SUPER GT 第6戦 結果
2019年のSUPER GT第6戦『AUTOPOLIS GT 300km RACE』の決勝レースが9月8日(日)にオートポリスで行われ。途中雨が降って何度もトップが入れ替わるレースの中、GT500クラスはNo.39 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)が、GT300クラスは終盤の逆転劇でNo.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3(吉本大樹/宮田莉朋)がそれぞれ優勝を飾った。

第6戦の決勝日を迎えたオートポリスは、お昼までは雲が多いものの雨は降らず。サポートレースやピットウォーク、トークショーで賑わっていた。この中、いくつかのアクシデントがあった。

まずNo.12 カルソニック IMPUL GT-Rのジェームス・ロシターが予選終了後に急病となり、ドクターストップとなる。チームは代役として昨年までGT500クラスに参戦していた千代勝正の出場を願い出る。審査委員会は、レース前のウォームアップ走行で千代の走行を最終確認し、出走が許されることとなった。なお12号車はこのドライバー変更により決勝レース中にピットストップ10秒のペナルティを受けることになった。さらにこのウォームアップでもトップタイムを出したNo.17 KEIHIN NSX-GTが、走行終盤に突如ストップ。スロットル系の電気トラブルで部品を交換してのレース出場となった。

スタート時の午後2時30分、この時点でも雨はない。ポールポジションのNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大)はオープニングラップで、No.8 ARTA NSX-GT(伊沢拓也)に一度はトップを譲るものの、すぐに抜き返し、その後は8号車との差を徐々に開いていく。一方、12番手スタートのNo.1 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴)は、No.16 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀)と競り合っている中でコースアウト。タイヤバリアにクラッシュし、1周もしないままレースを終えてしまう。そして早くもセーフティカー(SC)が導入されることとなった。

SCランで後続との間隔が詰まってしまった17号車だが、リスタート後は再び後続を引き離す。引き離された8号車はペースが上がらずに順位を落とし、代わってNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(ヤン・マーデンボロー)が2番手に浮上し、序盤はこの2台がレースを引っ張る展開となった。

レースも1/3を過ぎると、1コーナー付近で雨が落ち始める。降り続くのか、通り雨か、レインタイヤを入れるのか、そしてどのタイミングでピットか、と各チームが悩む。33周を終えたところで、29周目に5番手を走行していたNo.37 KeePer TOM'S LC500(ニック・キャシディ)、3番手を走行していたNo.36 au TOM'S LC500(中嶋一貴)が上位勢では真っ先にルーティンのピットワークを行う。ここではスリック(ドライ用)タイヤに交換した。

そして雨が強くなり、この日2度目のSCが導入される直前の34周終わりで、トップを走行していた17号車、No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン)、No.38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路)、No.19 WedsSport ADVAN LC500(国本雄資)、さらには、8号車、No.12 カルソニック IMPUL GT-R(佐々木大樹)、No.6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也)らが同時にピットへ戻ってくる。ピットロードは大混雑となり、中にはマシンを切り替えして出し入れしたり、メカニックがマシンを避けたりと慌ただしくなった。19号車はピットを出てきたGT300車両と接触もしてしまう。

2度目のSCが導入されて、ピットレーンはクローズ。トップの24号車、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平)、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(ロニー・クインタレッリ)はピットに入らずに走行を重ねる。41周目、SCが離れてリスタートとなるとこの上位3台がピットイン。代わってNo.17 KEIHIN NSX-GT(ベルトラン・バゲット)がトップに立ったがスリックタイヤではペースが上がらず。代わってトップに立ったのが、ウエットタイヤに履き替えていたNo.39 DENSO KOBELCO SARD LC500(中山雄一)であった。その後ろにはNo.38 ZENT CERUMO LC500(石浦宏明)、No.19 WedsSport ADVAN LC500(坪井翔)が続き、LC500勢がトップ3を形成した。

その後、GT300車両のコースアウトがあって43周目にこの日3度目のSCに。残り15周でリスタートすると、トップの39号車はスパート。その直後にいたNo.16 MOTUL MUGEN NSX-GT(中嶋大祐)はスリックタイヤのためペースが悪く、これに引っかかった2番手の38号車は一気に39号車に11秒もの差をつけられた。

そして42周目に2度目のピットインを行い、レインタイヤに交換した17号車が後方から追い上げ、53周目にはその38号車をパスして2番手に浮上。トップの39号車と2番手の17号車との差は徐々にだが詰まっていき、3秒ほどにまで追い詰められる。39号車の中山はGT500ルーキーだが、GT300では7勝している実力者。後方とのマージン、マシンや路面の状況を読み切って慌てることなく逃げ切り。No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)は、2018年第4戦タイ以来の優勝。ヘイキ・コバライネンは4勝目、そして中山雄一はGT500初優勝となった。LC500は、今季第2戦からの5連勝となった。2位にはNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)となった。

3位争いは雨が止んだレース終盤に波乱が。コースが乾いてくると、ここまでスリックタイヤで耐えていたNo.37 KeePer TOM'S LC500(平川亮)がペースアップ。最終ラップで6番手からNo.6 WAKO'S 4CR LC500(山下健太)、No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀)、そして38号車までを抜き、3位表彰台に上がった。

GT500 Class
No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500
ヘイキ・コバライネン
「1年ぶりの優勝なので、とても嬉しく思っています。今シーズンを振り返っても、なかなかタフなシーズンですね。なかなか表彰台に上がることができず、前回の富士ではチャンスがあったのに僕がミスをして悔しい思いをしました。ハードなシーズンですが、今週末はクルマが走り出しから調子が良くて、予選でもいいフィーリングでしたので、いい結果が出せそうだと思っていました。今日の決勝はクレイジーな天気で、2016年にSUGOで(平手)晃平選手と組んで勝ったレースを思い出しましたね。今回のスタートはすごく良かった。ただ雨が降ってきたときにはミスをしちゃいけないと思って慎重に走りました。慎重すぎたかもしれません。でもクルマのパフォーマンスがすごく良かったので、自分のスティントはエンジョイできました。(後半担当の)中山(雄一)選手は本当に素晴らしい走りを見せてくれました。途中17号車が追い上げてきていたので、無線で「気をつけて」と言っていたんですが「問題ありません。大丈夫」と返事してきました。彼は本当にプロフェッショナルで、すごくがんばっています。GT500で最初のシーズンですが、彼のスティントはいつも素晴らしい。もっと彼のことを認めてあげてほしいと思います。次戦も期待できると思います。まだまだインプルーブする余地はありますが、今回の勝利でいいステップを踏めたと思います。シーズン前半は苦戦しましたが、今回の勝利でチャンピオンシップのトップ3に入ることができたので、最後まで諦めずにがんばっていきたいです」

中山 雄一
「今シーズンはLC500勢がすごく調子いい中で、僕たちのチームも悪くはないけど思うような結果が得られなくて、何が足りないんだろうと考えながらシーズンを送っていました。ヘイキ(コバライネン)選手とコミュニケーションを取り、チームともクルマの方向性をしっかり話し合いました。今回は普通GT500ではしないような数値のセット変更をしたらそれがバッチリオートポリスに合いました。昨日の予選はやってきたことがすべてうまくいったなと感じました。今日は雨の中をスリックで走らなければいけない難しいスティントをヘイキ選手が担当しました。そういう場面でもすごく力を発揮してくれる選手だし、コールドタイヤでの走行もすごく速いので、ヘイキ選手の力でどんどん順位を上げていってくれました。田中耕太郎エンジニアもこれ以上ないタイミングでピットインの判断をしてくれたので、作戦も素晴らしかったと思います。ピットにはすごく多くのクルマがいっぺんに入ってきて、何年か前のSUGOみたいな状況で、38号車が僕に迫ってきて結構危なかったんですが、メカニックさんたちがしっかりコースに送り届けてくれたので本当に良かったです。最後はダンプ(濡れた部分と乾いた部分が混じる)コンディションでのレインタイヤ走行で、結構難しかったんですが、GT300をブリヂストンタイヤで戦ってきた経験をうまく生かすことができました。(GT300での)下積みがすごく長かったですけど、それがすごく活きたな、と感じたレースでした。今回の優勝でチャンピオンも手の届く位置に来ましたし、2016年にこのチームがチャンピオンをとったときも最後の2戦で逆転したと思うので、難しいコンディションであるほど力を発揮できるチームだと思っています。今回のセットを進めていけば、SUGOやもてぎでも戦っていけると思います。すごくポジティブにこの1週間を過ごしました。GT500デビューイヤーで優勝できて本当に嬉しいですし、このままチャンピオンに向けて強気で頑張っていきたいと思います」

GT300 Class
No.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3
吉本 大樹
「この展開は想像できていなかったんですが、昨日の走り始めにコースがダスティなこともあって、持ち込んだタイヤの選択が非常に難しく、柔らかめのタイヤでロングランをやろうと走っていたらデブリ(クラッシュ等の破片)を踏んでしまい、タイヤバーストをさせてしまって結局十分な距離を走れませんでした。そのためレースがドライのまま進んだらどうなるか未知数な状態でした。予選は(宮田)莉朋がQ1で良いタイムを出してくれたのに、Q2で自分がミスってしまって12番手からのスタートになりましたが、レースの途中から雨が降るという予報もあったので、それをチャンスに変えようと思っていました。莉朋はスタートからすごく順調に走ってくれましたが、我々のクルマはあまり直線が速くないので、前のGT-Rを抜けませんでした。そのうち雨が降り、スリックで走っている中では、莉朋が多分一番速かったと思います。「(ピットインで)レインで行くのか?」というやり取りを長くしていたので、その間は莉朋に引っ張ってもらいました。結局、飯田章監督もここはスリックだと。僕としては最初少し疑問でしたが、コースから湯気が出ているのを確認したので、最初はしんどいけど乾いてくると思ってスリックをチョイスしました。セーフティカー中に雨が降ってきたときは「これは終わったな」と思いましたが、路面温度が高くてすぐに乾いてくれました。本当に全てが噛み合いました。2014年にLM corsaの立ち上げから本当に苦しい思いをして、満を持して(母体のディーラーが待ち望んだ)RC F GT3になっても、もう1台(当時ジョイントしていたK-tunes)が勝ってBoP(性能調整)も厳しくなり、僕らはなかなか勝つことができませんでした。それでもこうやってすべてが噛み合えば勝つことができるとわかりました。ダンロップさんやチームのみんなに「ありがとう」じゃなくて「おめでとう」と言いたいです。元々RC F GT3が得意とするコースは鈴鹿、SUGO、タイですが、今回得意ではないコースでも優勝できることが証明できたので、得意なSUGOは優勝したいですし、苦手なもてぎも雨が降ってくれればと思っています。運も味方につけて悔いなく戦っていきたいです」

宮田 莉朋
「今回は僕がスタートドライバーを担当して、引っ張る作戦でした。12番手からですから、どうやって追い上げるか、どんなペースで走ったらいいのかを考えて走りました。周りはコースアウトしたり、早めにピットに入ったりしましたが、チームと無線のやり取りをして、ステイ(まだ入らないこと)を選びました。結構“賭け”でしたが、今回はクルマもタイヤも自信があったので、クルマを信頼して走りました。後半スティントの吉本(大樹)選手は辛い思いをしたと思いますが、最終的にこうやって勝てて良かったです。FIA-F4で2年連続チャンピオンをとって周囲に期待されていたと思いますが、勝つまでにちょっと時間がかかってしまいました。僕のことよりも、LEXUS RC F GT3の開発からがんばってきたチームの皆さん、TRDの皆さん、吉本選手、飯田章監督におめでとうと言いたいですし、感謝しています。次戦のSUGOに関してはRC F GT3が苦手ではありませんし、先日のSUGOの公式テストでもいいセットが見つかっています。今回勝てるとは予想していませんでしたので、SUPER GTのおもしろさを体感できましたし、次のSUGOでも優勝を目指して、吉本選手やチームの皆さんとともにがんばっていきたいです」

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カテゴリー: F1 / SUPER GT