SUPER GT 鈴鹿1000km ジェンソン・バトン
#16 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀英紀/中嶋大祐大祐/ジェンソン・バトン組)は8月26日~27日に鈴鹿サーキットで開催されたSUPERGTシリーズ第6戦GT500クラスに参加した。

走行距離が1000kmに及ぶ長いレースに備えて、チームは第3ドライバーとしてジェンソン・バトンを起用、戦闘態勢を整えた。

ジェンソン・バトンは、F1グランプリでHondaのドライバーとして戦い、09年にはF1ワールドチャンピオンになった経歴を持つ現役F1ドライバーである。チームは、高負荷の鈴鹿サーキットでの長距離レースに備え、ロール剛性を下げるなどタイヤに優しいサスペンションセッティングを施して持ち込んだ。

■公式練習:クラス5位・武藤英紀:1分49秒284 中嶋大祐:1分56秒951 ジェンソン・バトン:1分50秒097
26日の公式練習は、早朝に降った雨の影響が残り完全ウエットコンディションで午前9時20分に始まった。全車レインタイヤを装着し水しぶきを上げながら走行するが、走行が進むにつれ、陽が射しはじめて路面コンディションは徐々に良くなっていった。

#16MOTULMUGENNSX-GTは、まず中嶋大祐がステアリングを握って走り始めた。レインタイヤのまま10周を走り、タイムはコンディションが好転したところで記録した1分56秒951。中嶋大祐はピットに戻りジェンソン・バトンにマシンを受け継いだ。

まだコースの一部は濡れていたが走行ラインはほぼ乾いた状態となり、ジェンソン・バトンはドライタイヤを装着してコースイン、7周を走ってタイムを1分50秒097まで縮めた。途中、コース上の停止車両を回収するためセッションは赤旗中断されたが、それを挟んで武藤英紀は12周を走り、タイムを1分49秒284まで縮めた。最終的に#16MOTULMUGENNSX-GTの公式練習での順位は5番手となった。

■公式予選:GT500クラス13位(Q1:9位・1分48秒588、Q2:出走せず)
公式予選は参加15台全車が出走するQ1と、Q1のGT500クラス上位8台のみが出走できるQ2でスターティンググリッドを決定する2段階制ノックアウト方式で行われた。決勝のスターティンググリッドは、Q2に進出した上位8台についてはQ2のタイム順、それ以降はQ1のタイム順で決まる。Q1とQ2は別のドライバーが走行しなければならず、タイヤはQ1で1セット、Q2でさらに1セットが使用できる。

午後2時35分から15分間のQ1セッションが始まった。鈴鹿サーキット上空の天候は好転し、青空が広がって太陽が照りつけた。路面は完全なドライコンディション、気温はセッション開始時点で31℃まで上昇した。

チームはQ1にジェンソン・バトン、Q2に武藤英紀が走るという作戦で公式予選に取り組んだ。Q1を担当したジェンソン・バトンは、セッション終了8分前までピットで待機した後、タイムアタックを始めた。タイヤをウォームアップし、アタックに入ったジェンソン・バトンのペースは好調だったが、デグナーカーブでペースダウンしていたマシンを追い抜かねばならずわずかに失速、タイムは1分48秒683となった。

タイムを記録した時点で、ジェンソン・バトンのタイムはQ2に進出できる上位8台の中に食い込んでいた。しかしセッション終了間際、ジェンソン・バトンのタイムをわずか0.089秒差で上回る選手が現れ、#16MOTULMUGENNSX-GTの順位は9番手に落ち、Q2進出はならなかった。

■決勝: 12位(169周  2周遅れ ベストタイム:1分52秒532)
8月27日、決勝日は朝から快晴となり強い陽射しが鈴鹿サーキットに照りつけた。午後0時30分、パレードランが始まった時点で気温は30℃、路面温度は47℃と、真夏のコンディションである。決勝レースは173周の予定で始まった。スタートドライバーは中嶋大祐が務めた。

9番手からスタートした中嶋大祐は周囲と争いながら順位を8番手へ上げ、24周を走ってピットインしジェンソン・バトンに交代した。ピットクルーは素早くタイヤ交換と給油を行ってジェンソン・バトンをコースへ送り出した。ところが、ピットを離れる際に後方からピットへ進入してきたマシンと交錯したため危険なリリースを問われてジェンソン・バトンにはドライブスルーペナルティが科せられてしまった。

コースに戻った#16MOTULMUGENNSX-GTの見かけ上の順位は3番手にまで上がった。しかしペナルティの指示を受けたジェンソン・バトンはドライブスルーを行い、順位を大きく下げることになった。しかしその後、コース上に停止した車両を回収するためセーフティカーが入ったため、上位との間隔が縮まった状態で再スタートとなり、#16MOTULMUGENNSX-GTの反撃にとっては有利な展開となった。ジェンソン・バトンは再スタート後、51周目までを走って11番手でピットイン、武藤英紀にマシンを引き継いだ。

武藤英紀はハイペースで追い上げを開始した。しかし上位にはなかなか追いつかない。そして追い上げ中の83周目、第4スティントの中嶋大祐へドライバー交代を行おうとしていた矢先、#16MOTULMUGENNSX-GTの左リヤタイヤが突然バースト、武藤英紀はかろうじてクラッシュを避けてスローダウンながら走行を続行、ピットへ帰還した。

ここで中嶋大祐へ交代、タイヤ交換と給油を行いコースへ復帰したが順位は大きく下がってしまった。中嶋大祐はまた追い上げにかかり、115周目までを走ってピットイン、ジェンソン・バトンへマシンを引き継いだ。ところが決勝レース2回目のスティントを走り始めたジェンソン・バトンには、前回のスティントでセーフティカー中に追い越しをしたとして再びドライブスルーペナルティが科せられた。2回目のドライブスルーを行ったジェンソン・バトンに、今度は135周目、右フロントタイヤがバーストするというトラブルが襲った。

ジェンソン・バトンはそのままピットイン、最終走者である武藤英紀にマシンを引き継いだ。チームは2回のバーストを考慮してペースを抑制して完走を狙う作戦に切り替え、武藤英紀をコースへ送り出した。2回のセーフティカーランの影響で、レースは173周を消化することができないまま、規定終了時刻の午後6時28分で打ち切られそうな状況となってきた。

終了予定時刻の20分ほど前になって武藤英紀は車両にわずかな振動が出ていることを感じ取り、チームと相談の上、大事をとってピットインしタイヤを交換しレースに復帰した。結局#16MOTULMUGENNSX-GTは169周を走って12位のチェッカーフラッグを受けて長いレースを完走した。この結果、武藤英紀/中嶋大祐組は無得点でシリーズポイントランキングは18番手となり、TEAMMUGENは完走ポイントを1点加えたもののチームポイントランキングは15番手へ後退、第7戦タイラウンドを迎えることとなった。

手塚長孝 監督
タイヤに優しい決勝レース重視のセッティングを選択しました。中嶋選手がスタートして順調 に順位を上げ、バトン選手に交代したのですが、ピットアウトの際、ペナルティを受けてしまいました。責任は僕にあります。バトン選手にもチームにも申し訳なく思っております。SC中での追い越しによるペナルティには愕然とさせられましたが、それを払拭するバトン選手の速さには感銘を受けました。また、バトン選手の走りを見て、多くの新鮮な“気づき”を得ることが出来ました。武藤選手、バトン選手とタイヤバーストが続いてしまったことは、想定外だった上、非常に無念です。現在、原因の究明を急がせております。また、この事で、終盤は完走を目標に慎重策を取らざるを得ませんでした。中嶋選手、武藤選手とバトン選手のコミュニケーションは申し分なかったうえ、勝利のために(バトン選手には)チームに参加して頂いただけに、結果を出せず申し訳ない限りです。武藤選手、中嶋選手、そしてスタッフもよくやってくれていただけに辛いです。なんとか残り2戦で結果を出し、ファンのみなさんやスポンサーの皆さんに恩返しをしたいと思います。

武藤英紀
予選は、Q2に行ければもっと行けたとは思うのですが、1000kmレースですからチームの作戦として最初から予選をあまり重視はしていませんでした。その分、決勝レースではペース的には表彰台にからめる速さがあったと思うのですが、2回タイヤがバーストしてしまいました。1回は自分が乗っているときでした。スプーンの手前、6速だから230kmくらい出ている、やや危険な状況での出来事でしたので、結構しびれました。どこにも接触しなかったので、そのままピットまで帰られて良かったです。最後にJBさんが再度バーストして入ってきたので、それを見たらもう今日は慎重に行った方がいいな、ということになりました。クルマには表彰台に届くだけのポテンシャルがあったとは思うのですが、バーストで流れが変わってしまって、そこからはコンサバになって攻めの走りが出来ませんでした。ただJBさんから学べることも多いレースでした。タイムの上げ方など、勉強になりました。直接ワールドチャンピオンとロガーを見比べることなどなかなかできることではないのでいい経験になりました。

中嶋大祐
いろんなことがあった週末でした。予選は走りませんでしたが、決勝重視のタイヤ選択ではありましたが、想定以上の速さでした。ジェンソンがトラフィックにひっかかってしまったためQ2には行けなくて残念でしたが、クルマは決勝で十分戦えるレベルにあるなと思いました。決勝はスタートを担当しましたが順調にポジションを上げることができました。飛び抜けて感触がいいというわけではありませんでしたが、前とのギャップも徐々に縮めていける感触がありました。実際、第2スティント、ジェンソンに替わって12号車の前へ出て、実質4位から3位まで上がる事が出来ました。そこまでは順調、計画通りでした。しかしながら、ピットから出て行く際ペナルティがあり、やや足を引っ張られましたが、セーフティカーも出て前とのギャップが縮まったので、これはまだ戦えるぞ、と思いました。しかしながら上位も速く、なかなか思い通りにはならなかったですね。ただ、自分としてはいい戦いができたと思っています。今度こそ結果をきちんと出せるようにチームの皆と協力して頑張りたいと思います。悔しいレースでしたが、今回64号車が優勝したことにはおめでとうと言いたいです。去年まで一緒に戦っていた関係ですから。

関連:【動画】 SUPER GT 第6戦 鈴鹿1000km 決勝ダイジェスト

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / SUPER GT