F1マイアミGP決勝レポ:オスカー・ピアストリが3連勝 角田裕毅は10位死守

レースはポールポジションからスタートしたレッドブルのマックス・フェルスタッペンが序盤をリード。しかし、ランド・ノリスとのバトルの中でノリスがコース外へ飛び出し、ポジションを落とす隙を突いて、キミ・アントネッリ(メルセデス)とピアストリが前に出た。
その後、ピアストリはアントネッリをオーバーテイクし、フェルスタッペンにもプレッシャーをかけ続けた末に首位の座を奪取。回復してきたノリスも続いてフェルスタッペンを交わし、マクラーレン勢は一気にトップ2体制を築いた。
レース中盤以降も“パパイヤカラー”の2台は他車を圧倒し、57周のレースを通じて独自のペースで先頭を走行。最終的にピアストリがノリスに4.63秒差をつけてチェッカーフラッグを受けた。
メルセデスのジョージ・ラッセルが3位表彰台を獲得したが、その差は首位ピアストリから実に37秒と、マクラーレンの支配的なパフォーマンスが際立つ結果となった。一方、フェルスタッペンは4位に終わり、マイアミのポールシッターが未だ勝利を挙げられないというジンクスを継続することとなった。
ウィリアムズのアレックス・アルボンが見事5位に入り、6位にはメルセデスのルーキー、キミ・アントネッリが続いた。フェラーリ勢は終盤にチームオーダーを巡る論争を抱えながらも、シャルル・ルクレールが7位、ルイス・ハミルトンが8位でフィニッシュ。途中、ハミルトンが前に出たが、最終的にはポジションが元に戻された。
その後方では、ハミルトンとウィリアムズのカルロス・サインツが激しいバトルを展開。サインツは9位でレースを終えたが、接触に関する調査がレース後に行われる予定となっている。
10位にはレッドブルの角田裕毅が入り、貴重な1ポイントを獲得した。11位にはアイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)が続き、ハースのエステバン・オコン(12位)、アルピーヌのピエール・ガスリー(13位)がこれに続いた。なお、サインツとガスリーは黄旗区間での走行に関する調査対象となっている。
キック・ザウバーのニコ・ヒュルケンベルグは14位、アストンマーティンのフェルナンド・アロンソとランス・ストロールは15位と16位で完走を果たした。
リタイアは計4台。レーシング・ブルズのリアム・ローソンはピットに戻ってレースを終え、ガブリエル・ボルトレト(キック・ザウバー)とオリバー・ベアマン(同)はマシントラブルによりコース上でストップし、バーチャルセーフティカーが導入された。
アルピーヌのジャック・ドゥーハンは、1周目にローソンとの接触でマシンにダメージを負い、レースを続けることができなかった。

レース展開
土曜のスプリント前と同様、日曜の決勝数時間前にもサーキットを叩くような大雨が降ったが、スタート時刻が近づくにつれて雨は止み、路面は急速に乾いていった。それでも、全57周の戦いを見据えて各チームはレーダーを注視し続けていた。
スターティンググリッドには1つ変更が加えられた。予選18番手だったアルピーヌのピエール・ガスリーは、パルクフェルメ下でサスペンション設定を変更したため、ピットレーンからのスタートとなった。
レース前には、全20人のF1ドライバーがレゴの実物大「ビッグビルドカー」に乗り込むユニークなドライバーズパレードが実施され、ファンを喜ばせた。しかし、やがて全員の意識はスタートに向けて集中していく。
マシンがグリッドに並び、予想されていたワンストップ走行に先立ち、グリッド上でタイヤブランケットが取り外されると、多くのドライバーがミディアムコンパウンドを選択していたことが明らかに。一方で、ラッセル、ローソン、ヒュルケンベルグ、アロンソ、ベアマン、ガスリーの6人はハードタイヤを選んでいた。

フォーメーションラップを終え、5つの赤ランプが消灯。マイアミGPの決勝がスタートすると、ポールポジションのフェルスタッペンはまずまずの発進を見せたが、ターン1で軽くロックアップ。これにより、ランド・ノリスが並びかけた。
だが、二人は接触。ノリスはターン2の内側縁石を跨ぐようにコースオフし、ポジションを落として6位に。これにより、キミ・アントネッリとオスカー・ピアストリが2位と3位に浮上。ノリスは「押し出された」と無線で訴えた。
後方では、ジャック・ドゥーハンがレーシング・ブルズのローソンと接触してパンク。ダメージが大きく、マシンはピットへ戻れずコース上で停止。これによりバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入された。ローソンはレースを続行したが、順位は最下位へ。
4周目にVSCが解除されると、ピアストリが素早くアントネッリを抜いて2位に浮上。ノリスもアルボンを抜いて5位へ復帰し、マクラーレン勢が再び前方に迫る。ハミルトンもハジャーを交わして11位に、サインツはチームメイトのアルボンを抜いて6位に躍進した。
一方、アロンソには「20周後に強い雨の可能性がある」との無線が入る。レースコントロールは、1周目のフェルスタッペンとノリスの接触、ならびにドゥーハンとローソンの接触についていずれも「審議なし」と判断した。
8周目時点でのトップ10は、フェルスタッペン、ピアストリ、アントネッリ、ノリス、ラッセル、サインツ、アルボン、ルクレール、角田裕毅、オコン。まもなくノリスがアントネッリをオーバーテイクして3位に浮上した。
同じ周、アロンソが土曜のスプリントでクラッシュしたコーナーで再びスピンするも、今回はウォールとの接触は免れた。
先頭ではピアストリがフェルスタッペンに迫り、11周目には2度仕掛けたが抜ききれず。フェルスタッペンのレースエンジニア、ジャンピエロ・ランビアーゼは「インを守れ」「楽には抜かせるな」と指示。一方、フェルスタッペンは「すごく滑る」と無線で訴え、グリップ不足を感じていた。
14周目、ついにピアストリが勝負をかける。最初の仕掛けで外に押し出されたが、その後フェルスタッペンがブレーキングでミスし、ワイドに膨らんだ隙を突いてカットバック。ピアストリがトップに躍り出た。
その翌周、ノリスもフェルスタッペンを追撃。ターン1の外側からのオーバーテイクは失敗し、チームからは「ピアストリの抜き方を参考に」と無線指示が入る。
18周目には、ノリスがターン11でフェルスタッペンをコース外へ押し出しながらインに飛び込み、2位に浮上するも、コース外走行の可能性があったため一度ポジションを返却。しかし、その周のうちに再度抜き返して2位を確保。
この間にピアストリは独走態勢に入り、9秒のリードを築いた。
20周目には、ガブリエル・ボルトレトが最初のピットインを行い、ミディアムからハードへ交換。同時に、空から再び雨粒が落ち始めていた。
中団では、10位争いが白熱。オコンとハミルトンが接戦を繰り広げ、最終的にハミルトンが前に出てポイント圏内へ。
24周目時点のトップ10は、ピアストリ、ノリス、フェルスタッペン、アントネッリ、ラッセル、アルボン、サインツ、ルクレール、角田裕毅、ハミルトン。
26周目、アントネッリがピットインするも、ピットレーンでサインツを待たなければならず、アンダーカットは失敗。ノリスには「ターン17周辺で再び小雨の可能性」と無線が入る。

やがてピットインが本格化し、フェルスタッペンがトップ3の中で最初にピットイン。29周目には、ベアマンがマシントラブルでコース脇に停止し、2回目のVSC導入。
マクラーレンはこのタイミングでダブルストップを敢行。ピアストリとノリスは1-2体制を維持したままコースへ復帰。ラッセルはVSC下でピットインしたことで、フェルスタッペンの前に出て3位へ浮上。
好調だったのはウィリアムズ。アルボンがアントネッリを交わして5位へ。サインツも元チームメイトのルクレールを交わして7位に。
一方、角田裕毅はピットレーン速度違反で5秒ペナルティ。また、ボルトレトはエンジントラブルによりリタイア。マシンはコース上に停止し、3回目のVSCが発動。
VSC解除後はフェラーリ勢とサインツによる三つ巴のバトルが展開され、ルクレールが7位を奪い返し、ハミルトンも続いて8位へ浮上。

その後、フェラーリ無線ではハミルトンがミディアム、ルクレールがハードを履いていることを理由に「自分を前に出すべき」と主張。しかし、チームの決断が遅れたことに「紅茶でも飲んでるのか」と皮肉を飛ばすなど、不満をあらわに。最終的にチームはポジションスワップを決定。
一方、ローソンはピットに戻り、この日4人目のリタイアとなった。
45周目時点で、ピアストリはノリスに5秒差をつけて首位。3位のラッセルはさらに27秒遅れで、マクラーレンの支配が明白となっていた。4位のフェルスタッペンはラッセルを追っていたが、差を詰めきれず。
終盤、ピアストリのリードは4秒台へと縮まり、ノリスが背後に迫る展開へ。マクラーレン同士の直接対決があるかに思われたが、最後まで順位は変わらず。

グランプリ終了後、サインツとガスリーのイエローフラッグ違反の可能性について調査すると発表したため、レース後のスチュワードは忙しい夜になりそうだ。しかし、レースが残り5周に差し掛かると、コース上では依然として激しい動きが見られ、ノリスが再びピアストリのリードを縮めた。
一方、ハミルトンがアントネッリに追いつけなかったため、アントネッリはルクレールとポジションを交代するよう指示された。異例なことに、ルクレールはハミルトンよりも先にこのことを知らされていた。つまり、7度のワールドチャンピオンであるハミルトンは、譲るよう求められていることを知らなかったのだ。
ハミルトンは指示に従い、ルクレールは「レース後に話し合いましょう」とコメントした。しかし、ハミルトンにとってドラマはこれで終わらなかった。彼はサインツのウィリアムズに追い詰められていたのだ。
最終ラップでのサインツの突進は、結局彼にとって不利に働いた。この件もレース後に調査される予定だ。しかし、上位陣ではそのような問題は発生せず、ピアストリがフィニッシュラインを越え、ノリスに4.63秒差で今シーズン4勝目を挙げ、マクラーレンにとって素晴らしい一日となった。
ラッセルは3位に入り、表彰台獲得回数を伸ばした。フェルスタッペンは4位に沈んだものの、その差を縮めることはできなかった。ウィリアムズのアルボンは力強い5位に入り、メルセデスのアントネッリ(6位)、フェラーリのルクレールとハミルトン(7位と8位)が続いた。
サインツと角田裕毅がトップ10入りを果たし、ハジャー、オコン、ガスリー、ヒュルケンベルグがそれぞれ11位から14位に入った。一方、アストンマーティンは忘れたい一日となり、アロンソとストロールはそれぞれ15位と16位に終わった。
ローソン、ボルトレト、ベアマン、ドゥーハンの4人のドライバーが全員チェッカーフラッグを受けることができず、このレースからリタイアした。
マイアミでの忙しい週末を終えて、ピアストリは獲得ポイントを131に伸ばし、ドライバーズチャンピオンシップのトップに立ち、2位のノリスに26ポイント差をつけている。一方、フェルスタッペンは99ポイントで3位を維持している。
■ピアストリのコメント:
「本当に勝ちたかったレースで勝てた。昨日は厳しかった。スプリントはまあ仕方ないとしても、予選は今年一番苦戦したかもしれない。でも、それでも日曜に勝てたのは素晴らしい結果。ターン1で少し混乱があって、それが助けになったのもあるし、マックスの動きにもちゃんと反応できた。そこからは、自分にペースのアドバンテージがあると分かっていたし、今日はとにかくクルマが素晴らしかった。」
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