F1スペインGP:木曜記者会見 Part.2 - アロンソ、ラッセル、角田裕毅

一方、ラッセルはモナコでの“トラックカット”騒動について率直に反省しつつ、「F1の中のモナコ」という存在の価値を肯定。角田裕毅はレッドブル加入から6戦を経ての適応状況を語り、「自信を失ったわけではない」と着実な前進を強調。マックス・フェルスタッペンとの比較を避けつつ、自身の進化に集中している姿勢を見せた。
Q:フェルナンド、まずはあなたから。昨夜のファンフォーラムでは素晴らしい歓迎を受けていました。ここでは優勝2回、表彰台7回という成績を残しています。このレースが他と違う特別な理由は?
フェルナンド・アロンソ:やっぱりホームグランプリだからね。どのドライバーにとっても、母国の観客の前で走るのは特別なんだ。友人や家族もグランドスタンドやパドックに来るしね。だから、ホームではいつも以上の結果を出したいと思う。
バルセロナのことはよく知ってるよ。僕だけじゃなく、すべてのF1ドライバーにとってそうだと思う。たくさんテストをしてきた場所だからね。だから、FP1から決勝までずっと限界を攻めることになる。
Q:では、アストンマーティンとしての今週末の見通しは? イモラとモナコで導入したアップグレードを含め、前向きな要素に焦点を当てるとどんな成果がありましたか?
アロンソ:バルセロナで新しいパッケージの実力がもっと見えてくると思う。イモラでは確実に前進できたけど、予選でミディアムタイヤを使ったことで助けられた面もある。
モナコは特別な場所で、土曜日がすごく重要になる。そこでいいラップが出せたのは良かったね。バルセロナはもっと“普通の週末”になるから、パフォーマンスの位置付けがより明確になるはず。あと、今週は新しいフロントウイング規則があるから、他のチームも何かしら持ち込んでくると思うし、それがどう影響するか見てみたい。
Q:モナコではエイドリアン・ニューウェイと現場で一緒に仕事をしましたね。期待通りでしたか?
アロンソ:素晴らしかったよ。彼はピットレーンやグリッドで静止した状態のマシンを見るだけでも、多くのことに気づけるし、ガレージでも「こうした方がいい」という視点を与えてくれる。
ミーティングルームでの彼の存在も特別だね。威圧感があるというより、チーム全体の集中力や細部への意識が高くなる。話す人たちも、適当なことは言えないという空気になる。それがすごく良かった。来年もっと多くのレースに来てくれるなら、僕らはさらに多くのことを学べると思う。
Q:ありがとう、フェルナンド。では次にジョージ、メルセデスにとっては厳しい2戦が続いていますが、モナコ後のデブリーフィングではどんな学びがありましたか?
ジョージ・ラッセル:結局のところ、土曜日の時点で週末は終わっていた感じだね。モナコは予選のレースだから。
2ストップ導入で何か変化があると期待されてたけど、実際はそうでもなかった。試してみたこと自体は良かったと思うけど、結果としてはあまり変わらなかった。
僕たちは週末の途中で迷走してたけど、Q1で以前のセットアップに戻したら、すぐに感触が戻って、トップ4に入れた。だから本当に残念だったよ。
Q:ここスペインで、クリーンな週末を過ごすことの重要性は?
ラッセル:うん、イモラとモナコで2戦連続で厳しい展開だったから、普通の状態に戻したい。イモラまではずっとトップ5圏内にいたしね。
フェルナンドも言ってたけど、フロントウイングの変更で学び直しが必要になる部分もある。ただ、順位の大きな入れ替わりはないと思う。
Q:昨年はこのサーキットで3位と4位を獲得しています。今年も再現できそうですか?
ラッセル:再現できない理由はないと思ってる。イモラまでは毎回トップ5だったし、モナコでは僕らの力だけではどうにもならない部分があった。
ただし、暑いレースでのレースペースはマクラーレンに劣ってるんだ。今週末は50度を超えるような路面温度が続く予報だから、そこが不安要素。
でも、今回は最も硬いコンパウンドが使われるから、イモラやジェッダで使われたソフトタイヤとは条件が違う。その変化には期待している。
Q:ありがとう。では裕毅、次はあなたです。モナコでは悔しいレースになりましたが、もっと大きな視点で見て、レッドブル加入から6戦が経った今、マシンにはどれくらい慣れてきましたか?
角田裕毅:はい、今も少しずつ自信を築いていってるところです。マシンの理解については、だいぶ進んできたと思います。
ただ、あと数コンマ数秒の部分ですね。特に路面の変化を自然に感じられるようになるには、もう少し慣れが必要ですし、セッティングを変えたときにどういうバランスになるかっていうのも、まだ完全には読み切れていません。
新しいマシンなので、そこが難しいところですね。やっぱり経験がモノを言う部分だと思っていて、VCARB時代はマシンの挙動がほぼ完全に分かっていたので、考えなくても自然に反応できていた部分がありました。
イモラのときに、あらためて「どれだけマシンを理解しているか」というのを再確認できました。正直なところ、そのあたりの重要性を少し見誤っていた部分もあったかもしれません。
でも、自信を失ったわけではないですし、これからもっと慣れていけると思っています。
Q:今回のバルセロナに向けてチームの期待感は? フェルスタッペンはこのサーキットで4連勝中ですし、低速サーキットよりも競争力を発揮できそうですか?
角田裕毅:正直、モナコも予選までは結構良かったと思っています。赤旗などがあって、予定通りにはいかなかったんですけど、改善の余地があるラップもあったと思いますし。
予選は僕にとってかなり難しかったですけど、FP2やFP3までは結構良い位置で戦えてましたし、今までで一番良いペースだったんじゃないかなとも思います。
だから、いい方向に来てるなって感じています。バルセロナについては…レッドブルがここで勝ってる印象って、実はそんなに持ってなかったんですけど、4連勝してるって聞けてよかったです。
でも、マックスのことは意識しすぎずに、自分自身のことに集中していきたいと思っています。
記者からの質問
Q:フェルナンド、あなたはたびたび2026年に焦点を置いていると発言しています。モナコにはエイドリアン・ニューウェイも来ていましたし、今週のバルセロナにも新パーツが投入され、さらにシルバーストンにもアップグレードが予定されています。チームの焦点は本当に2026年に向いているのでしょうか? それとも2025年にもリソースを割いているのですか?
アロンソ:メインの焦点は2026年にあるよ。でも、'26年に強くなるには、'25年にある程度の勢いを作っておく必要がある。そのためには今のクルマでもアップグレードを出して、実際に速くなるパーツを投入しないといけない。
そうすることで、シルバーストンや技術キャンパスのチームにも自信がつくし、'26年に向けて開発しているものの正しさを実際にトラックで確かめられる。それが大事なんだ。
だから'25年向けの開発も少しはやってるけど、本当の意味でのブレイクスルーや大きな順位の変化は'26年にならないと起きないと思ってる。希望は全部、そこにある。
Q:モナコでのインタビューでニューウェイが「シミュレーターと実車の相関に問題がある、それを解決するのに2年かかるかもしれない」と言っていました。それはどれくらいの影響がありますか? そして、解決に向けて何が行われていますか?
アロンソ:まあ、どのチームのシミュレーターにも、現実との相関問題はあると思うよ。100%信頼できるシミュレーターなんてない。
実車っていうのは、常に状況が変化してる。コーナーごとに、セッションごとに、風、気温、前のクルマのトラフィック…まったく同じラップなんて1つもない。だから、そういう現実を「完璧で一貫した環境」であるシミュレーターで再現しようとすると、そりゃ違いは出てくる。
ただ、直すのに2年もかかるとは思ってない。ニューウェイがモナコで初めて口にしたかもしれないけど、僕たちドライバーはすでに何度か指摘してる問題だから、対処も進んでるよ。
Q:2001年のモナコGPで、デビッド・クルサードが4秒遅いアロウズのベルノルディに40周塞がれたのを覚えていますか? 今は全車が1秒以内に収まっていて、逆に観客が日曜に期待しすぎていると思いますか?
アロンソ:うん、確かに。モナコは昔からそういう場所なんだ。でも今は情報が多すぎて、期待も膨らみすぎてる。ニュース、SNS、ネット上のあらゆるコンテンツで、F1に対してみんな「もっとこうすればいい」って思うようになってる。
だから日曜が終わったあと、「モナコはひどかった」みたいな否定的な声がたくさん出る。でもね、心配いらないよ。来年になれば、またモナコに行くのを楽しみにするし、金曜には「やっぱり最高の週末だ」ってなる。
土曜には全員がアドレナリン全開で、「ここで勝ちたい」ってなる。そして日曜になってまた「退屈だった」って言う。その繰り返しだよ。でも、それがF1というスポーツの本質でもある。
2、3年前だって、マックスやレッドブルがほとんど全勝してた。90年代にはマクラーレンがそうだった。歴史は繰り返されるけど、それでもF1はナンバーワンのスポーツだし、今の姿を受け入れて楽しむべきなんだ。
Q:ジョージ、あなたのモナコでの行動は「新しいリーダー・ラッセル像」の表れですか? リスクを取るようになったという意味で。
ラッセル:正直に言うと、50周ずっとウィリアムズのリアウイングを見てるのが辛すぎたんだ。まあ皮肉だけど、あの動きをしたことで順位が上がったんだよね。普通に走ってたら、アレックスの後ろで終わってたと思う。
3周でまるまる1回分のピットストップタイムを稼いで、自分のレースに集中できるようになった。僕にとっては、週末はもう早い段階で終わってたし、11位も20位も同じポイントゼロ。だからせめて楽しみたかった。
土曜日は何もできなかったけど、せめてレースの最後25周は楽しかったよ。別に「反逆のラッセル」になったわけじゃない。ただ、アレックスの後ろを“おばあちゃんみたいな運転”で走るのに疲れただけさ。
Q:日曜のレストランの会計は高かったですか?
ラッセル:全然、高くなかったね。まだ帳尻は合ってない(笑)。
Q:関連した質問です。ルール違反が意図的だった場合、どのようなペナルティがあるべきだと考えますか? 皆さんの意見を聞かせてください。
ラッセル:僕の場合、ペナルティがあるのは分かっていたし、それを受け入れるつもりだった。実際に科されたペナルティは当然のものだったと思う。
ああいう行為は本来許されるべきじゃない。でも、もしあの時点で僕がポイント争いをしてたなら、絶対にあんなことはしていなかったよ。アレックスはすでに2回ピットストップをしていて、僕はまだ1回もしていなかった。彼があれほどスローだったのは、自分のためというよりチームメイトのためだったと思う。
だから、僕に対して何かスポーツ的に得をしようと思ってやったわけではない。ただ、単純に“楽しみたかった”んだ。つまらなかったからね。でも、ほかのサーキットで同じことをしていたら、ペナルティはまったく妥当だったと思う。
Q:フェルナンド、スペインGPの開催地がマドリードに決まったことで、このバルセロナのサーキットは来年でカレンダーから外れる可能性が高いです。歴史あるこのコースを失って、新たなストリートサーキットに置き換わることをどう思いますか?
アロンソ:僕は、バルセロナがなくなるとは思ってないし、そう願ってもいない。新しい開催地が増えるのは良いことだし、新しい国にF1が行くのも歓迎しているけど、同時にF1の歴史が刻まれた伝統的なサーキットも残すべきだと思ってる。
F1とバルセロナは強く結びついていて、僕たちは何十年もここでテストをしてきた。チームがテスト先を選ぶとき、まずバルセロナが候補に挙がる。それだけ“F1らしい”サーキットなんだよ。
しかも、ここは近年施設も改善されて、グランドスタンドもパドックも新しくなってきてる。この2~3年でレベルアップしてるんだ。
バルセロナは過去30年F1にあり続けたし、これからも10年、20年、30年、いや40年と続いていくべきだと思ってる。一方で、今カレンダーにあるような一部の新しい開催地は、一時的なもので、やがて消えていくだろうね。だから、バルセロナを失うわけにはいかないんだ。
Q:ジョージ、モナコではどんな戦略を取ってもオーバーテイクできないという限界がありました。来年導入予定のマニュアルオーバーライドなどで、この状況を打破できる可能性はあると思いますか? それとも、アレックス・ブルツが提案するようなコース改修が必要ですか?
ラッセル:うーん、フェルナンドも言ってたけど、モナコって昔からずっと同じなんだよね。提案されてるコース変更案も見たけど、少なくとも悪化はしないと思う。
モナコの一番の問題点は、実質的にオーバーテイクできるポイントが1カ所しかないってこと。トンネル出口のシケインだけ。でも、そこでのレコードラインはすごく明確で、ドライバーは簡単にクルマの位置取りができちゃう。
正直、今のところ確実な解決策は思いつかない。マニュアルオーバーライドは可能性があるとは思う。レース中ずっとエネルギーを管理して、特定の場所で一気に出力を上げて抜く…そういう非伝統的な手段も、見せ場を作るにはありだよね。
でも、同時に「モナコはそういうレースなんだ」と受け入れる気持ちもある。F1にモナコがあるからこそ特別なんだと思う。予選がシーズンで一番エキサイティングで、レースは退屈かもしれないけど、それがあるから他のレースがもっと面白く見えるんだ。
だから正直、よく分からないよ。長くなってごめん。
Q:フェルナンド、インディアナポリスにも出場した経験がありますが、アレックス・パロウのインディ500優勝についてどう思いますか?
アロンソ:まず、スペインにとって素晴らしいことだし、彼にとっても素晴らしい成果だよね。シリーズチャンピオンを何度も獲って、今もランキング首位を走ってる中で、ついにインディ500も勝った。
多くのドライバーがF1でのキャリアを夢見るけど、彼はインディカーという舞台でチャンスを得て、それを完璧に活かした。彼はもうインディカー界のレジェンドだし、これからもそうあり続けるだろう。
F1がなくても、彼は何も失ってないと思う。彼はとても才能のあるドライバーで、本当に嬉しいよ。僕もファンの一人として日曜日にレースを見てたし、「今度こそ勝ってくれ」と願ってた。ついにやってくれたね。
Q:フェルナンド、モナコGPではコースレイアウトやオーバーテイクの問題がよく取り上げられますが、マシンサイズについての議論はあまりありません。あなたはさまざまなサイズのF1マシンを経験していますが、その点についてはどう考えますか?
アロンソ:僕? 一度もオーバーテイクできたことないよ!
Q:(笑)2010年にはいくつか素晴らしいオーバーテイクがありましたよ…
アロンソ:ああ、ランス(ストロール)もニコ(ヒュルケンベルグ)を最終ラップで抜いてたね。10年に1回くらいはオーバーテイクあるんだよ。すごいよね?(笑)
でも、これがモナコの本質なんだと思う。マックスに聞いても、頭にあるのはたぶん「なんでモナコがあんなに退屈だったか」ってことだけだよ。
ただ、全体的に「悪い点ばかり挙げる」傾向がある気がする。実際には「良い点」があるはずなのにね。今の時代、F1に関するコンテンツがとにかく大量に作られていて、僕たちドライバーは律儀にすべての質問に答えてしまう。
でも40年前、セナやプロストがチャンピオン争いをしてた時代だったら、1週間後にまたモナコの話を振られても、今みたいに丁寧には答えてなかったと思うよ。
Q:F1マシンのサイズについてですが、理想のサイズってどれくらいだと思いますか?
アロンソ:僕と裕毅が乗れるくらいのサイズなら、それで十分(笑)。あとはジョージの問題かな。彼には別のスポーツ、例えばバスケットボールとかがあるから(笑)。
でも真面目に言えば、2000年代初頭のマシンが、僕にとってはベストだったと思う。ちょっとロマンチックな見方かもしれないけどね。僕のF1キャリアが始まった時期でもあるし、成功もあの時期に集中してたから。
V10エンジン、小型の車体、すごく楽しくて気持ちよく運転できたよ。でも、あの時代のモナコでもオーバーテイクはできなかったけどね。
Q:フェルナンド、2026年のマシンはあなたがF1に残るかどうかの決定に影響を与えますか?
アロンソ:うん、大きな要素にはなると思う。でも最終的な決定要因ではないかな。
来年のスタートがどうなるか、どれくらいモチベーションを保てるかが重要だよ。シーズンごとに感じ方は変わるし、自分のパフォーマンスやフィジカルの維持、家族のことも含めて、いろんな要素が絡んでくる。
僕にとって人生の大きな決断になるのは、「レースをやめる時」だと思ってる。3歳からカートを始めて、今43歳。40年間ハンドルを握ってきた。
一度2018年にF1を離れたけど、また戻ってきた。だから次に決断するときは、100%の確信が必要だと思ってる。
Q:モナコでのリタイアについて、原因は何だったのか? そのエンジンは今後使えるのでしょうか?
アロンソ:僕が聞いた話では、スパークプラグの不具合で、それが原因でシリンダーの1つが壊れた。その状態で20周くらい5気筒で走っていたけど、最終的に完全に止まってしまった。そのエンジンはもう使えない。完全にダメになったよ。
手順や取り扱いが他のレースと違っていたわけでもないし、寿命が来てしまったタイミングが悪かっただけ。だから、今回のレースで特別な対応はしていないし、問題が再発するとも思っていないよ。
Q:フェルナンド、さきほど動機や楽しさについて話していましたが、マクラーレン時代と今とで何が違うのでしょうか? 成績は厳しいけれど、今もF1を楽しめていますか?
アロンソ:うん、今もF1は本当に楽しいし、いい時期だと思ってる。新しいファンが増えて、F1がブームになっているのもすごくいい。
ただ同時に、「やめ時」というのは自分の中で感じるものだと思う。今の僕はまだそれを感じてない。明日も、日曜も、グリッドに立つときは本当に嬉しいし、走ることにモチベーションもある。
最後にはストップウォッチが答えを教えてくれると思う。体に痛みが出たり、体調が悪くなったりすることもあるかもしれない。でも、今のところは健康だし、調子もいい。
レースがうまくいかなくても、次のレースで挽回したいって気持ちになっているし、その情熱は今も強くある。でも、それがいつまでも続く保証はない。だから、その日が来たらしっかりと判断するつもりだよ。
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