で走行が始まった。

前戦同様に、プラクティスでのパフォーマンスは低迷した。チームは空力を中心にさまざまなセットアップを試したが、「マシンのバランスとグリップがなかなか向上せず、いい感触を得られていない」とピエール・ガスリーはコメント。予選に向けてさらなる改善が必要だった。

そうして迎えた予選では、チームにアンラッキーが襲いかかる。1回目のアタックでピエール・ガスリーはまずまずのタイムを出したものの、セッション序盤のコンディションはあまりよくなく、路面が改善する2回目に賭けるしかない。ブレンドン・ハートレーは、コースインしたもののイエローフラッグが相次ぎ、アタックには至らずピットに戻った。

勝負はセッション終盤の2回目のアタックに託されたが、ブレンドン・ハートレーはアタック中にバリアと接触しパンクを喫する。スローダウンしたブレンドン・ハートレーが、タイムアタック中のピエール・ガスリーのラインを阻み、ピエール・ガスリーはギリギリで避けたがコースオフ。チームメート同士の激突という、あわや大事故の状況だった。

「今までレースをしてきて一番怖い瞬間だった。時速320㎞でぶつかるところだった」とピエール・ガスリー。「完全に僕の判断ミスだった。ピエールには申し訳ないことをした」とブレンドン・ハートレー。激突を免れたことは、チームにとって今回最大のラッキーだったかもしれない。

予選後、ホンダF1 テクニカルディレクターの田辺豊治は「予選の結果は厳しいものでしたが、ここでのレースは何が起こるか分からない。決勝に向けて全力を尽くします」と17番手とノータイムに低迷した結果を踏まえながらも、レースへの意気込みを語った。

予選でタイムアタックが不発に終わったトロロッソ・ホンダは、ピエール・ガスリーが17番手、ブレンドン・ハートレーが19番手からの決勝スタートとなった。予想通り、レースは波乱の展開となる。オープニングラップからクラッシュが発生し、セーフティカーが導入。好スタートを決めたピエール・ガスリーは4周後のレース再開時点では7番手にまでポジションを上げた。しかし、ストレートで度々後続に抜かれ、13周目にピットインする時点では13番手まで順位を下げていた。

レースが小康状態となった中盤から終盤にかけて、トロロッソ・ホンダの2台は14、15番手を走行していたが、残り10周あまりとなった時点で、レースは大波乱の様相を呈した。上位を走るレッドブルの2台がメインストレートで接触し、これによりセーフティカーが導入される。セーフティカー中にハースがクラッシュするアクシデントも起こり、セーフティカー先導は7周と長引いた、この間にピエール・ガスリー、ブレンドン・ハートレーはともにウルトラソフトタイヤへ交換し、最後の戦いに備える。残り5周でレースが再開した後も波乱は続き、上位の脱落が相次いだ。目まぐるしい展開の中、11番手から入賞を狙って追撃していたピエール・ガスリーにもアクシデントが襲った。前を行くハースのマグヌッセンがストレートで無謀なブロックを仕掛け、ピエール・ガスリーは逃げ場を失いマシンにダメージを負ってしまう。それでもピエール・ガスリーは残りのレースを走り切り12位完走を果たした。このアクシデントで、ブレンドン・ハートレーが10番手にポジションを上げ、チェッカーフラッグを受ける。ピエール・ガスリーの脱落は残念だったが、ブレンドン・ハートレーの入賞がそれを補うかたちとなり、大波乱のレースは幕を閉じた。

「この展開の中、2台が生き残って完走を果たし、入賞したことはよかったと思います。しかし、ストレートスピードが伸びず、苦戦した部分がありました。パワーで劣っていることは分かっていますが、加えてエネルギーマネジメントについて、セットアップ面とレース中のオペレーション面での差が大きく出たとも感じています。課題は多く、まだまだやることがたくさんあるという状況です」とレース後、田辺豊治は語った。マシンについても「週末を通して、期待したレベルにはなかった」とチーム代表のフランツ・トストが語るように、前戦からの問題解決には至らないパフォーマンスに終わった。

シーズン序盤の4戦が終わり、F1はホームグラウンドであるヨーロッパに戻る。次戦スペインGPは、例年シーズン第2幕の始まりとも、実質的な開幕戦とも言われる戦いとなる。それまでの2週間、トロロッソもホンダも、問題の解決とさらなるパフォーマンス向上へ、休む間も無く準備を進め、戦いに挑み続ける。

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カテゴリー: F1 / トロロッソ