佐藤琢磨 「ミッドオハイオには新鮮な気持ちで臨みたい」
佐藤琢磨が、ダブルヘッダーで開催されたトロントのレース週末を振り返った。
佐藤琢磨は、レース1はメカニカル・トラブルにより、そしてレース2はレース終盤のアクシデントに巻き込まれる形で、いずれもリタイアに終わった。
カナダの市街地コースでは、目を見張るようなスピードをこれまでに何度も見せつけてきた佐藤琢磨だが、残念ながらそれに見合った成績を収めたことはまだない。
佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングにとっては今回も同様で、ダラーラ・ホンダを流れに乗せることはできなかった。
「とても難しい週末でしたし、ひどく落胆しました」と佐藤琢磨。
「トロントのコースは好きですし、街全体も気に入っています。トロントはエネルギーに溢れているほか、コースには長い歴史があるだけあってファンも熱心。本当に素晴らしいところですよ。ただし、コースはいささかトリッキーです。それもバンプが多いだけではなく、舗装が様々に変化していき、すべてのコーナーが2種類もしくは3種類の舗装で覆われているのです。今年は何ヵ所かのアペックスにコンクリートのパッチが新たに設けられましたが、これがものすごく滑ります。前輪がこのパッチに乗ればアンダーステアになり、後輪もこのパッチに乗ると4輪ともアウトに流れます。続いて前輪がグリップのいいアスファルトに乗ると今度はオーバーステアになるという具合です」
「これまでこのコースでは、運が悪かったり、はたまた細かなトラブルが発生したりと、何かしらが起きました。けれども、僕たちのチームは市街地でも高いパフォーマンスを示してきたので、今回は大きな期待を抱いてレースウィークを迎えました」
ところがプラクティスが始まると、早くも雲行きが怪しくなってくる。
「それほどひどくはありませんでしたが、よくもありませんでした。今回はダブルヘッダーだったこともあり、予選を迎えるまでには90分間のセッションが1度実施されるだけでした。このため、走り出しの段階からベースライン・セットアップの仕上がりがいいことが求められます。けれども、残念ながら僕たちの持ち込んだパッケージは良好とはいえなかったので、方針を大胆に見直し、いくつかの変更を行うこととなりました」
「ダブルヘッダーレースでは、マシンが良ければそのまま安定した成績を残せますが、そうでなかった場合には悪夢のような週末となります。けれども、僕たちは徐々に状況を改善していきました」
事実、佐藤琢磨は最初の予選セッションでグループ内の3番手につけたうえ、ポイントリーダーであるエリオ・カストロネベスを凌ぎ、第2セグメントに進出した。だが、ここで佐藤琢磨はアクシデントを起こしてしまう。このため、11番手のタイムを記録していたにもかかわらず、赤旗の原因を作ったことを理由にベストタイムがふたつ削除され、予選は12位とされた。ただし、あるドライバーにエンジン交換に伴う10グリッドダウン・ペナルティが科せられた結果、佐藤琢磨は11番グリッドからスタートすることになる。
「プラクティスでのクルマはあまり速くなかったので、セットアップを変更して予選に挑みました。ターン1のブレーキングポイントはものすごくバンピーです。クルマはプラクティスでもターン1でボトミングしていましたが、オルタネートのレッドタイヤでは大幅にスピードが向上することもあり、予選ではこれが一段とひどくなってしまったのです。アタックラップでは完全に底を打ち付けて、ボートに乗っているようになってしまいました。それによって僕はフロントのグリップを完全に失い、そのままバリアに接触してしまいましたが、少なくともセッティングの方向性が間違っていないことは確認できました」
レース2ではレース1と異なる予選フォーマットが採用された。ドライバーがふたつのグループに分割されるのはレース1と同じだが、1回だけのセッションで最終的なスターティンググリッドが決まる。
佐藤琢磨は自分のグループで8番手となったが、またも順位がひとつ繰り上げになり、14番グリッドから出走することになった。
「いろいろな変更を行った結果、クルマは少しよくなりました。ただし、誰もが速くなっていたので、相対的にはやや遅くなっていました。基本的なスピードがまだ不足していたため、レース1に向けてさらに改良を図る必要がありました」
レース1で予定されていたスタンディングスタートは、ジョセフ・ニューガーデンがエンジンをストールさせたことで実施が延期された。当初10番手を走っていた琢磨は、その後、大きく順位を落としてしまう。ピットストップが始まると佐藤琢磨は4番手までポジションを上げたが、間もなく、琢磨をリタイアに追い込むトラブルが発生する。
「スタンディングスタートを本当に楽しみにしていたので、延期になったのは残念でした。決勝では、徐々にリズムを掴んでいきましたが、エグゾーストパイプが壊れたことで苦しむようになります。排ガスが、車体のカーボン製カバーを焼き焦がしてしまったのです。それによってギアボックスをコントロールするエアラインを焼き切ってしまい、ギアが2速にスタックしてしまったため、僕にはどうすることもできず、リタイアに追い込まれました」
「まずはレースで完走して少しでも多くのポイント獲得したかったのですが、それはかないませんでした」
レース2に向けたウォームアップ・セッションで佐藤琢磨は8番手をマーク。そして待望のスタンディング・スタートを迎えることになる。
「レース2までに大幅なセットアップ変更を行いました。すべてのデータを見直し、異なる方向性に進むことにしました。これでクルマのパフォーマンスは向上し、スピードも上がって安定性も高まりました」
「今度はスタンディングスタートを楽しむことができました。いつもとは異なるスタートで楽しかったですね。いくつかポジションをあげることにも成功しました」
佐藤琢磨はスタートで実に4つも順位を上げて10番手になると、さらにシモーナ・デ・シルヴェストロやアレックス・タグリアーニをパスした。
最初のピットストップが終わったとき、佐藤琢磨は7番手まで駒を進めていた。いっぽう、2回目のピットストップではダリオ・フランキッティの先行を許したほか、ジャスティン・ウィルソンやチャーリー・キンボールにも攻略され、10番手へと後退する。
最後のリスタートでは9番手に浮上したが、最終ラップの1周前にターン1出口で起きたアクシデントを避けきれず、佐藤琢磨のマシンは大きなダメージを負ってしまう。
「レース終盤までコーションは出なかったので、比較的平穏なレースだったといえます。このときは混乱もありました。通常、ラスト10周のリスタートに関しては、タイヤカスなど、コースを清掃する時間がないので、ダブルファイルではなく、1列に並んでリスタートを切ることになっています。ところが、このときはレースも残り数周だったというのに、オフィシャルは2列に整列してからリスタートすることを決めます。これが混乱を招くことになったのです」
「スタート・フィニッシュ・ラインにやってきたときには6台ほどが横並びになり、あらゆるところをマシンが走っている状態になりました。でも、ターン1はとてもタイトなので、カオスになるのは目に見えていました。僕は慎重にコーナーに進入し、すべてコントロールできていると思いましたが、ウィル・パワーとライアン・ハンター-レイの接触が引き金となって、玉突きのような事故が起こりました。そして僕の行く手は完全にふさがれ、フルブレーキングで回避を試みましたが、残念ながら抜け出すことはできませんでした」
佐藤琢磨は9番手を走行していながら、完走への望みが絶たれることになった。
「セッティングを見直したおかげで、間違いなくトップ10でフィニッシュできそうな状況でした。これだったら予選でもずっといい成績が残せたことでしょう。できれば、この勢いを残る市街地コースでのレースでも発揮したいものです」
「これからミルウォーキーに行って新作映画“ターボ”を観た後、日本とモナコで休暇を過ごします。ここまでたくさん旅してきましたが、ミッドオハイオには新鮮な気持ちで臨みたいと思います!」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー
佐藤琢磨は、レース1はメカニカル・トラブルにより、そしてレース2はレース終盤のアクシデントに巻き込まれる形で、いずれもリタイアに終わった。
カナダの市街地コースでは、目を見張るようなスピードをこれまでに何度も見せつけてきた佐藤琢磨だが、残念ながらそれに見合った成績を収めたことはまだない。
佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングにとっては今回も同様で、ダラーラ・ホンダを流れに乗せることはできなかった。
「とても難しい週末でしたし、ひどく落胆しました」と佐藤琢磨。
「トロントのコースは好きですし、街全体も気に入っています。トロントはエネルギーに溢れているほか、コースには長い歴史があるだけあってファンも熱心。本当に素晴らしいところですよ。ただし、コースはいささかトリッキーです。それもバンプが多いだけではなく、舗装が様々に変化していき、すべてのコーナーが2種類もしくは3種類の舗装で覆われているのです。今年は何ヵ所かのアペックスにコンクリートのパッチが新たに設けられましたが、これがものすごく滑ります。前輪がこのパッチに乗ればアンダーステアになり、後輪もこのパッチに乗ると4輪ともアウトに流れます。続いて前輪がグリップのいいアスファルトに乗ると今度はオーバーステアになるという具合です」
「これまでこのコースでは、運が悪かったり、はたまた細かなトラブルが発生したりと、何かしらが起きました。けれども、僕たちのチームは市街地でも高いパフォーマンスを示してきたので、今回は大きな期待を抱いてレースウィークを迎えました」
ところがプラクティスが始まると、早くも雲行きが怪しくなってくる。
「それほどひどくはありませんでしたが、よくもありませんでした。今回はダブルヘッダーだったこともあり、予選を迎えるまでには90分間のセッションが1度実施されるだけでした。このため、走り出しの段階からベースライン・セットアップの仕上がりがいいことが求められます。けれども、残念ながら僕たちの持ち込んだパッケージは良好とはいえなかったので、方針を大胆に見直し、いくつかの変更を行うこととなりました」
「ダブルヘッダーレースでは、マシンが良ければそのまま安定した成績を残せますが、そうでなかった場合には悪夢のような週末となります。けれども、僕たちは徐々に状況を改善していきました」
事実、佐藤琢磨は最初の予選セッションでグループ内の3番手につけたうえ、ポイントリーダーであるエリオ・カストロネベスを凌ぎ、第2セグメントに進出した。だが、ここで佐藤琢磨はアクシデントを起こしてしまう。このため、11番手のタイムを記録していたにもかかわらず、赤旗の原因を作ったことを理由にベストタイムがふたつ削除され、予選は12位とされた。ただし、あるドライバーにエンジン交換に伴う10グリッドダウン・ペナルティが科せられた結果、佐藤琢磨は11番グリッドからスタートすることになる。
「プラクティスでのクルマはあまり速くなかったので、セットアップを変更して予選に挑みました。ターン1のブレーキングポイントはものすごくバンピーです。クルマはプラクティスでもターン1でボトミングしていましたが、オルタネートのレッドタイヤでは大幅にスピードが向上することもあり、予選ではこれが一段とひどくなってしまったのです。アタックラップでは完全に底を打ち付けて、ボートに乗っているようになってしまいました。それによって僕はフロントのグリップを完全に失い、そのままバリアに接触してしまいましたが、少なくともセッティングの方向性が間違っていないことは確認できました」
レース2ではレース1と異なる予選フォーマットが採用された。ドライバーがふたつのグループに分割されるのはレース1と同じだが、1回だけのセッションで最終的なスターティンググリッドが決まる。
佐藤琢磨は自分のグループで8番手となったが、またも順位がひとつ繰り上げになり、14番グリッドから出走することになった。
「いろいろな変更を行った結果、クルマは少しよくなりました。ただし、誰もが速くなっていたので、相対的にはやや遅くなっていました。基本的なスピードがまだ不足していたため、レース1に向けてさらに改良を図る必要がありました」
レース1で予定されていたスタンディングスタートは、ジョセフ・ニューガーデンがエンジンをストールさせたことで実施が延期された。当初10番手を走っていた琢磨は、その後、大きく順位を落としてしまう。ピットストップが始まると佐藤琢磨は4番手までポジションを上げたが、間もなく、琢磨をリタイアに追い込むトラブルが発生する。
「スタンディングスタートを本当に楽しみにしていたので、延期になったのは残念でした。決勝では、徐々にリズムを掴んでいきましたが、エグゾーストパイプが壊れたことで苦しむようになります。排ガスが、車体のカーボン製カバーを焼き焦がしてしまったのです。それによってギアボックスをコントロールするエアラインを焼き切ってしまい、ギアが2速にスタックしてしまったため、僕にはどうすることもできず、リタイアに追い込まれました」
「まずはレースで完走して少しでも多くのポイント獲得したかったのですが、それはかないませんでした」
レース2に向けたウォームアップ・セッションで佐藤琢磨は8番手をマーク。そして待望のスタンディング・スタートを迎えることになる。
「レース2までに大幅なセットアップ変更を行いました。すべてのデータを見直し、異なる方向性に進むことにしました。これでクルマのパフォーマンスは向上し、スピードも上がって安定性も高まりました」
「今度はスタンディングスタートを楽しむことができました。いつもとは異なるスタートで楽しかったですね。いくつかポジションをあげることにも成功しました」
佐藤琢磨はスタートで実に4つも順位を上げて10番手になると、さらにシモーナ・デ・シルヴェストロやアレックス・タグリアーニをパスした。
最初のピットストップが終わったとき、佐藤琢磨は7番手まで駒を進めていた。いっぽう、2回目のピットストップではダリオ・フランキッティの先行を許したほか、ジャスティン・ウィルソンやチャーリー・キンボールにも攻略され、10番手へと後退する。
最後のリスタートでは9番手に浮上したが、最終ラップの1周前にターン1出口で起きたアクシデントを避けきれず、佐藤琢磨のマシンは大きなダメージを負ってしまう。
「レース終盤までコーションは出なかったので、比較的平穏なレースだったといえます。このときは混乱もありました。通常、ラスト10周のリスタートに関しては、タイヤカスなど、コースを清掃する時間がないので、ダブルファイルではなく、1列に並んでリスタートを切ることになっています。ところが、このときはレースも残り数周だったというのに、オフィシャルは2列に整列してからリスタートすることを決めます。これが混乱を招くことになったのです」
「スタート・フィニッシュ・ラインにやってきたときには6台ほどが横並びになり、あらゆるところをマシンが走っている状態になりました。でも、ターン1はとてもタイトなので、カオスになるのは目に見えていました。僕は慎重にコーナーに進入し、すべてコントロールできていると思いましたが、ウィル・パワーとライアン・ハンター-レイの接触が引き金となって、玉突きのような事故が起こりました。そして僕の行く手は完全にふさがれ、フルブレーキングで回避を試みましたが、残念ながら抜け出すことはできませんでした」
佐藤琢磨は9番手を走行していながら、完走への望みが絶たれることになった。
「セッティングを見直したおかげで、間違いなくトップ10でフィニッシュできそうな状況でした。これだったら予選でもずっといい成績が残せたことでしょう。できれば、この勢いを残る市街地コースでのレースでも発揮したいものです」
「これからミルウォーキーに行って新作映画“ターボ”を観た後、日本とモナコで休暇を過ごします。ここまでたくさん旅してきましたが、ミッドオハイオには新鮮な気持ちで臨みたいと思います!」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー