SUPER GT ツインリンクもてぎ 初音ミク
2017 SUPER GT 第8戦(最終戦)「MOTEGI GT GRAND FINAL」の決勝レースが12日(日)ツインリンクもてぎ(栃木県)で行なわれた。GT300クラスはNo.65 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹/蒲生尚弥)が今季2勝目。クラスチャンピオンはNo.4 グッドスマイル初音ミクAMG(谷口信輝/片岡龍也)が獲得した。

予選日と同様、決勝日も朝から好天となったツインリンクもてぎ。

決勝直前のウォームアップ走行ではトップのNo.18 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴/川端伸太朗)から11台がコンマ5秒の僅差の中にひしめき合う状況で、決勝での熱戦に期待が高まっていった。

完全なドライコンディションで、スタート直前の気温と路面温度はそれぞれ16℃/23℃。レース中盤まではほぼ一定で推移したが、レースの終盤には急激に寒くなり、チェッカー時点では14℃/18℃まで低下していた。

レース序盤は、ポールポジションのNo.4 グッドスマイル 初音ミク AMG(片岡龍也)が逃げ、No.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一)、No.25 VivaC 86 MC(山下健太)、No.11 GAINER TANAX AMG GT3(ビヨン・ビルドハイム)、No.33 D'station Porsche(スヴェン・ミューラー)が追う展開。ランキング3位でタイトルの可能性を残すNo.65 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹)は6番手、同2位のNo.51 JMS P.MU LMcorsa RC F GT3(中山雄一)は8番手の厳しい位置だ。

トップ4号車は2位以下との差を拡げ、追う55号車と25号車の2位争いと、11号車、33号車、65号車の3台による4位争いが接近戦となり、タイトルを争う4号車には有利な展開だ。5周目にはNo.30 TOYOTA PRIUS apr GT(佐々木孝太)がGT500車両と接触し、S字コーナーのコース脇にストップするも、何とか再スタート。また、9周目に、No.88 マネパ ランボルギーニ GT3(織戸学)もGT500車両と接触。このようなアクシデントもあったが、セーフティカーが導入には至らなかった。

そんな状況の中、16周を終えたところでトップを快走していた4号車の片岡が、最小限の周回数でルーティンのピットイン。タイヤ4本を替えて41秒4と少し長めのピットストップとなった4号車は、同時に入ったNo.33 D'station Porsche(スヴェン・ミューラーから藤井誠暢)にアウトラップで抜かれ、にわかにレースが動き出した。33号車はタイヤ無交換でピットストップを短くする作戦で、タイヤ交換をしない分、ピットアウト直後から温まったタイヤで猛プッシュできるアドバンテージもあったようだ。さらに次の周にルーティンのピットインを行った25号車(山下から松井孝允)もリアの2本のみを交換、65号車(黒澤から蒲生尚弥)もフロント2本のみ交換、とピットストップを短くし、33号車の前でピットアウト。ピットインを引っ張るトップ集団に対し、この4台が先行してトップ争いを行う形となる。この中では33号車のペースが速く、相次いで25号車、65号車をパス。これで優勝をたぐり寄せたかに見えたが、この直後にペースダウン。フロントタイヤのパンクで緊急ピットインとなり、トップ争いから脱落した。

早めのピットインを選んだライバルに対し、55号車はまだトップでレースを引っ張る。半分を過ぎ、上位では2番目に遅い31周を終えたところでピットに。タイトル獲得には優勝しかない彼らも、タイヤ無交換で勝負に出る。55号車のピットストップは僅か20秒余りで、ショーン・ウォーキンショーをトップのままコースに復帰することに成功した。

2番手集団は25号車、65号車、4号車の競り合いに。このポジションでも現状はタイトルを獲れる4号車は無理をしていないように見えた。ここで25号車のペースが落ち、65号車がペースアップ。これで55号車追撃は65号に託された。

25号車をパスして視界が開けた65号車の蒲生は、10秒ほど先を行く55号車のウォーキンショーを猛追。タイヤ無交換はやはり厳しかったか、35周目に10秒あったギャップは40周目には7秒、45周目にはテール・ツー・ノーズ状態まで接近。そして46周目の最終コーナーで僅かにアウトに膨らんだ55号車を見逃さなかった65号車の蒲生は、一気にインを差して2台はストレートを並走。1コーナーへのアプローチ手前で抜ききった。

この後もペース良く逃げ切ったNo.65 LEON CVSTOS AMGが、第6戦鈴鹿に続く今季2勝目を最終戦で挙げた。2位にはNo.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー)が入った。

No.4 グッドスマイル 初音ミク AMGは、確実に走りきって3位でゴール。これで谷口/片岡組は2014年以来、共に3回目のドライバーズチャンピオン(このコンビでは2回目)を獲得。GOODSMILE RACING & TeamUKYOも2回目のチームタイトルを手にした。

No.4 GOODSMILE RACING & TeamUKYO
谷口 信輝 (No.4 GOODSMILE RACING & TeamUKYO)
「嬉しいというよりもホッとしたというのが正直なところ。ポイントリーダーでもてぎにやって来ましたが、実はまったく余裕などなかった。今シーズンはメルセデスAMGが速かったのですが、LEON(No.65 LEON CVSTOS AMG)もGAINER(No.11 GAINER TANAX AMG GT3)もいて厳しい戦いになった気がします。僕たちのチームは最善のケースを望む一方で、最悪な状況だけは避けるように戦ってきました。今日も厳しい方向になって、14年にチャンピオン獲った時と同様に、苦労して3位を獲る作戦で、結果的にチャンピオンを獲ることができました。振り返ってみるとタイでは25号車が取りこぼしたので、最大のライバルはLEONと思っていました。実際にその通りになりましたが、何とか3位に入ってチャンピオンを獲ることはできました。最終戦には勝てなかったけど、シリーズチャンピオンを獲って肩の荷を下ろしましたが、まだ(チャンピオンを獲った)実感はないですね。というかじわじわと出てきましたが、これから家に帰るまで、そして明日の朝目が覚めてから、そして大晦日に新年を迎える瞬間。これから少しずつ(チャンピオンになった)実感が湧いてくるのだと思います。

片岡 龍也 (No.4 GOODSMILE RACING & TeamUKYO)
「嬉しいです。今日はポールから逃げる展開でしたが、GT500クラスのドライバーたちとちゃんとコミュニケーションができていて、とても走りやすい環境で上手く逃げることができました。開幕戦で勝って、さらに開発で苦労した結果がチャンピオンに繋がりました。結果的には僕たちにバッドラックがあった時にライバルも上手くいかないことが多かったような気がします。9ポイント差でもてぎに来て、周りからは『9ポイント差もあるから(チャンピオンは)当然取れるでしょ』と言われ、正直言ってレースウィークには緊張感の塊になっていました。でも僕はFIA-F4の若手を(アドバイザーとして)見ていますが、自分で走るだけでなくFIA-F4の走りも見ながらドライバーにアドバイスして、とドタバタの繰り返しでしたが、結果的にそのドタバタで緊張感を感じすぎることがなくなったのは大きかった。それにその若い子(FTRSスカラシップF4の宮田莉朋)がチャンピオンを獲ってくれて、彼からパワーをもらったところもありましたね。

片山右京 (No.4 GOODSMILE RACING & TeamUKYO 監督)
今日は本当にありがとうございました。おかげさまで久々にタイトルを獲ることができました。以前と違って、今のGT300クラスは大変な激戦区になっていて、誤解を恐れずに言うなら以前の“ジェントルマンレース”とは違ってきています。FIA GT3車両でも自動車メーカーやタイヤメーカーの戦いになっていますが、我々が(タイヤを)供給してもらっているヨコハマタイヤも今年は100周年記念で節目の年になっていますが、そんなタイミングでタイトルを獲ることができ、少し恩返しができたのかな、と。もちろん、ドライバーだけでなくチームの現場も頑張ってくれています。レースは良い時ばかりでなく厳しい時もありますが、その厳しい時にもチームがんばって耐えてくれた。その結果としてのシリーズチャンピオンだと思うし、その意味ではチーム全員に『本当にありがとうございました』と言いたいですね。

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カテゴリー: F1 / SUPER GT