レッドブルF1が“勝利を捨てた理由” メキース「確実な表彰台を取る決断」

フェルスタッペンはピットレーンスタートから驚異的な追い上げを見せ、序盤のパンクによる早めのピットストップを経ても、51周目にはランド・ノリス(マクラーレン)のピットインを機に首位へ浮上。
しかし、レッドブルは17周を残して再びピットインを指示し、新しいタイヤに交換させた。
この決断によってフェルスタッペンは4番手に順位を落とし、最終的に3位でフィニッシュ。結果的に表彰台には届いたが、「勝利を逃したのではないか」との声も上がった。
メキース「勝てたとは思っていない」
「いや、我々は勝てたとは思っていない」とメキースはレース後に語った。「最終的にどこで終えられたかは分からないが、ピットウォールでは議論を重ねた上で決断を下した。ある時点で判断しなければならないし、その判断を下した。結果的に表彰台を狙える位置に戻れたし、最終的にそれを実現できた」。
54周目の時点で、フェルスタッペンのミディアムタイヤは明らかに劣化しており、ラップタイムは1分14秒台後半に低下。一方でノリスは新品タイヤで1分13秒台前半を刻んでいた。
レッドブルは「ポジション維持にこだわれば、終盤にすべてを失う可能性があった」と判断したという。
「1周多く走れば2位に残れたかもしれないが、1位を守るのは不可能だったと思う。タイヤのデグラデーションを見れば明らかだった」とメキースは認めた。
“もしも”のシナリオはあったのか
ピットに入る直前、フェルスタッペンはノリスに対して約7秒のリードを築いており、背後のキミ・アントネッリ(メルセデス)には12秒差があった。
だが、メルセデスのルーキーは徐々にペースを上げており、データ上は残り15周で差がなくなる可能性もあった。
ピットアウト後、フェルスタッペンは新品ソフトでジョージ・ラッセルを抜き、アントネッリを追い詰めたが、最後まで抜くことはできなかった。

マクラーレンのステラ代表も「正しい判断」と評価
議論はレッドブルのガレージを超えて広がった。マクラーレン代表のアンドレア・ステラは、ノリスの2ストップ戦略を指揮しながらも、レッドブルの判断を「理にかなっていた」と評価した。
「正直、フェルスタッペンがピットに入ってくれて助かったよ」とステラは笑いながら語った。「冗談はさておき、今日はデグラデーションが非常に大きく、タイヤが完全に摩耗する段階があった。新品ソフトが残っていた以上、最後まで引っ張るのはギャンブルだったと思うし、あの判断は正しかった」。
さらにステラは、レッドブルのレースペースの強さを改めて称賛した。
「レッドブルは新品タイヤを有効に使ったが、それ以上にレース全体で見せたペースが印象的だった。予選でのトラブルがなければ、フェルスタッペンは勝利争いをしていたと思う」と続けた。
データで見る冷静な判断
今回のピット戦略は、勝利の可能性を放棄したようにも見えるが、実際にはリスクを最小化し、確実な表彰台を取りに行ったものだった。
メキースのトーンは終始冷静で、「データに基づく判断だった」と強調。感情ではなく、タイヤの摩耗データとペーストレンドに基づいて決断が下された。
結果として、チームは“不確実な勝利”を捨て、“確実な表彰台”を選んだ。
数字が示したのは、戦略的なリスク回避の勝利だった。
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