福住仁嶺が今季2勝目!チームタイトルはcarenex TEAM IMPULが獲得!
2021年 スーパーフォーミュラの最終戦が10月31日(日)には鈴鹿サーキットで行われ、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が今季2勝目を挙げ、4月に富士スピードウェイで開幕した今シーズンは幕を閉じた。
ウェットコンディションとなった朝のフリー走行から一転、昼前になると鈴鹿には青空が広がった。午後1時15分からスタート進行が開始し、朝、ドライコンディションでのマシンの状態を確認できていないドライバーたちが8分間のウォームアップ走行を行った。
気温が21℃、路面温度が25℃まで上昇する中、午後2時にフォーメーションラップがスタート。この直前から、鈴鹿には路面を濡らすほどではないもののパラパラと雨が降り始め、レースの波乱を予感させた。そんな中、各ドライバーは1周の隊列走行を終えると正規グリッドにロックオン。最後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウト。30周先のゴールに向けて、一斉にスタートが切られた。
ここで動き出しこそ余り良くなかったものの、トップのポジションを守ったのはPPスタートの松下。予選2番手の大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)もポジションをキープする。その後方では、5番グリッドの野尻がスーパースタートを決め、最もアウト側から3番手まで浮上。1〜2コーナーでは大湯に並びかけるほどの勢いを見せる。スタートをミスしたという福住は一つポジションを落として4番手。7番グリッドからスタートした大津と9番グリッドからスタートした平川はアウト側のラインを取って1コーナーにアプーチすると、それぞれ5番手、6番手にポジションアップを果たした。これに対して、スタート直後の1コーナーでポジションを落としてしまったのは、4番グリッドからスタートした牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。牧野は最もイン側からのアプローチとなったが、1コーナーに入るとラインが厳しくなり、大津、平川の先行を許す形となってしまった。
その後、オープニングラップから、コース上では各所でバトルが勃発。スプーンコーナーではアレジと坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)の争いが見られただけでなく、130Rでは大津がオーバーテイクシステムを作動させ、インから福住の前に出ることに成功した。また、2周目の1コーナーでは野尻がイン側から大湯にオーバーテイクを仕掛ける。しかし、大湯も一歩も引かず。2台はS字まで並走する形になったが、最終的には軽く接触する形となり、アウト側にいた大湯はコースオフ。ポジションを落とすことになった。
この頃になると、西コースの雨量が増え、ウェット宣言が出される。その後、本降りになることはなかったが、各ドライバーともに滑りやすいコンディションの中での走行となった。その中で、3周目の1
コーナーでは、福住がアウトから大津を抜き返す。同じ周の130Rでは、平川もアウトから大津をオーバーテイク。大津は5番手まで後退した。その後方では宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)がスプーンでコースオフ。最後方までドロップする場面も見られた。
そして、4周目に入ると、トップの松下にドライブスルーペナルティーが科される。理由はジャンプスタート。松下は正規グリッドに着いた後、レッドシグナルが点灯中にわずかながらタイヤが動いてしまっていた。5周を終えたところで、松下はペナルティー消化のためにピットロードに滑り込んだが、コースに戻った時には、最下位までドロップしてしまった。
代わってトップに立ったのは野尻、これに福住、平川、大津、牧野、フェネストラズ、大湯、山下が続く。この中で、次第に緊迫し始めたのはトップ争い。6周を終えた時点で1秒367あったタイムギャップを福住がジワジワと削り、9周を終えたところでは0秒622。その周、福住は西コースでオーバーテイクシステムを作動させ、シケインでは野尻の真後ろまで迫った。
その翌周からはピットが動く。10周を終えたところで、まずピットに飛び込んだのは、牧野、山下、大湯、アレジ、坪井、松下。この中で、牧野のクルーは左リヤタイヤの交換に手間取り、15秒4という作業時間を要してしまう。その間に、山下が牧野の前に出る。また大湯もここでアレジの逆転を許す形となった。
その翌周には、トップ争いを演じていた福住がピットイン。大津、フェネストラズ、阪口、宮田、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、小高一斗(KCMG)、タチアナ・カルデロン(ThreeBond DragoCORSE)もピットに入った。
そして、その翌周、12周を終えたところでトップの野尻がピットイン。しかしこの直前、野尻に対してはレース結果に5秒加算というペナルティーが科せられることに。大湯との接触が危険なドライブ行為と判定されたためだ。タイヤ交換を終えた野尻は福住の前でコースに戻ることに成功。しかし、アウトラップでオーバーテイクシステムを使いながらタイムを稼いできた福住は、逆バンクで野尻を捉える。一方、野尻と福住がピットに入ったことで前が開けた平川は、13周目に1分41秒037という、その時点でのファステストラッブをマーク。その翌周、14周を終えたところでピットに滑り込んだ。クルーは7秒1という素早い作業を見せ、平川は福住の目の前でコースに復帰。しかし、アウトラップの2コーナーでは、福住が難なく平川をかわして行った。その平川の背後には野尻も迫る。しかし、お互いにオーバーテイクシステムを使いながらの攻防。ここは平川がポジションを守り切った。
この時、見た目上のトップを走っていたのは関口。関口は前が開けたこともあり、1分41秒台後半から42秒台のタイムを刻んでいく。その他、国本雄資(KCMG)や大嶋和也(NTT Communications ROOKIE)も、他のドライバーとはピットタイミングをずらしたが、大嶋は15周を終えたところで、国本は19周を終えたところでピットイン。関口だけがピットに入らず走行を続けた。20周を終えたところで、関口と実質4番手を走っていた大津のタイム差は33秒195。大津がペースアップに苦しむ中、関口はその差をさらに広げ、25周を終えたところでは36秒776、26周を終えたところでは37秒329までギャップを稼いだ。
そして、関口は27周を終えたところでピットイン。クルーは平川の時よりさらに早い6秒7という作業を見せ、関口は大津の前でコースに戻ることに成功する。大津はちょうどオーバーテイクシステムが使えないタイミング。その周のヘアピン立ち上がりからようやくオーバーテイクシステムを稼働させ、シケインでは関口にアウトから並びかけようとする。しかし、関口はイン側のラインをガッチリ抑え、大津に逆転のチャンスを与えなかった。
最終盤に入った29周目には、トップ争いも緊迫。シケインから平川がオーバーテイクシステムを作動させて福住に迫る。一方の福住は、ここではオーバーテイクシステムを温存。しかし、最終ラップのスプーン入り口からは、残っていたオーバーテイクシステムをフル稼働させて、平川を突き放した。
結果、30周のレースを終えてトップチェッカーを受けたのは、福住。第2戦、同じ鈴鹿でポールからトップを守ったものの、タイヤバーストでリタイヤに終わった福住にとっては、リベンジの鈴鹿初優勝。今季菅生に続く2勝目となり、ドライバーズランキングも2位で1年を締めくくった。続く2位には平川。3位には野尻が入賞。関口は4位に入ったことで、ドライバーズランキング3位となっている。以下、大津、山下、フェネストラズ、アレジ、山本、牧野までが入賞。牧野は19周目のシケインでアレジとのバトルを展開したが、2台は軽く接触。これを危険なドライブ行為と判定されたため、牧野には5秒加算のペナルティーが科されていた。そのため、チェッカーを先に受けたのは牧野だったが、山本が繰り上がる形となっている。
今回、平川が2位、関口が4位と揃って上位フィニッシュを果たしたため、チームタイトルはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに2ポイント差をつけたcarenex TEAM IMPULが獲得。5位入賞を果たした大津がルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
スタートからゴールまで見所の多かった1戦。スタンドから見守った1万人余りの観客からは、ドライバーやチームに大きな拍手が送られた。来年は一体どんな名場面が見られるのか。大きな期待感とともに、今年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は幕を閉じることとなった。
決勝1位:No. 5 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
「昨日の走り出しの状況から言うと、優勝できるのかなという感じでした。ここまでのレース、(第1戦)富士3位、そのあとの(第2戦)鈴鹿のレースで惜しくもリタイヤということで、非常に悔しかったです。そういう気持ちもあって(第4戦)SUGOで自身初優勝することができましたが、そのあとのもてぎ(第5、第6戦)ではポイントが獲得できないレースが続いて落ち込むみましたが、やっとまた鈴鹿でしっかりとリベンジを果たすことができてほんとうれしいですね。鈴鹿でのスーパーフォーミュラというと、2位、3位はあったのですが、優勝が今までありませんでした。自分にとっても価値のある優勝だったので本当にうれしいです。(スタートする前に雨が落ち始めたが)この雨がどれくらい増えていくかわからない状況で、スタート練習があまりできておらず、実際のレースでもうまくいかなくて(レース展開に)響いてしまいました。レース中は、西コースのスプーンカーブで降っていたので、そこで前の選手の動きを参考にしながらスピードを合わせていきました。ただ僕自身はあの雨のおかげで順位を上げることができたので、あまり焦ることなくレースを進めることができました。一方、スタートで出遅れた瞬間は焦ってしまい、オーバーテイクシステム(OTS)を押してしまったことで、オープニングラップの130Rでは大津(弘樹)選手にOTSを使われて抜かれました。でも(スタート前の)8分間走行でクルマの調子が非常に良さそうだと感じていたので、そのへんは順位を落としたことに『やってしまったな』とは思いましたが、まったく焦ることなくレースに集中していました。(ピットインのタイミングは)特に天候の影響もなく、このままうしろにいたらなかなか抜けないのは僕自身もわかっていたので、一度OTSを使って抜こうと思ったのですが、(前にいた)野尻(智紀)選手はディフェンスも上手なので、『ピット(作業)で前に出るしかない』と。タイヤの方も気温が下がってきたときにピットに入り、アウトラップで遅いとちょっと怖いなと思ったので、チームの判断とも合わせて最初にピットに入りました。それがうまくいったと思います。(背後の平川が)残り3周くらいになると、一気にOTSを使って仕掛けてくるタイミングがあるだろうことはわかっていました。僕自身は、”いっぱいいっぱい”というよりもちょっとマージンを持って走っていたので『全然(うしろを)押さえられるな』という自信もあったしクルマの状況も非常に良かったので、あの距離から(平川が)OTSを使ってきたときは、僕自身はまったく焦ってはいませんでした。確実に勝ちに行こうと考えたときに、最後までしっかり自分のOTSを持っておいて、後半に……まぁ最終ラップに使ったという流れでした。(来シーズンのタイトル獲得を目指す上で必要なのは)ドライバーとしての強さ、自分自身をどう信じ切れるかというところだと思います。チャンピオンシップを争っている中で、不甲斐ないレースを2戦連続もてぎでしてしまったのも、自分の実力だと思います。(モータースポーツでは)運もドライバーが引き寄せなければいけないと言われるので、自分自身がもっともっと運を引き寄せるドライバーになって、チームを引っ張っていかないといけないという立場になることが、今の僕がチャンピオンになるための必要なものなのかと思います」
決勝2位:No.20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)
「今週は、比較的どういう状況でも調子が良くて。昨日の予選は少しエンジンの方でトラブルが出てしまい、思うようなアタックができずグリッドが沈んでしまいました。今日、レースに向けていろいろ考えてチームでやってきたことを発揮したくて……第2戦(鈴鹿)もすごく調子が良かったので、しっかりとスタートを決めてレースペースで勝とう、という強い気持ちで臨みました。
(ピットインのタイミングは)結果論だと引っ張ればよかったかなと思います。序盤はタイヤをセーブして後ろについていたので、そこがもったいなかったなと思います。チーム側も『今、ピットに入れば前に出られる』と(ピットへ戻るよう無線で)コールしたんですが、もっと自分で冷静になって(タイミングを)引っ張れば確実に(福住の)前に出られたかなと思っていて……。実際、前に出られたのですが、1コーナー、2コーナーで前に出ても、今の路面温度だと(背後のクルマを)押さえることができないので。そこはもうちょっと自分で冷静に判断しないといけないなということをすごく反省しています。
スタートはうまく行って、レースペースも良かったものの、ちょっと作戦があまり良くなかったかなぁと個人的には思うんですが、最後を2位で終えたことはうれしいですし、何よりもチームチャンピオンを獲れたことがうれしいです。一方でドライバーチャンピオンは今年獲れませんでしたが、また来年リベンジしたいと思います」
決勝3位:No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)
「まず接触してしまった大湯(都史樹)選手とNAKAJIMA RACINGの皆さん、大湯選手を応援されているファンの皆さん、ホンダファンの皆さん、レースを応援してくださる皆さん、すべての方にまず申し訳なかったと思っています。すみませんでした。少しペナルティも出て、私としては課題の残るレースになってしまいましたが、あの状況で私自身は絶対に引くことができませんでしたし、意地と意地がぶつかってしまい、あっけない幕切れにしてしまったのは、すべて僕に非があると思います。本来ならば接触することなくいかなきゃいけないと思いますし、もっともっとギリギリのところを狙ってサイド・バイ・サイドでバトルができるように自分の技量も上げないといけないと思います。ただその中で、『絶対引かない!』という気持ちはレースの中で見せられたことは良かったですし、5番手からどういうレースになるかと思っていましたが、一時はトップも走れたのでいいところはあったレースだったと思います。ただ、ピットのタイミング含め、少しうまくいかなかった部分があったり、アウトラップから計測1周、2周目のペースが上げ切れなかったので、福住(仁嶺)選手と平川(亮)選手に先行を許す形となってしまいました。そのあたりは、本来勝てたかもしれないレースを結果につなげられなかったので、反省点のひとつだと思います。でもなんとしても気持ちだけは負けたくなかったし、そういう部分をレースの中でもある程度見せることができたと思います。(ピットインのタイミングは)だいたい入れるのが10周目から13周目くらいで考えていました。その中で福住選手がピットインしたタイミングは、僕と福住選手の間が微妙に開いた周だったと思います。僕がその瞬間に(ピットに)入ると無線で言えたら、もしかするとまた違った展開が生まれたのかもしれませんが、ドライバーでしかわかり得ない細かな状況というものを少し無駄にしてしまい……わかっていながらもチームにフィードバックできなかったので、そのあたりは私の反省点なのかなと思います。今日、負けてしまった大きな分岐点になったのかなと思います。来年以降も、いつ負けてもおかしくないこのシリーズでしっかりと自分自身を磨きつつ、チームのみんなとともに力をさらに上げていきたいと思います。今シーズンもたくさん皆さんからのご声援をいただき、本当に助けられました。ありがとうございました」
DOCOMO TEAM DANDELION RACING
村岡 潔チームプリンシパル
「なによりも、最後(の戦い)を福住(仁嶺)君がまとめてくれてうれしかったというひと言に尽きます。それとチームタイトルがなかなか獲れない……さすが星野(一義/carenex TEAM IMPUL)さん! いつまでも勉強されられますね。もう譲って欲しいな(苦笑)。来年は必ず乗り越えたいと思います。(福住が2勝目をあげたが)2勝というか、本来なら前の(第2戦)鈴鹿でも勝たせてあげたかったのですが、(第4戦)SUGOで勝って、(今回の)鈴鹿で勝つ……やはり鈴鹿で勝たせてあげるということが一番だし、今回は自分の力で勝ち取ったというレースだったので、観ていてこちらの方も気持ち良かったですね。(福住のチームメイトである牧野任祐が未勝利に終わったが)あとはタイミングの問題だけだと思います。今回もチームが(ピット作業で)ミスをしてしまったので、彼には申し訳なかったと思います。とはいえ、彼の前戦(第6戦もてぎで3位)のおかげでチームタイトルの競争もできましたので、いつ勝っても……と思います。その運を呼ぶ力をつけてもらうのはドライバーの仕事だと思うし、チームはミスなくいいクルマを作って送り出すだけというシンプルさなので、彼が運を呼び込むような力強い走りをすればいいんだと思います。今日の福住君は自分でどんどん道を広げていくような走りをしましたから、そういう意味でいい刺激を受けたと思います。ただ、(牧野は)出だしのテストもなく、何戦か”お休み”もあった中でもちゃんと表彰台にも上がってくれましたので、彼は充分に力を発揮したと思います。来年はきちっと福住君と非常に”アブナイ”(接近戦)レースをやってくれると思います。福住君はチームに山本尚貴選手といういいドライバーがいたとき(2019、20年)に、まず6号車に乗っていろいろ勉強しました。付きっきりで……というくらい一緒にレースをしていました。山本選手がチームを出た今年、5号車に乗ってからは彼に自立してもらい、『アドバイス的なことは一切しないよ』 と。その分、今度は6号車の牧野君に(サポートを)付けました。それはチームとしてずっとやってきていることです。面倒をみるときと突き放すとき、メリハリをつけてやっているのが、ここしばらくはいい結果につながっているのかなと思います。若いドライバーには無限の可能性があるし、うちのチームはそういうステップ(に位置するチーム)なので、うちを通過してふたりともチャンピオンを獲るドライバーになってくれればいいですね。その代わりにこのふたりを追い越す若いドライバーが、うちで走ってくれればいいと思います。それがスーパーフォーミュラを盛り上げてくれることになると思うので。福住君は自分で勝つための方法を切り開こうと、今年一年もがきながらこの最終戦を勝ち取ったので、来年が楽しみです」
カテゴリー: F1 / スーパーフォーミュラ
ウェットコンディションとなった朝のフリー走行から一転、昼前になると鈴鹿には青空が広がった。午後1時15分からスタート進行が開始し、朝、ドライコンディションでのマシンの状態を確認できていないドライバーたちが8分間のウォームアップ走行を行った。
気温が21℃、路面温度が25℃まで上昇する中、午後2時にフォーメーションラップがスタート。この直前から、鈴鹿には路面を濡らすほどではないもののパラパラと雨が降り始め、レースの波乱を予感させた。そんな中、各ドライバーは1周の隊列走行を終えると正規グリッドにロックオン。最後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウト。30周先のゴールに向けて、一斉にスタートが切られた。
ここで動き出しこそ余り良くなかったものの、トップのポジションを守ったのはPPスタートの松下。予選2番手の大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)もポジションをキープする。その後方では、5番グリッドの野尻がスーパースタートを決め、最もアウト側から3番手まで浮上。1〜2コーナーでは大湯に並びかけるほどの勢いを見せる。スタートをミスしたという福住は一つポジションを落として4番手。7番グリッドからスタートした大津と9番グリッドからスタートした平川はアウト側のラインを取って1コーナーにアプーチすると、それぞれ5番手、6番手にポジションアップを果たした。これに対して、スタート直後の1コーナーでポジションを落としてしまったのは、4番グリッドからスタートした牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。牧野は最もイン側からのアプローチとなったが、1コーナーに入るとラインが厳しくなり、大津、平川の先行を許す形となってしまった。
その後、オープニングラップから、コース上では各所でバトルが勃発。スプーンコーナーではアレジと坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)の争いが見られただけでなく、130Rでは大津がオーバーテイクシステムを作動させ、インから福住の前に出ることに成功した。また、2周目の1コーナーでは野尻がイン側から大湯にオーバーテイクを仕掛ける。しかし、大湯も一歩も引かず。2台はS字まで並走する形になったが、最終的には軽く接触する形となり、アウト側にいた大湯はコースオフ。ポジションを落とすことになった。
この頃になると、西コースの雨量が増え、ウェット宣言が出される。その後、本降りになることはなかったが、各ドライバーともに滑りやすいコンディションの中での走行となった。その中で、3周目の1
コーナーでは、福住がアウトから大津を抜き返す。同じ周の130Rでは、平川もアウトから大津をオーバーテイク。大津は5番手まで後退した。その後方では宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)がスプーンでコースオフ。最後方までドロップする場面も見られた。
そして、4周目に入ると、トップの松下にドライブスルーペナルティーが科される。理由はジャンプスタート。松下は正規グリッドに着いた後、レッドシグナルが点灯中にわずかながらタイヤが動いてしまっていた。5周を終えたところで、松下はペナルティー消化のためにピットロードに滑り込んだが、コースに戻った時には、最下位までドロップしてしまった。
代わってトップに立ったのは野尻、これに福住、平川、大津、牧野、フェネストラズ、大湯、山下が続く。この中で、次第に緊迫し始めたのはトップ争い。6周を終えた時点で1秒367あったタイムギャップを福住がジワジワと削り、9周を終えたところでは0秒622。その周、福住は西コースでオーバーテイクシステムを作動させ、シケインでは野尻の真後ろまで迫った。
その翌周からはピットが動く。10周を終えたところで、まずピットに飛び込んだのは、牧野、山下、大湯、アレジ、坪井、松下。この中で、牧野のクルーは左リヤタイヤの交換に手間取り、15秒4という作業時間を要してしまう。その間に、山下が牧野の前に出る。また大湯もここでアレジの逆転を許す形となった。
その翌周には、トップ争いを演じていた福住がピットイン。大津、フェネストラズ、阪口、宮田、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、小高一斗(KCMG)、タチアナ・カルデロン(ThreeBond DragoCORSE)もピットに入った。
そして、その翌周、12周を終えたところでトップの野尻がピットイン。しかしこの直前、野尻に対してはレース結果に5秒加算というペナルティーが科せられることに。大湯との接触が危険なドライブ行為と判定されたためだ。タイヤ交換を終えた野尻は福住の前でコースに戻ることに成功。しかし、アウトラップでオーバーテイクシステムを使いながらタイムを稼いできた福住は、逆バンクで野尻を捉える。一方、野尻と福住がピットに入ったことで前が開けた平川は、13周目に1分41秒037という、その時点でのファステストラッブをマーク。その翌周、14周を終えたところでピットに滑り込んだ。クルーは7秒1という素早い作業を見せ、平川は福住の目の前でコースに復帰。しかし、アウトラップの2コーナーでは、福住が難なく平川をかわして行った。その平川の背後には野尻も迫る。しかし、お互いにオーバーテイクシステムを使いながらの攻防。ここは平川がポジションを守り切った。
この時、見た目上のトップを走っていたのは関口。関口は前が開けたこともあり、1分41秒台後半から42秒台のタイムを刻んでいく。その他、国本雄資(KCMG)や大嶋和也(NTT Communications ROOKIE)も、他のドライバーとはピットタイミングをずらしたが、大嶋は15周を終えたところで、国本は19周を終えたところでピットイン。関口だけがピットに入らず走行を続けた。20周を終えたところで、関口と実質4番手を走っていた大津のタイム差は33秒195。大津がペースアップに苦しむ中、関口はその差をさらに広げ、25周を終えたところでは36秒776、26周を終えたところでは37秒329までギャップを稼いだ。
そして、関口は27周を終えたところでピットイン。クルーは平川の時よりさらに早い6秒7という作業を見せ、関口は大津の前でコースに戻ることに成功する。大津はちょうどオーバーテイクシステムが使えないタイミング。その周のヘアピン立ち上がりからようやくオーバーテイクシステムを稼働させ、シケインでは関口にアウトから並びかけようとする。しかし、関口はイン側のラインをガッチリ抑え、大津に逆転のチャンスを与えなかった。
最終盤に入った29周目には、トップ争いも緊迫。シケインから平川がオーバーテイクシステムを作動させて福住に迫る。一方の福住は、ここではオーバーテイクシステムを温存。しかし、最終ラップのスプーン入り口からは、残っていたオーバーテイクシステムをフル稼働させて、平川を突き放した。
結果、30周のレースを終えてトップチェッカーを受けたのは、福住。第2戦、同じ鈴鹿でポールからトップを守ったものの、タイヤバーストでリタイヤに終わった福住にとっては、リベンジの鈴鹿初優勝。今季菅生に続く2勝目となり、ドライバーズランキングも2位で1年を締めくくった。続く2位には平川。3位には野尻が入賞。関口は4位に入ったことで、ドライバーズランキング3位となっている。以下、大津、山下、フェネストラズ、アレジ、山本、牧野までが入賞。牧野は19周目のシケインでアレジとのバトルを展開したが、2台は軽く接触。これを危険なドライブ行為と判定されたため、牧野には5秒加算のペナルティーが科されていた。そのため、チェッカーを先に受けたのは牧野だったが、山本が繰り上がる形となっている。
今回、平川が2位、関口が4位と揃って上位フィニッシュを果たしたため、チームタイトルはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに2ポイント差をつけたcarenex TEAM IMPULが獲得。5位入賞を果たした大津がルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
スタートからゴールまで見所の多かった1戦。スタンドから見守った1万人余りの観客からは、ドライバーやチームに大きな拍手が送られた。来年は一体どんな名場面が見られるのか。大きな期待感とともに、今年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は幕を閉じることとなった。
決勝1位:No. 5 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
「昨日の走り出しの状況から言うと、優勝できるのかなという感じでした。ここまでのレース、(第1戦)富士3位、そのあとの(第2戦)鈴鹿のレースで惜しくもリタイヤということで、非常に悔しかったです。そういう気持ちもあって(第4戦)SUGOで自身初優勝することができましたが、そのあとのもてぎ(第5、第6戦)ではポイントが獲得できないレースが続いて落ち込むみましたが、やっとまた鈴鹿でしっかりとリベンジを果たすことができてほんとうれしいですね。鈴鹿でのスーパーフォーミュラというと、2位、3位はあったのですが、優勝が今までありませんでした。自分にとっても価値のある優勝だったので本当にうれしいです。(スタートする前に雨が落ち始めたが)この雨がどれくらい増えていくかわからない状況で、スタート練習があまりできておらず、実際のレースでもうまくいかなくて(レース展開に)響いてしまいました。レース中は、西コースのスプーンカーブで降っていたので、そこで前の選手の動きを参考にしながらスピードを合わせていきました。ただ僕自身はあの雨のおかげで順位を上げることができたので、あまり焦ることなくレースを進めることができました。一方、スタートで出遅れた瞬間は焦ってしまい、オーバーテイクシステム(OTS)を押してしまったことで、オープニングラップの130Rでは大津(弘樹)選手にOTSを使われて抜かれました。でも(スタート前の)8分間走行でクルマの調子が非常に良さそうだと感じていたので、そのへんは順位を落としたことに『やってしまったな』とは思いましたが、まったく焦ることなくレースに集中していました。(ピットインのタイミングは)特に天候の影響もなく、このままうしろにいたらなかなか抜けないのは僕自身もわかっていたので、一度OTSを使って抜こうと思ったのですが、(前にいた)野尻(智紀)選手はディフェンスも上手なので、『ピット(作業)で前に出るしかない』と。タイヤの方も気温が下がってきたときにピットに入り、アウトラップで遅いとちょっと怖いなと思ったので、チームの判断とも合わせて最初にピットに入りました。それがうまくいったと思います。(背後の平川が)残り3周くらいになると、一気にOTSを使って仕掛けてくるタイミングがあるだろうことはわかっていました。僕自身は、”いっぱいいっぱい”というよりもちょっとマージンを持って走っていたので『全然(うしろを)押さえられるな』という自信もあったしクルマの状況も非常に良かったので、あの距離から(平川が)OTSを使ってきたときは、僕自身はまったく焦ってはいませんでした。確実に勝ちに行こうと考えたときに、最後までしっかり自分のOTSを持っておいて、後半に……まぁ最終ラップに使ったという流れでした。(来シーズンのタイトル獲得を目指す上で必要なのは)ドライバーとしての強さ、自分自身をどう信じ切れるかというところだと思います。チャンピオンシップを争っている中で、不甲斐ないレースを2戦連続もてぎでしてしまったのも、自分の実力だと思います。(モータースポーツでは)運もドライバーが引き寄せなければいけないと言われるので、自分自身がもっともっと運を引き寄せるドライバーになって、チームを引っ張っていかないといけないという立場になることが、今の僕がチャンピオンになるための必要なものなのかと思います」
決勝2位:No.20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)
「今週は、比較的どういう状況でも調子が良くて。昨日の予選は少しエンジンの方でトラブルが出てしまい、思うようなアタックができずグリッドが沈んでしまいました。今日、レースに向けていろいろ考えてチームでやってきたことを発揮したくて……第2戦(鈴鹿)もすごく調子が良かったので、しっかりとスタートを決めてレースペースで勝とう、という強い気持ちで臨みました。
(ピットインのタイミングは)結果論だと引っ張ればよかったかなと思います。序盤はタイヤをセーブして後ろについていたので、そこがもったいなかったなと思います。チーム側も『今、ピットに入れば前に出られる』と(ピットへ戻るよう無線で)コールしたんですが、もっと自分で冷静になって(タイミングを)引っ張れば確実に(福住の)前に出られたかなと思っていて……。実際、前に出られたのですが、1コーナー、2コーナーで前に出ても、今の路面温度だと(背後のクルマを)押さえることができないので。そこはもうちょっと自分で冷静に判断しないといけないなということをすごく反省しています。
スタートはうまく行って、レースペースも良かったものの、ちょっと作戦があまり良くなかったかなぁと個人的には思うんですが、最後を2位で終えたことはうれしいですし、何よりもチームチャンピオンを獲れたことがうれしいです。一方でドライバーチャンピオンは今年獲れませんでしたが、また来年リベンジしたいと思います」
決勝3位:No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)
「まず接触してしまった大湯(都史樹)選手とNAKAJIMA RACINGの皆さん、大湯選手を応援されているファンの皆さん、ホンダファンの皆さん、レースを応援してくださる皆さん、すべての方にまず申し訳なかったと思っています。すみませんでした。少しペナルティも出て、私としては課題の残るレースになってしまいましたが、あの状況で私自身は絶対に引くことができませんでしたし、意地と意地がぶつかってしまい、あっけない幕切れにしてしまったのは、すべて僕に非があると思います。本来ならば接触することなくいかなきゃいけないと思いますし、もっともっとギリギリのところを狙ってサイド・バイ・サイドでバトルができるように自分の技量も上げないといけないと思います。ただその中で、『絶対引かない!』という気持ちはレースの中で見せられたことは良かったですし、5番手からどういうレースになるかと思っていましたが、一時はトップも走れたのでいいところはあったレースだったと思います。ただ、ピットのタイミング含め、少しうまくいかなかった部分があったり、アウトラップから計測1周、2周目のペースが上げ切れなかったので、福住(仁嶺)選手と平川(亮)選手に先行を許す形となってしまいました。そのあたりは、本来勝てたかもしれないレースを結果につなげられなかったので、反省点のひとつだと思います。でもなんとしても気持ちだけは負けたくなかったし、そういう部分をレースの中でもある程度見せることができたと思います。(ピットインのタイミングは)だいたい入れるのが10周目から13周目くらいで考えていました。その中で福住選手がピットインしたタイミングは、僕と福住選手の間が微妙に開いた周だったと思います。僕がその瞬間に(ピットに)入ると無線で言えたら、もしかするとまた違った展開が生まれたのかもしれませんが、ドライバーでしかわかり得ない細かな状況というものを少し無駄にしてしまい……わかっていながらもチームにフィードバックできなかったので、そのあたりは私の反省点なのかなと思います。今日、負けてしまった大きな分岐点になったのかなと思います。来年以降も、いつ負けてもおかしくないこのシリーズでしっかりと自分自身を磨きつつ、チームのみんなとともに力をさらに上げていきたいと思います。今シーズンもたくさん皆さんからのご声援をいただき、本当に助けられました。ありがとうございました」
DOCOMO TEAM DANDELION RACING
村岡 潔チームプリンシパル
「なによりも、最後(の戦い)を福住(仁嶺)君がまとめてくれてうれしかったというひと言に尽きます。それとチームタイトルがなかなか獲れない……さすが星野(一義/carenex TEAM IMPUL)さん! いつまでも勉強されられますね。もう譲って欲しいな(苦笑)。来年は必ず乗り越えたいと思います。(福住が2勝目をあげたが)2勝というか、本来なら前の(第2戦)鈴鹿でも勝たせてあげたかったのですが、(第4戦)SUGOで勝って、(今回の)鈴鹿で勝つ……やはり鈴鹿で勝たせてあげるということが一番だし、今回は自分の力で勝ち取ったというレースだったので、観ていてこちらの方も気持ち良かったですね。(福住のチームメイトである牧野任祐が未勝利に終わったが)あとはタイミングの問題だけだと思います。今回もチームが(ピット作業で)ミスをしてしまったので、彼には申し訳なかったと思います。とはいえ、彼の前戦(第6戦もてぎで3位)のおかげでチームタイトルの競争もできましたので、いつ勝っても……と思います。その運を呼ぶ力をつけてもらうのはドライバーの仕事だと思うし、チームはミスなくいいクルマを作って送り出すだけというシンプルさなので、彼が運を呼び込むような力強い走りをすればいいんだと思います。今日の福住君は自分でどんどん道を広げていくような走りをしましたから、そういう意味でいい刺激を受けたと思います。ただ、(牧野は)出だしのテストもなく、何戦か”お休み”もあった中でもちゃんと表彰台にも上がってくれましたので、彼は充分に力を発揮したと思います。来年はきちっと福住君と非常に”アブナイ”(接近戦)レースをやってくれると思います。福住君はチームに山本尚貴選手といういいドライバーがいたとき(2019、20年)に、まず6号車に乗っていろいろ勉強しました。付きっきりで……というくらい一緒にレースをしていました。山本選手がチームを出た今年、5号車に乗ってからは彼に自立してもらい、『アドバイス的なことは一切しないよ』 と。その分、今度は6号車の牧野君に(サポートを)付けました。それはチームとしてずっとやってきていることです。面倒をみるときと突き放すとき、メリハリをつけてやっているのが、ここしばらくはいい結果につながっているのかなと思います。若いドライバーには無限の可能性があるし、うちのチームはそういうステップ(に位置するチーム)なので、うちを通過してふたりともチャンピオンを獲るドライバーになってくれればいいですね。その代わりにこのふたりを追い越す若いドライバーが、うちで走ってくれればいいと思います。それがスーパーフォーミュラを盛り上げてくれることになると思うので。福住君は自分で勝つための方法を切り開こうと、今年一年もがきながらこの最終戦を勝ち取ったので、来年が楽しみです」
カテゴリー: F1 / スーパーフォーミュラ