F1スペインGP:C1タイヤの“前後分離現象”が戦略分岐を引き起こす?

今季これまで、ピレリはレースを2ストップに導くべくコンパウンド選定や戦略設計を行ってきたが、実際には外的要因が関与しない中で純粋な2ストップ戦略が採られたのは開幕戦バーレーンGPのみだった。しかし、今回のバルセロナでは複数の要素が重なり、C1タイヤではレース距離をカバーするのに必要な性能が確保できていない。
ピレリの主任エンジニア、シモーネ・ベッラは次のように語る。
「チームはリヤアクスルを守ろうとしているが、そうすると今度はフロントを過剰に使うことになり、結果として前後両方のアクスルでパフォーマンスを失ってしまう」
「我々が見ている限り、C1は非常にグリップが低く、スライドも起きやすい。バランスが取れず、前後のアクスルが“切り離されている”ような印象だ」
「具体的には、低速コーナーではミッドコーナーでアンダーステアが出てしまい、高速コーナーではリヤが滑ってしまう。支えとなるものが少なく、後方の安定性が失われる。つまり、チームはC1でうまく妥協点を見つけることが難しく、良いバランスを得るのに苦労しているということだ」

C1は事実上使用不可 戦略の主軸はC2とC3に
こうした状況から、レースではC1が事実上使用されない可能性が高く、各チームはC2とC3の2種類のコンパウンドを軸に、金曜のプラクティスからロングランデータの収集に集中している。
「全体としてデグラデーションのレベルは通常のサーキットより高いが、マネジメントは可能な範囲だ。データを見る限りでは、2ストップになる可能性が最も高い」とベッラは語る。
「C2とC3のデグラデーションレベルは非常に似ている。求められるマネジメントの方法は異なるが、ペース自体は似たようなものだ。C3はより高いグリップを提供するが、やや劣化が速い。C2はグリップがやや劣るが、一貫性が高い。結果的に両者の性能はかなり接近している」
ピレリの推定では、C2とC3のラップタイム差は0.6~0.7秒程度。ベッラは、各チームのマシンバランスに応じて理想的な戦略が変わるとしつつ、上位勢は「ソフト→ミディアム→ソフト」の2ストップ戦略を選ぶ可能性が高いと見ている。
「昨年と似た状況になるかもしれない。トップ5のチームは、ソフト→ミディアム→ソフトになるだろう」
「ソフトタイヤをスタートで使えば、ターン1までの距離が長いこのコースではグリップの優位性を活かしてポジションを上げやすい。中盤ではミディアムに交換して、状況次第でスティントを引っ張るかどうかを判断する。そして最終スティントでは、燃料が軽くなり、路面温度やコンディションが良くなってくる中で再びソフトを使うことで、最大の効果が得られる」
通常は戦略が単調になりがちな現代のF1において、今週末のスペインGPはタイヤ特性そのものが大きな分岐点となりそうだ。C1タイヤが機能しないという事実が、各チームに2ストップ戦略を強く促す一戦となるだろう。
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