F1スペインGP:木曜記者会見 Part.1 - サインツ、ノリス、ベアマン

会見では、今週末から適用される新たなフロントウイング技術指令の影響や、近年批判の声も多いモナコGPの将来像、そしてアレックス・パロウのF1適性など多岐にわたるテーマが議論された。特にサインツは、日曜のレース改善に向けた「ドライバー主体の議論」の必要性を訴え、現役ドライバーならではの現場目線を強調した。
Q:カルロス、ホームレースですね。昨夜のファンフォーラムでは素晴らしい歓迎を受けていました。チケットは完売。特別な思いがあるのでは?
カルロス・サインツ:うん。みなさんこんにちは。ちょっと疲れてるんだ。遅刻しそうだったから走ってきて、罰金は避けたかったしね。でもここにいられて嬉しいよ。昨日のファンフォーラムはすごく良かったし、地元のファンからたくさんのサポートをもらえて、本当にいい気分になった。
なんというか、毎年ここに来るとポジティブなエネルギーをもらえるんだよね。気分が明るくなるし、どこに行っても応援の声が聞こえてくるのは最高の気分だよ。毎年ホームレースがあることに幸せを感じてるし、今週末は楽しみながら、いい結果を出して、ファンにいいレースを届けたいと思ってる。
Q:FW47はこのサーキットで笑顔を与えてくれると思いますか?
サインツ:うーん、もしFW47のために理想的なサーキットを設計するとしたら、バルセロナにはならないと思う。うちのクルマは中速で長いコーナーがあまり得意じゃないからね。
でも希望はあるよ。ここでは、これまでの数年間でチームがどれだけ進歩したかを示すこともできる。去年のチームはここで19位と20位だったし、2020年以来Q3に進出してない。Q2に行けたのも2021年が最後だった。それだけここが難しいサーキットだってことだよ。
でも、今年のクルマはそういうタイプのコーナーでも良くなってるから、もっといいパフォーマンスが見せられると自信を持ってる。
Q:今週末から導入されるFIAの技術指令についてはどうですか? チームからはどんな影響があると聞いていますか?
サインツ:うん、これについては当然いろんな話が出てるよね。でも、世間で騒がれてるほどの影響はないと思うし、それほど大きな変化でもないと思う。
フロントウイングはこれからもフロントウイングだし、少し硬めになって、前ほどたわまなくなるだけ。チームによってどれだけ柔軟に使っていたか次第だけど、影響はあっても1コンマ1秒程度じゃないかな。
Q:でもその1コンマ1秒で、グリッド上では4ポジションの差になりますよね?
サインツ:確かにそうだね。特に僕らがいるミッドフィールドだと、余計にその通りだよ。
Q:その技術指令によって、マシンのバランス取りが難しくなりますか?
サインツ:多少は難しくなると思う。でも今のF1では、メカニカル面でもエアロ面でも調整する手段がたくさんあるから、そこまで心配してない。
FP1でどんな状態かを見て、そこから調整していけばいい。各チームもシミュレーターで新しいウイングを使ってたくさん走ってきてるはずだからね。そういう変化に対応できる準備は、どのチームもできてると思う。
Q:ありがとう、カルロス。では次は直近の優勝者ランドへ。モナコGPの後、プリンス・ボールに出席されたと聞きました。どんな夜でしたか?
ランド・ノリス:うん、素敵なディナーだったよ。本当に楽しかった。メインテーブルに座れて、それだけでも光栄だったしね。あそこに行けるのは、基本的には優勝したドライバーだけだから、それだけでも特別な気分になれるんだ。
殿下と会話もできて、リラックスした時間を過ごせたし、美味しい料理も食べられた。週末を祝うのにふさわしい夜だった。
Q:モナコでの勝利から少し時間が経ちましたが、今振り返ってみて、これまでのF1での勝利と比べてどうですか?
ノリス:うーん、それぞれ違った特別さがあるけどね。最も激しい戦いだったかって言うと、たぶん違う。でも、それがモナコなんだ。
一番プレッシャーのかかる土曜日、一番みんなが勝ちたいと思ってるレース。そういう意味では、最も意味のある勝利だったと思う。
週末全体の雰囲気、サーキットの歴史、過去の優勝者たち――そういうものを全部考えると、これは「F1でのただの勝利」ではない、って言えるよ。間違いなく誇れるものだし、ずっと記憶に残ると思う。
Q:週末を通してとても落ち着いているように見えました。ポールを取った後も、勝った後も冷静でした。それは実際の気持ちにも合っていましたか?
ノリス:クルマの中では全然そんなことなかったよ。特に予選はね。モナコの予選って、年間で一番スリリングで、一番怖くて、一番不安なセッションなんだ。でも同時に、ラップを終えたときに一番笑顔になれる。
土曜日は完璧だった。日曜日のレースはいつも見応えがあるとは限らないけど、いろんな理由でいいレースだと思ってる。
Q:今週末のTD(技術指令)についてですが、MCL39への影響は心配していませんか?
ノリス:まったくないよ。
Q:セッティングについて、エアロバランスに変化があってドライビングが難しくなったりはしませんか?
ノリス:カルロスが言ってた通りで、ちょっとした調整はあるけど、特別なことをやらなきゃいけないような変化は何もない。
Q:ありがとう。それではオリー、次はあなたです。数年前にF2のフィーチャーレースでこのバルセロナで勝ちましたね。まずはこのサーキットについてどう感じているか教えてください。
オリバー・ベアマン:うん、このサーキットは本当にクールだよ。ドライバーとしてたぶん一番多くラップを走ってるコースだと思う。テストはいつもここだし、プレシーズンも冬のテストもだいたいバルセロナになるからね。
だから走り慣れてるコースに戻ってきたって感じだよ。今のセクター3は、昔のシケインがあったときよりも走ってて楽しい。数年前にF2でいいレースができた思い出があるけど、それを再現できるとは思ってない。でも、いい週末になるといいなって思ってる。
Q:クルマの状態については? ここまで8戦して、どんなパフォーマンス特性が見えてきましたか? 今回は競争力があると思いますか?
ベアマン:正直言って、ちょっと困ってる。パフォーマンスが出ると思ってた週末にうまくいかなかったり、逆に厳しいと思ってたところで意外と良かったりするんだ。だから、このクルマの予測がすごく難しいって感じてる。
イモラで新しいアップグレードを入れて、それが今週のような高速コーナーでどう作用するかを見極めたいと思ってる。そこがうまくいけば、今回もクルマとしてはしっかり戦える週末になると思う。
記者からの質問
Q:ランド、先週末はおめでとうございます。シーズンの3分の1が終わりましたが、日曜の夜から回復したあとでこの前半戦を振り返ってみて、うまくいった点と、今後もっと改善できそうな点はどこですか?
ノリス:正直なところ、かなりはっきりしてると思う。自分でも明確にしてるけど、今シーズンは以前よりも難しく感じてる部分がいくつかある。特に土曜日に波があるんだ。
日曜日のレースについては、今シーズンの95%ぐらいはかなり満足してるよ。もちろん、完璧じゃなかったレースもあった。マイアミとかは、振り返ってやり直したいところもあるけど、そういうものだよね。何でもうまくいくわけじゃない。
でも日曜日については常に自信があるし、シーズンを通してその気持ちは変わってない。だから、あとはスタートポジションをもっといい場所にできるようにするだけ。それが一番大きな課題だと思ってる。
だからモナコでは、そこを一番重点的に取り組んでた。勝てるかどうかに直結する部分だからね。
Q:カルロス、ここはホームグランプリで、これまでに一番多くのポイントを獲得しているサーキットでもあります。自分の名前がついたスタンドもありますが、クルマ的にはあまり相性が良くないと言われています。ウィリアムズは、たとえ苦しい週末でもQ3進出やポイントを狙えるレベルに達したと思いますか?
サインツ:うん、一番いい例はモナコかな。僕たちはモナコでもう少し良いパフォーマンスを出せると思ってたけど、予選でのセットアップの選択とかタイヤの準備の仕方でちょっとミスをしてしまって、それが週末全体に響いたんだ。
それでも最終的には9位と10位でフィニッシュして、ポイントをダブルで取れた。でも僕たちはその結果にちょっとがっかりしてた。1年前にウィリアムズに「9位と10位ですよ」って言ってたら、大喜びだったと思う。でも今は違う。もっと上を目指せるってみんな分かってる。
バルセロナは、もしかしたら中国以来で一番難しい週末になるかもしれない。規則変更もあるし、新しい要素もいろいろある。だから週末の展開をしっかり見極める必要があると思ってる。でも、良いレベルで戦える自信はあるよ。とはいえ、紙の上では得意なサーキットとは言えないね。
Q:カルロス、モナコGPの後はポイントを取ったにもかかわらず、かなり落ち込んでいるように見えました。今後のモナコGPをより面白く、もっとレースらしいものにするために、どんな変更を加えるべきだと思いますか?
サインツ:これはドライバー同士で話し合うべきことだと思う。FOMやFIAに提案するアイディアを、僕たちドライバーから出せるようにね。
F1の中で、実際にクルマに乗ってる僕たちほど、レースがどうやって操作できるか、どうやって相手をブロックできるかを理解してる人はいない。3~4秒も遅く走っても、順位を守れてしまう。それが現実。
だからこそ、スポーツのためにも、僕たち全員が一緒に座って、どうすれば少しでも改善できるかを考えるべきだと思う。完璧な答えはないけど、少なくとも「常識的な解決策」は見つかるかもしれない。
今回FIAとFOMは2ストップ制を試してみた。でも、少なくともミッドフィールドでは全然機能しなかった。とはいえ、新しい試みを歓迎する気持ちはある。実験は大切だと思ってる。
でも本当に重要なのは、上から押し付ける形ではなくて、僕たちドライバーも意思決定に加われること。それがスポーツにとってもプラスになると、僕は信じてるよ。
Q:ランド、予選でのパフォーマンスを改善していると話していましたが、実際にはどうやってその作業に取り組んでいるのか教えてもらえますか?
ノリス:いや、それは教えないよ。
Q:カルロス、ウィリアムズに加入して8戦が終わりました。これまでの手応えはどうですか? そしてフェラーリと戦えるようなとき、どれくらい満足感がありますか?
サインツ:この8戦にはすごく満足してるよ。結果にも満足してるし、チームの勢いもすごく良い。1年前、契約にサインしたときに「予選でポールに3コンマ遅れで、フェラーリやレッドブル、メルセデスを上回れる時もあるよ」って言われてたら、もっと早く喜んで契約してたと思う。
チームの方向性はとてもポジティブだし、僕自身の順応も順調だと感じてる。ただ、チャンピオンシップのポイントという意味では、自分のパフォーマンスに見合った数字ではないと思ってる。
でも、今シーズンはポイントそのものにはそこまでこだわってない。自分がどれだけ速く走れているか、マシンとの一体感があるか、クルマの扱いや戦略、週末の進め方をどう改善できるか、そういうところに集中してる。
そこが今の僕らの弱点だと思ってるし、だからポイントがあまりついてこない。でも速ささえあれば、もっとレースを重ねれば結果はついてくると思ってる。
Q:モナコで5秒以上も遅いペースで走るのはスポーツマンシップに欠ける行為だという声もあります。FIAが今後リアルタイムでラップタイムを監視して制限するべきだと思いますか? それと、ジョージがクリアラップを得るためにシケインをショートカットした動きについてはどう思いましたか? あなたなら同じことをしたと思いますか?
ノリス:状況によるかな。モナコは昔から日曜日のレースは良くないって言われてるし、実際そうだった。でも、だからといって価値がないレースではない。みんなが勝ちたいと思ってるし、シーズンで一番楽しみにしてるレースでもある。
これまでで最高のレースと呼ばれるものでも、オーバーテイクはゼロだったりする。それでもモナコが「ベストレース」って言われ続けてるのには意味があると思う。
日曜日の改善については、クルマ側にできることがあると思うけど、それでも限界はある。ストリートサーキットってのは、もともとオーバーテイクが難しい。バクーみたいに2キロのストレートがあれば別だけど、モナコはコース全体でも2キロに満たない。
だから僕としては、あまり大きな変化は必要ないんじゃないかと思ってる。むしろ土曜日をもっとスペシャルなイベントにするべきじゃないかな。ワンラップ予選とかね。
2ストップ制も、それでレースが良くなったかっていうと、むしろチーム戦略に混乱を生んだぐらいだった。ある意味、それも見応えはあったけど、全チームがそういう戦略を考えるべきだったと思うし、もしやらなかったなら、やるべきだった。
だから、僕は今のままでもいいと思ってる。ジョージの件に関しては…彼がやりたいことをやればいいんじゃないかな。
Q:モナコをスプリントイベントにして、予選を2回やるのはどうでしょう?
ノリス:いや、それも違うと思う。やっぱりモナコは、日曜日のレース1本であるからこそ特別なんだと思う。
もちろん、勝てなくても2位や3位、ポイント争いはあるし、展開によっていろんなことが起きる。リスクを取る必要があることもあるし、運が味方することもある。
でも、もっと大きなイベントにしたいなら、土曜日の予選を強調すればいい。レース自体は今のままでいいと思ってる。クルマが今の半分の大きさになれば別かもしれないけどね。
でも、モナコは昔から今のままで、だからこそ意味がある。今のモナコをそのまま楽しめばいいんじゃないかな。
ベアマン:同感だね。統計を見ても、モナコって昔からオーバーテイクが少なかった。今だけじゃない。昔も同じように退屈なレースだったんだよ。
だからこそ、モナコでは土曜日の予選が一番面白いってこと。コースが小さいし、クルマが大きすぎるから、何も起きないのは当たり前。クルマを小さくしてもすべてが解決するとは思わないけど、それでも今よりは良くなるかもしれない。
でも結局は、モナコでは予選が勝負。それが一番の理由で、みんな予選で前に出ようとするんだよ。
サインツ:2人が言ったことに同意するよ。特に付け加えることはないけど、僕はもう少しオープンな姿勢で、日曜日をどうすれば改善できるか考えていきたい。
やっぱりレースがしたいんだよね。スタートでの駆け引き、ピットストップ、オーバーテイクの可能性…そういうプレッシャーがあってこそ、レースは面白い。
予選にもっと価値を持たせるのは賛成だけど、日曜レースの改善も諦めたくはない。正直言って、あの日曜日は本当にひどかった。あれほど遅いスピードでF1マシンを運転したことはなかったよ。
クルマから降りたときに、あそこまでガッカリしたのは初めてだった。ミッドフィールドのドライバーたちは、みんな同じように感じてたと思う。だから、やっぱり何か改善の余地はあると思ってる。
Q:ランド、土曜日に起伏があったと話していましたが、今回モナコのようなトリッキーなコースでポールを取れたことは、予選への自信向上につながりましたか?
ノリス:うん、あそこでも言ったと思うけど、土曜日のポールの方が、日曜日の勝利より嬉しかったんだ。なぜかっていうと、みんなが分かってるように、モナコでは土曜日に結果を出さないといけないから。
しかも、あれほどプレッシャーがかかって、あれほど緊張して、あらゆるミスが致命傷になる中で走るセッションなんて他にない。あれはたぶん今シーズン一番いい予選だったと思う。
だからもちろん、自信はついたよ。でも、それで「もう完璧だ」って思ってるわけじゃない。まだまだ改善すべきことはたくさんあるし、自分がもっと良くできると分かってる部分もある。
でも、それって1週間とか2週間で終わる話じゃない。もっと時間がかかるものなんだ。世界最高のドライバーたちと戦ってるわけだから、それくらい難しくて当然だと思ってる。
だから焦らず、でもできる限り早く取り組みを進めてるよ。モナコで得たポジティブな要素は多かったね。
Q:アレックス・ブルツがモナコのレイアウトに関して3つの変更案を提案していました。みなさんは見ましたか? それがレース改善の解決策になると思いますか?
サインツ:うん、見たよ。彼が提案したのは、ローズヘアピンの入口を広くすること、トンネル後のシケインを少し奥にずらしてきつくすること、あとラスカスの入口をタイトにすることだったと思う。3つの小さな変更だね。
僕の意見では、それで解決できるのは全体の1~5%くらいの問題だけだと思う。もちろん少しは効果があると思うよ。コース幅が広がれば、後ろを走ってるドライバーは少しプレッシャーをかけられるかもしれない。
でも、今のクルマはあまりにも大きいし、ドライバーがコースの真ん中にクルマを置いて30km/hで走ったら、絶対に抜けない。だから、ルールじゃなくて根本的な問題なんだ。
だから小さな変更では、劇的な改善は見込めないと思う。
Q:ランド、もし今週末勝てば再びチャンピオンシップの主導権を握ることになります。そのことはどれくらい重要ですか? そしてタイトル争いはあなたとオスカーの2人に絞られたと感じますか? それともマックスはまだ脅威ですか?
ノリス:これ、毎週聞かれてる気がする(笑)。答えは毎回同じなんだけどね。
もちろん、ポイントリーダーになるのは良い気分だよ。でも、それが僕の普段の仕事や姿勢を変えることは何もない。努力の仕方も、目指すことも変わらない。スペインでも勝ちたいし、モントリオールでもオーストリアでも勝ちたいと思ってる。それだけ。
それが今何位かってこととは関係ないし、関係なく頑張ってる。あと、「僕とオスカーだけの争いだ」なんて思ってる人がいたら、それはちょっとナイーブすぎると思うよ。
マックスだってまだ優勝できる。フェラーリはフェラーリだし、今後シーズンが進むにつれて強くなると思う。
それに、僕たちは毎週末マックスと戦ってるんだ。彼は表彰台にも何度も乗ってるし、レースにも勝ってる。イモラでは完全に彼の方が速かった。
だから、「もうマックスは関係ない」なんて思う理由は何もないよ。
Q:カルロス、カート時代にアレックス・パロウとレースしていましたよね。彼はF1に来るだけの実力があると思いますか?
サインツ:絶対にあると思う。インディ500で勝てるようなドライバーなら、F1でもチャンスを与えられるべきだと思うし、それにふさわしいと思う。
彼、マクラーレンのクルマでテストしたことあったよね? FP1も走ってたと思うけど。
ノリス:たぶんオースティンで走ったよね。
サインツ:うん。僕は彼のこと、カデット時代にチームメイトとしてすごく高く評価してたんだ。カートでは本当に速かったしね。でも、アメリカでやってることは、それ以上にすごい。
あそこまで支配的な活躍を見せるには、本当に才能がないと無理だから。もちろんF1とはまったく違う世界だけど、それでも彼のやっていることには敬意と尊敬しかないよ。
カテゴリー: F1 / F1スペインGP / F1ドライバー