佐藤琢磨、次戦に意気込み 「レースに挑む準備は整っています!」
佐藤琢磨が、2018年のインディカー開幕戦セントピーターズバーグでのレース週末を振り返った。
インディカー・シリーズで9シーズン目を迎えた佐藤琢磨の開幕戦は、あまりいい滑り出しとはいえなかった。しかし、状況は尻上がりによくなっていき、予選以降は5位以内の入賞が確実視されるようになる。
ところが不運な事故が発生し、コントロールを失ったスコット・ディクソンによって上位進出が期待された佐藤琢磨のレースは台無しにされてしまう。12位という最終結果はそれほど悪いものではないが、佐藤琢磨にとってはもっと上位でフィニッシュして当然のレースだった。
今回のセントピーターズバーグは、マニュファクチュアラーが開発したエアロキットが姿を消し、新たな空力パーツを得たダラーラのインディカー・マシンで競われる最初の戦いでもあった。そして佐藤琢磨にとっては、2012年以来、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングから挑む久しぶりのレースとなった。
「大きな期待を抱いていました」と佐藤琢磨は語る。「その気持ちは、僕も、チームも、そしてファンの方々にとっても同じだったはずです。ニューカーを走らせるという意味では誰もがまったく同じ条件。しかも、そのスタイリングはとてもロー&ワイドで、かつてのレーシングカーを彷彿とさせるものでした。実際に目の当たりにすると本当に美しいですよ。また、新しいマシンに切り替わったことで誰にでも平等にチャンスが訪れました。マニファクチュアラーがエアロキットの性能を競い合っていた当時は、いっぽうに有利で他方には不利な状況でしたが、そうした不公平は一掃されました。ホンダ陣営の僕たちにとって、最大の困難はショートオーバルのレースで、次にロードコースを苦手としていましたが、反対にスーパースピードウェイでは高い性能を発揮していました」
「レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに復帰したことも、僕にとってはとても大きなチャンスとなりました。2012年以降、チームと僕は別々の道を歩んできましたが、ボビー・レイホールとマイク・ラニガンはいつも僕を精一杯支援してくれました。その間、僕はAJフォイトで4シーズン、アンドレッティで1シーズンを過ごしましたが、僕たちはコミュニケーションを絶やすことなく、ボビーはチームに戻ってきて欲しいといつも言ってくれました。過去数年、チームは素晴らしいスピードを示してきたので、僕にとっては完璧な組み合わせです。ワンカー・チームに過ぎないのに、グレアム・レイホールはホンダのドライバーとして常にトップグループに位置していたことは驚異的といえます。もちろんグレアムはいいドライバーですが、チームの実力はとても印象的でした」
チームに復帰した佐藤琢磨は、2018年のシーズン前にショートオーバルのフェニックスで行なわれたテストで目の覚めるような走りを披露する。佐藤琢磨はここでオーバーオールのトップに立つと、バーバー・モータースポーツ・パークでもセブリングでも好調を維持した。この結果、チームは大いなる自信を抱いてセントピーターズバーグでの市街地レースに臨むこととなった。
しかし、最初のフリープラクティスは散々な結果に終わる。24台中、佐藤琢磨の順位は22番手。
「僕たちはイニシャル・セットアップの判断でミスを冒しました。スイートスポットを完全に外していて、その修正に長い時間と多くの周回数を費やすことになります。最悪の状況でした」
ところが、ここから彼らは見違えるような挽回劇を演じる。金曜日に行なわれた2回目のセッションで10番手になると、土曜日の午前中には9番手に食い込んだのである。
「1セッション分の遅れをとっているような気がしていましたが、週末を通じて僕たちは徐々に遅れを取り戻し、マシンは次第に調子を上げていきました」
「インディカー・シリーズは今シーズンのマシンでダウンフォースの20%削減を目指していました。昨年のエアロパッケージはとても洗練されたものでしたが、今年、シリーズはマシンの上側で発生されるダウンフォースを減らすいっぽう、ボディ下面で生み出すダウンフォースは増やす方針を立てていました。おかげでレースはより接近戦となり、ドライバーはコクピットのなかで忙しい思いをすることになります。僕たちはこれに反対な訳ではありませんが、ダウンフォースが20%も減るとドラッグも急激に低下します。このためストレートスピードは10%以上も速くなり、コーナーへの到達速度は15~20mph(約24~32km/h)も上がります。ドラッグが大きいとスロットルペダルを戻しただけでも急減速しますが、いまではほとんどスピードが落ちずに進んでいく状態です! おかげでトップスピードはこれまでよりも上がり、しかも早めにブレーキングするようになったため、とてもチャレンジングになりました。また、セントピーターズバーグのターン3は、難しいながらもこれまではフラットアウトで走り抜けることが可能でしたが、いまでは全開で駆け抜けるのは困難な状態に変わっています。ここはハイスピードコーナーで、とても面白いところです。そしていたるところでマシンがスライドするようになったので、操るのがとにかく忙しい。また、去年のセットアップは流用ができなくなりました」
それでもフリープラクティスが終わるまでには状況が好転し始めたが、佐藤琢磨自身は「自分たちのマシンに完全に満足していたわけでも自信を抱いていたわけでもありません。恐らく苦しい予選になるでしょう」と予想していた。
ところが、予選は嬉しい驚きとでもいうべき展開になる。最初のセグメントで、佐藤琢磨はセバスチャン・ブールデを1万分の7秒差で凌いで予選グループの6番手となり、第2セグメントに進出する最後のチケットを手に入れた。ここで5番手に食い込んだ佐藤琢磨はファイアストン・ファスト6に駒を進め、5番グリッドを獲得する。
「各セグメントをギリギリのところで通過しました。ラッキーにも予選を戦い続けることができたのです。セグメントごとに僕たちはマシンを修正し、持てるポテンシャルを出し切りました。最後のセッションでは雨がぱらつきました。このため最終ターンから第1ターンと第2ターンまではしっかりと濡れていましたが、コースのほかの部分は乾き始めていました。僕たちのセットアップはややコンサバすぎたようで、ドライのセクションではタイムを大きくロスしました。もしもQ2と同じセットアップを使っていれば、フロントロウを狙えたかもしれませんが、条件は誰にとっても同じでした。また、今回の予選ではルーキーが大活躍し、ポールポジションのほか、3番グリッドと4番グリッドを獲得しました」
決勝日の朝に行われたウォームアップではまたも後退を余儀なくされ、佐藤琢磨とチームメイトのレイホールは揃って下位に沈み込んだ。これは、マシンのスライドを抑え込み、タイアを持たせるようにするセットアップに変更した影響だったが、佐藤琢磨によれば「ただただ遅かった。僕たちはマシンを大幅に変更する必要に迫られ、僕のマシンは予選とほとんど変わらないセットアップに戻しました」という。
決勝のスタートでは、上位4グリッドからスタートした3人のルーキーがクリーンな滑り出しを決めたいっぽうで、長い経験を誇るウィル・パワーは2番グリッドからスタートしながらターン2でスピンを喫してしまう。
「ウィルとはうまくやっていたので、このときは『ダメだ、ウィル! それはダメだ!』と思っていました」 佐藤琢磨はそう語ると笑い声を上げた。「幸運にも、誰も彼と接触しなくて済みましたし、ダメージもありませんでした」 これで佐藤琢磨は4番手に浮上。レース序盤にはジェイムズ・ヒンチクリフやアレクサンダー・ロッシに抜かれたが、ほどなくヒントクリフを攻略し、続いてマテウス・ライストがトラブルに遭遇すると、佐藤琢磨は4番手に返り咲く。その後、グリーン中にピットストップしたことで中団に転落したが、佐藤琢磨は好調で、コーション後の34周目にリスタートが切られると実質的な5番手まで順位を戻していた。
佐藤琢磨はターン4でスコット・ディクソンを鮮やかに攻略したが、皮肉にもこのオーバーテイクは帳消しになってしまう。続いてヒンチクリフもニュージーランド人ドライバーをパス。そこでディクソンは次のラップのターン1でヒンチクリフに襲いかかる。ディクソンはヒンチクリフを豪快にイン側からパスしたように見えたが、減速しきれずにコントロールを失い、何の罪もない佐藤琢磨に追突。ここで佐藤琢磨はスピンに追い込まれたうえに、タイアがパンクする不運に見舞われる。
「ディクソンとはいいレースを戦っていました」と佐藤琢磨。「ターン4でディクソンをパスしたとき、彼にはもう少しスペースを明けておきたいと思っていましたが、マシンのグリップレベルは驚くほど低い状態でした! でも、僕は状況に満足していたし、すべてうまくいっているように思っていました。その後、“ディクシー”は“ヒンチ”に襲いかかったようですが、ヒンチの脇を通り抜けて僕に追突してきました。追突の衝撃はすさまじく、このため接触した瞬間に彼のマシンは宙に浮き上がってしまうほどでした。おかげで僕はスピンに追い込まれたのです」
パンクしたタイアはその後のイエロー・コーション中にピットで交換されたので、No.30のマシンは周回遅れにならずに済んだが、しかしディフューザーを始めとするエアロパーツがダメージを負っていたため、佐藤琢磨は2~300ポンド(およそ100~150kg)ものダウンフォースを失うこととなる。
「レースを戦い続けられたのは幸運でした。僕たちはレース戦略が効を奏することを期待していました。そうそう、ボビー・レイホールがふたたびピットスタンドに立ち、僕にレースの指示をしてくれたことは本当に素晴らしいと思います。なにしろ、彼の声が僕の耳のなかに響いていたのですから!」
RLLRチームは給油量を少なくするレース戦略を選択。しかし、レース終盤までイエロー・コーションとならなかったため、この戦略が報われることはなかった。最後のコーションが終わると、レースは2ラップを残して再開。このとき、佐藤琢磨は14番手につけていたが、長らくレースをリードしていたロバート・ウィッケンズが不運なクラッシュで遅れたほか、佐藤琢磨はギャビー・シェイヴスの攻略に成功。12位でチェッカードフラッグを受けた。
「残念です。それでも、僕たちにとってはいい週末だったと思います。また、グレアムのレース戦略は素晴らしいものでした。なにしろ、後方グリッドからスタートして2位でフィニッシュしたのですから。チームにとっては最高の結果でした。もちろん、僕のレースも同じような展開になればよかったのですが、今回は多くのことを学びましたし、週末を通じてポジティブに思えることがたくさんありました。だから、次戦がいいレースになることを期待しています」
オーバルコースのフェニックスで開催される第2戦はおよそ1ヵ月先のことだが、それまで佐藤琢磨はテストのため忙しい日々を過ごすことになる。まず、今週後半はファイアストンのタイアテストのためテキサス・モーター・スピードウェイを訪れ、続いてはバーバー・モータースポーツ・パークで行なわれるインディカーのオープン・テストに参加。さらにインディアナポリスのロードコースとオーバルコースでもテストが行なわれる。
「フェニックスのレースはとても楽しみです」と佐藤琢磨。「ショートオーバルではいつも素晴らしいレースを戦ってきましたが、これまでフェニックスにはいい思い出がありませんでした。しかし、今年のシーズン前テストは違いました! 難しい戦いになるのは間違いありませんが、レースに挑む準備は整っています!」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨
インディカー・シリーズで9シーズン目を迎えた佐藤琢磨の開幕戦は、あまりいい滑り出しとはいえなかった。しかし、状況は尻上がりによくなっていき、予選以降は5位以内の入賞が確実視されるようになる。
ところが不運な事故が発生し、コントロールを失ったスコット・ディクソンによって上位進出が期待された佐藤琢磨のレースは台無しにされてしまう。12位という最終結果はそれほど悪いものではないが、佐藤琢磨にとってはもっと上位でフィニッシュして当然のレースだった。
今回のセントピーターズバーグは、マニュファクチュアラーが開発したエアロキットが姿を消し、新たな空力パーツを得たダラーラのインディカー・マシンで競われる最初の戦いでもあった。そして佐藤琢磨にとっては、2012年以来、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングから挑む久しぶりのレースとなった。
「大きな期待を抱いていました」と佐藤琢磨は語る。「その気持ちは、僕も、チームも、そしてファンの方々にとっても同じだったはずです。ニューカーを走らせるという意味では誰もがまったく同じ条件。しかも、そのスタイリングはとてもロー&ワイドで、かつてのレーシングカーを彷彿とさせるものでした。実際に目の当たりにすると本当に美しいですよ。また、新しいマシンに切り替わったことで誰にでも平等にチャンスが訪れました。マニファクチュアラーがエアロキットの性能を競い合っていた当時は、いっぽうに有利で他方には不利な状況でしたが、そうした不公平は一掃されました。ホンダ陣営の僕たちにとって、最大の困難はショートオーバルのレースで、次にロードコースを苦手としていましたが、反対にスーパースピードウェイでは高い性能を発揮していました」
「レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに復帰したことも、僕にとってはとても大きなチャンスとなりました。2012年以降、チームと僕は別々の道を歩んできましたが、ボビー・レイホールとマイク・ラニガンはいつも僕を精一杯支援してくれました。その間、僕はAJフォイトで4シーズン、アンドレッティで1シーズンを過ごしましたが、僕たちはコミュニケーションを絶やすことなく、ボビーはチームに戻ってきて欲しいといつも言ってくれました。過去数年、チームは素晴らしいスピードを示してきたので、僕にとっては完璧な組み合わせです。ワンカー・チームに過ぎないのに、グレアム・レイホールはホンダのドライバーとして常にトップグループに位置していたことは驚異的といえます。もちろんグレアムはいいドライバーですが、チームの実力はとても印象的でした」
チームに復帰した佐藤琢磨は、2018年のシーズン前にショートオーバルのフェニックスで行なわれたテストで目の覚めるような走りを披露する。佐藤琢磨はここでオーバーオールのトップに立つと、バーバー・モータースポーツ・パークでもセブリングでも好調を維持した。この結果、チームは大いなる自信を抱いてセントピーターズバーグでの市街地レースに臨むこととなった。
しかし、最初のフリープラクティスは散々な結果に終わる。24台中、佐藤琢磨の順位は22番手。
「僕たちはイニシャル・セットアップの判断でミスを冒しました。スイートスポットを完全に外していて、その修正に長い時間と多くの周回数を費やすことになります。最悪の状況でした」
ところが、ここから彼らは見違えるような挽回劇を演じる。金曜日に行なわれた2回目のセッションで10番手になると、土曜日の午前中には9番手に食い込んだのである。
「1セッション分の遅れをとっているような気がしていましたが、週末を通じて僕たちは徐々に遅れを取り戻し、マシンは次第に調子を上げていきました」
「インディカー・シリーズは今シーズンのマシンでダウンフォースの20%削減を目指していました。昨年のエアロパッケージはとても洗練されたものでしたが、今年、シリーズはマシンの上側で発生されるダウンフォースを減らすいっぽう、ボディ下面で生み出すダウンフォースは増やす方針を立てていました。おかげでレースはより接近戦となり、ドライバーはコクピットのなかで忙しい思いをすることになります。僕たちはこれに反対な訳ではありませんが、ダウンフォースが20%も減るとドラッグも急激に低下します。このためストレートスピードは10%以上も速くなり、コーナーへの到達速度は15~20mph(約24~32km/h)も上がります。ドラッグが大きいとスロットルペダルを戻しただけでも急減速しますが、いまではほとんどスピードが落ちずに進んでいく状態です! おかげでトップスピードはこれまでよりも上がり、しかも早めにブレーキングするようになったため、とてもチャレンジングになりました。また、セントピーターズバーグのターン3は、難しいながらもこれまではフラットアウトで走り抜けることが可能でしたが、いまでは全開で駆け抜けるのは困難な状態に変わっています。ここはハイスピードコーナーで、とても面白いところです。そしていたるところでマシンがスライドするようになったので、操るのがとにかく忙しい。また、去年のセットアップは流用ができなくなりました」
それでもフリープラクティスが終わるまでには状況が好転し始めたが、佐藤琢磨自身は「自分たちのマシンに完全に満足していたわけでも自信を抱いていたわけでもありません。恐らく苦しい予選になるでしょう」と予想していた。
ところが、予選は嬉しい驚きとでもいうべき展開になる。最初のセグメントで、佐藤琢磨はセバスチャン・ブールデを1万分の7秒差で凌いで予選グループの6番手となり、第2セグメントに進出する最後のチケットを手に入れた。ここで5番手に食い込んだ佐藤琢磨はファイアストン・ファスト6に駒を進め、5番グリッドを獲得する。
「各セグメントをギリギリのところで通過しました。ラッキーにも予選を戦い続けることができたのです。セグメントごとに僕たちはマシンを修正し、持てるポテンシャルを出し切りました。最後のセッションでは雨がぱらつきました。このため最終ターンから第1ターンと第2ターンまではしっかりと濡れていましたが、コースのほかの部分は乾き始めていました。僕たちのセットアップはややコンサバすぎたようで、ドライのセクションではタイムを大きくロスしました。もしもQ2と同じセットアップを使っていれば、フロントロウを狙えたかもしれませんが、条件は誰にとっても同じでした。また、今回の予選ではルーキーが大活躍し、ポールポジションのほか、3番グリッドと4番グリッドを獲得しました」
決勝日の朝に行われたウォームアップではまたも後退を余儀なくされ、佐藤琢磨とチームメイトのレイホールは揃って下位に沈み込んだ。これは、マシンのスライドを抑え込み、タイアを持たせるようにするセットアップに変更した影響だったが、佐藤琢磨によれば「ただただ遅かった。僕たちはマシンを大幅に変更する必要に迫られ、僕のマシンは予選とほとんど変わらないセットアップに戻しました」という。
決勝のスタートでは、上位4グリッドからスタートした3人のルーキーがクリーンな滑り出しを決めたいっぽうで、長い経験を誇るウィル・パワーは2番グリッドからスタートしながらターン2でスピンを喫してしまう。
「ウィルとはうまくやっていたので、このときは『ダメだ、ウィル! それはダメだ!』と思っていました」 佐藤琢磨はそう語ると笑い声を上げた。「幸運にも、誰も彼と接触しなくて済みましたし、ダメージもありませんでした」 これで佐藤琢磨は4番手に浮上。レース序盤にはジェイムズ・ヒンチクリフやアレクサンダー・ロッシに抜かれたが、ほどなくヒントクリフを攻略し、続いてマテウス・ライストがトラブルに遭遇すると、佐藤琢磨は4番手に返り咲く。その後、グリーン中にピットストップしたことで中団に転落したが、佐藤琢磨は好調で、コーション後の34周目にリスタートが切られると実質的な5番手まで順位を戻していた。
佐藤琢磨はターン4でスコット・ディクソンを鮮やかに攻略したが、皮肉にもこのオーバーテイクは帳消しになってしまう。続いてヒンチクリフもニュージーランド人ドライバーをパス。そこでディクソンは次のラップのターン1でヒンチクリフに襲いかかる。ディクソンはヒンチクリフを豪快にイン側からパスしたように見えたが、減速しきれずにコントロールを失い、何の罪もない佐藤琢磨に追突。ここで佐藤琢磨はスピンに追い込まれたうえに、タイアがパンクする不運に見舞われる。
「ディクソンとはいいレースを戦っていました」と佐藤琢磨。「ターン4でディクソンをパスしたとき、彼にはもう少しスペースを明けておきたいと思っていましたが、マシンのグリップレベルは驚くほど低い状態でした! でも、僕は状況に満足していたし、すべてうまくいっているように思っていました。その後、“ディクシー”は“ヒンチ”に襲いかかったようですが、ヒンチの脇を通り抜けて僕に追突してきました。追突の衝撃はすさまじく、このため接触した瞬間に彼のマシンは宙に浮き上がってしまうほどでした。おかげで僕はスピンに追い込まれたのです」
パンクしたタイアはその後のイエロー・コーション中にピットで交換されたので、No.30のマシンは周回遅れにならずに済んだが、しかしディフューザーを始めとするエアロパーツがダメージを負っていたため、佐藤琢磨は2~300ポンド(およそ100~150kg)ものダウンフォースを失うこととなる。
「レースを戦い続けられたのは幸運でした。僕たちはレース戦略が効を奏することを期待していました。そうそう、ボビー・レイホールがふたたびピットスタンドに立ち、僕にレースの指示をしてくれたことは本当に素晴らしいと思います。なにしろ、彼の声が僕の耳のなかに響いていたのですから!」
RLLRチームは給油量を少なくするレース戦略を選択。しかし、レース終盤までイエロー・コーションとならなかったため、この戦略が報われることはなかった。最後のコーションが終わると、レースは2ラップを残して再開。このとき、佐藤琢磨は14番手につけていたが、長らくレースをリードしていたロバート・ウィッケンズが不運なクラッシュで遅れたほか、佐藤琢磨はギャビー・シェイヴスの攻略に成功。12位でチェッカードフラッグを受けた。
「残念です。それでも、僕たちにとってはいい週末だったと思います。また、グレアムのレース戦略は素晴らしいものでした。なにしろ、後方グリッドからスタートして2位でフィニッシュしたのですから。チームにとっては最高の結果でした。もちろん、僕のレースも同じような展開になればよかったのですが、今回は多くのことを学びましたし、週末を通じてポジティブに思えることがたくさんありました。だから、次戦がいいレースになることを期待しています」
オーバルコースのフェニックスで開催される第2戦はおよそ1ヵ月先のことだが、それまで佐藤琢磨はテストのため忙しい日々を過ごすことになる。まず、今週後半はファイアストンのタイアテストのためテキサス・モーター・スピードウェイを訪れ、続いてはバーバー・モータースポーツ・パークで行なわれるインディカーのオープン・テストに参加。さらにインディアナポリスのロードコースとオーバルコースでもテストが行なわれる。
「フェニックスのレースはとても楽しみです」と佐藤琢磨。「ショートオーバルではいつも素晴らしいレースを戦ってきましたが、これまでフェニックスにはいい思い出がありませんでした。しかし、今年のシーズン前テストは違いました! 難しい戦いになるのは間違いありませんが、レースに挑む準備は整っています!」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨