SUPER GT 第2戦 富士:決勝レポート&上位ドライバーコメント
2021年 SUPER GT 第2戦の決勝レースが5月4日(火・祝)午後、静岡県の富士スピードウェイで行われた。GT500クラスはNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)が、好タイミングのピットインからトップに立ち、後半の追撃を凌いで優勝した。GT300クラスはNo.60 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)が優勝を果たした。

昨日の予選日に続き、好天に恵まれた富士スピードウェイ。午後2時30分のスタートを前に気温は21度まで上昇する。その中、500km先のゴールを目指してレースがスタート。

ポールポジションのNo.19 WedsSport ADVAN GR Supra(宮田莉朋)はスタートダッシュに失敗。その脇をNo.8 ARTA NSX-GT(福住仁嶺)とNo.38 ZENT CERUMO GR Supra(石浦宏明)が駆け抜ける。それ以上の好スタートを見せたのがNo.36 au TOM'S GR Supra(坪井翔)で38号車も抜き、2番手で1周目を終えた。トップは8号車で、19号車は6番手まで後退して、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(ロニー・クインタレッリ)に迫られた。

そして2周目を終えたストレートエンドで23号車が突如白煙を上げて、そのままTGR(第1)コーナー先でマシンを止め、エンジントラブルでリタイアした。この回収作業でセーフティカーが導入される。7周目のリスタートでは、36号車が8号車をTGRコーナー出口で抜いてトップに。しかし、8号車も大きく遅れることなく食い下がる。後方では38号車をかわしたNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(山下健太)が3番手に浮上。

ペースの上がらない38号車だったが32周目のパナソニック(最終)コーナーで左リアタイヤが外れるアクシデントが発生。このままピットインするもタイヤを取り付けられずリタイア。またコース上に転がったタイヤの回収のため、初のFCY(フルコースイエロー)となった。このタイミングの直前に最初のピットインを行ったのは、No.17 Astemo NSX-GTで、速やかに塚越広大からベルトラン・バゲットに交代、またクラス最後尾スタートから山本尚貴が追い上げていたNo.1 STANLEY NSX-GTも、昨年最終戦以来のレースとなる牧野任祐にステアリングを託した。

この好判断でFCYと各車の1回目のピットインが終わると、トップを行くのは17号車だった。5秒ほど後方に36号車(関口雄飛)、14号車(大嶋和也)、8号車(野尻智紀)、そして1号車となった。すると、47周目にコース脇で止まったGT300車両とコース上の破片回収で再度のFCYとなる。しかし、セーフティカーと違い大きく差が詰まらないFCYなので17号車のリードは10秒ほどと変わらない。

しかし68周目、17号車は2度目のピットインでタイムロスをしてしまう。各車のピットインが終わると、17号車(塚越)と8号車(福住)がサイド・バイ・サイドのトップ争いを演じて、8号車が先行。さらにペースの上がらない17号車は36号車(坪井)にも抜かれる。さらに14号車(山下)、1号車(山本)、No.37 KeePer TOM'S GR Supra(平川亮/阪口晴南)の平川も猛然と追い上げをかける。

トップ8号車、そして36号車、17号車が1秒ほどの間隔で続き、さらに14号車、1号車も迫って来た96周目。またもGT300車両がTGRコーナー先でストップ。3度目のFCYとなる。そして解除の98周目、トップ8号車に襲いかかると思われた36号車がスローダウンし、TGRコーナー先でストップ。さらに8号車の福住がFCY直前に追い越しをしたため、ドライバースルーペナルティでトップ争いから脱落。
これでトップに返り咲いた17号車だったが、背後にはハイペースで14号車が迫る。開幕戦岡山はトップを守った14号車の山下だったが、今度はブロックする17号車のサイドにノーズをねじ込もうと奮戦。しかし、17号車の塚越もギリギリの粘りで守る。この2台に1秒差で、37号車と1号車も接戦。昨年の最終戦でも最後まで競って勝った山本だが、今回は平川に攻略されて4番手に下がるが、今回もワンチャンスに賭けてトップ3から離されない。トップ争いは約1秒に4台がつらなる接戦で残り4周に入った。

そして、この猛攻を何とかしのぎきったNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)が、昨年の第4戦もてぎ以来の優勝を挙げた。2位にはNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)で、2戦連続の表彰台でドライバーランキングの首位を堅持。3位はNo.37 KeePer TOM'S GR Supra(平川亮/阪口晴南)が最後の表彰台を確保。昨年チャンピオンのNo.1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐。武藤英紀はドライブせず)は、牧野の復帰戦で表彰台を逃してしまった。その後ろ5位には、NISSAN GT-R NISMO GT500勢の最上位であるNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)が入った。

GT500 Class
優勝/No.17 Astemo NSX-GT
塚越広大
ゴールデンウィーク中の500kmレース(昨年優勝の第2戦富士は300km)で僕はこれまで良い結果を出せていなくて。今回の予選もあまりうまく行かず速さを出すことができなかったので、すごく悩みの多い状態でした。レースでは僕が最初と最後のスティントを担当しましたが、スタートしてからもポジションをあまり上げられず、前の集団についていくのがやっとでした。そういう状態の中で最初のピットストップを迎えたわけですが、そのときちょうどFCYが出て……。あのタイミングでのピットストップは狙ったものではなかったです。ただ、あそこで流れを変えるという勝智さん(金石勝智監督)の判断があって、それが僕らのレースに味方してくれたというところが大きかったと思います。レース中も速さは足りなくて、最後のスティントでも8号車や36号車に前に行かれてしまったりしましたが、ちょっと離されながらも何とか粘ってレースをすることができました。最後、自分がトップに立ってからも、後ろに抜かれてもおかしくないペースだったんですが、僕自身はもちろん抜かれたくはないので、こちらの持てるすべてを出して、やれるだけのことをやらなきゃいけない、という気持ちでがんばりぬきました。それも、チームのみんなの後押しがあって粘れたように思いますし、それにクルマも応えてくれたように思います。自分の経験の中でもかなり難しかったレースのひとつになりました。

ベルトラン・バゲット
まず、富士の500kmレースがシリーズに戻ってきたことをうれしく思っています。また、依然として(新型コロナウイルス感染防止の)制限がある中とは言え、サーキットに観戦に来られたファンのみなさんの前で走ることができるのは本当にうれしいです。僕のスティントは何ともしようのない感じのもので、かなり苦戦しました。もちろんプッシュはしていたけれど、タイヤのグリップ的にこれ以上は行けないというところでした。それで金石監督から「状態はどうだ?」と無線で聞かれたので、タイヤの種類を変えた方がいいのでないかと提案したんです。それを受けて(塚越)広大が走った最後のスティントではそれまでとは違う種類のタイヤを使ったのだけど、彼はすごいプレッシャーを受けながらも後ろを抑えて走ってくれました。ひとつのミスもせず、素晴らしいスティントになったと思います。僕らのクルマはどちらかと言うとレースでの方が速くて、予選では苦戦するケースが多いのです。また、僕らのクルマは高速コーナーではとても強いのだけど、低速コーナー、たとえばこの富士スピードウェイであれば最後のセクターではアンダーステアが出て苦労しています。このあたりを直していかなければいけないと考えています。ただ、次のレースが行われる鈴鹿はコーナリングスピードが高いところが多いから、次に向けては良いクルマに仕上がると思っています。

2位/No.14 ENEOS X PRIME GR Supra
大嶋和也
僕のスティントはタイヤが全然グリップしなくてめげそうになりながら走っていたんですけど、同じタイヤを選んでいるトヨタ勢はみんな同じ状況だと聞いて、必死に頑張りました。3スティント目は違うタイヤを選んだんですけど、それがコンディションに合っていたのかタイムも戻ってきたし、いいペースで追い上げていたので、結果だけ見れば、予想よりもいいというか……当然、勝ちにはきていたんですけど、スタートしてみたら思いのほか(サクセス)ウェイトも効いているし、NSXも速かったので、ウェイトのことを考えれば最高のレースだったのかなと。とはいえ、目の前に優勝があったので、本当は2連勝したかったですけどね。次の鈴鹿はウェイトとか(燃料)リストリクターが厳しいと思うので優勝争いに絡むのは難しいと思いますけど、クルマが決まれば、どちらも補えると思うのでミスなく仕事をしていきたい。(優勝→2位と大量ポイントを獲れているので)この先もうまく戦っていければチャンピオンも見えてくると思うので、ここから先はノーミスで、ノーポイントということがないように戦っていきたいと思います。

山下健太
前半スティントは選んでいたタイヤもコンディションに合ってて良かったので、追い上げのレースができました。3位まで上がって、その後のスティントにも期待が持てるなって思ってました。ところが路気温が下がっていく中、第2スティントの大嶋(和也)先輩が違うタイヤで行ったんですが、それが今イチ良くなかったようで……。なので、自分が担当した第3スティントでまた違うタイヤを選びました。結果まぁまぁだったし、前の3台が争っていたこともあって、追いつくことができました。そのときは『前の3台全部抜いて勝ったらカッコいいなぁ』って思いましたけどね(笑)。ただ思ったよりも(タイヤが)ズルズルになってしまい、抜くまでの力はなかった。ストレートでは(サクセスウェイトの)40kgが効いてるのかもしれないですけど、ちょっと抜き切れなくて……。チャンスが来るのを待ってはいましたが、まぁでも自力で抜くには厳しかったですね。だからFCY後にいろいろあった(他車のトラブルやペナルティ等)のは、ある意味ラッキーだったかなと思います。

3位/No.37 KeePer TOM’S GR Supra
平川 亮
第1スティントはかなり厳しかったですね。タイヤが合っていなかったのか、クルマのセッティングをミスったのか、全然前のクルマのペースについていけない状態で耐えるしかないっていう感じでした。第2スティントも同じタイヤだったんですが、やっぱりペースが悪くて……。最後(第3スティント)の僕のスティントでタイヤを変えていったら、なんかすごくフィーリングが良くなって。『これは全然追い上げられるぞ!』っていう雰囲気でした。結果的に最後は惜しかった(もう少しで優勝も狙えた)ですが、あそこまで行けたのは良かったです。結果としてタイヤの選択が大事だと思いました。タイヤを変えようって僕が言ったんです。第1スティントで走っていてフィーリングだとかタイヤの内圧とか温度とかを見てたら(装着していた)ハードだと微妙かな、っていう感じだったので。だから(第3スティントは)間違いなく『ソフトで勝負しよう』って思いました。今回、ほんと情けない第1スティントだったんです。で、第3スティントでタイヤが合って、前には(昨年の最終戦でバトルをした)1号車がいて、結果的には抜けたので……。最初に10秒以上差があったのを追い詰めた分、タイヤを使ってしまったんです。なので最後はちょっと余力が残ってなかったのは事実です。まぁでもレースで1号車を抜けたのは良かったと思います。チームには結構無理言ってセッティングも変えてもらったんです。文句ばっかり言って。でもそうやってうまく結果を出せたので、チームも喜んでいると思います。

阪口晴南
自分のスティントはタイヤ選択含めてちょっと厳しいスティントになってしまって、ほかのスープラ勢も苦戦していると聞いたんですけど、そこの合わせ込みが足りなかったことと、自分もドライビングで改善できた部分もあるんじゃないかと思うので反省点も多く、自分的には悔しいスティントになってしまいました。ただ、ピットに入る前の10周くらいはペースを取り戻せたので、そこは良かったかなと思います。レース全体を見ると、平川選手が第1スティントの苦しいなかでも踏ん張ってくれて、第3スティントはタイヤを変えてガンガン追い上げるという素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれたので非常に感謝しています。次の鈴鹿ももし(37号車に)乗れるのであれば、3位→3位で表彰台は獲得できているけど、勝てそうで勝てないレースが続いているので『次こそは勝つぞ!』という気持ちではいるんですが、いかんせん鈴鹿は他メーカーさんが速そうなので、ここから(ウェイトが)重たくなりますし、しっかりポイントを重ねて、チャンピオンに貢献できるようなレース運びができるように頑張っていきたいと思います。

GT300 Class
優勝/No.60 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT
吉本大樹
正直、自信はない状態でサーキット入りしたのですが、走り出しからクルマのベースが良かったです。実はサーキットに入る前に河野(駿佑)選手が「今回は僕がQ1を行きます」「僕がスタートをやります」と言ってきて、そこで僕は「じゃあお願いします(笑)」と(笑)。実際、Q1で駿佑が僕らの予想をはるかに超えたタイムを出してトップでQ2進出を決めて、それでチームの志気も上がりましたし、レースを前方からスタートすることができました。僕らはダンロップさんとやるようになって今回がまだ2戦目で、タイヤに関する知識などが浅い中でしたけど、ダンロップタイヤは各スティントで素晴らしく機能してくれました。駿佑は「ヘアピンで必ず55号車を抜いてきます」と言ってスタートしたんです。すると本当にスタート直後のヘアピンで抜いてきてくれて、そこからはトップを走る61号車にぴったりくっついてレースができました。あの最初のスティントが非常に重要なところだったなと思います。そこから、ピットクルーの作業、ストラテジー、すべてが完璧だったと思います。ただ、まともにレースをしていたならば(トラブルでトップから脱落した)52号車にはかなわなかったと思います。なので、クルマもタイヤもさらに開発していって、52号車をはじめとする強豪チームをガチンコでやっつけられるように、ますます強くなっていきたいと思います。

河野駿佑
吉本(大樹)さんの言葉にはちょっと語弊がありまして(苦笑)、この富士に入る前に「(Q1とスタートを)行くんでしょ?」と聞かれたので、「はい」とひと言だけお答えしただけです(笑)。でも、Q1やスタートという責任が重大なパートを僕に任せてくださって、そのぶんプレッシャーもありましたけど、その仕事をしっかりできたのはまず良かったなと思います。レースに関しては、(ひとつ前からスタートする)55号車は直線が速く、一方の僕らはダンロップタイヤさんのウォームアップが良いので、一番狙っていけるのはスタート直後のヘアピンだろうと言っていたんです。それが本当にそのとおりにできて、その後は61号車とのレースになりました。そして良い位置で吉本さんにつなげることができたのは良かったです。吉本さんもしっかりポジションを上げてきてくださって、その後のピットストップでもすごく早くて、61号車とは同時ピットでしたが、それでも前に出られたことが大きかったと思います。最後のスティントで55号車とまたバトルすることになり、セクター3でうまく詰めてそこで抜けたのが本当に良かったです。その後のペースも我ながら良かったと思うんですけど(笑)、52号車に詰め寄ることができました。最後は52号車のトラブルで勝てたというところです。でも僕らのチームの実力もすごく上がってきていますので、今後もっともっとレベルアップして、チャンピオンを目指したいと思います。

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カテゴリー: F1 / SUPER GT