フェラーリが明かす2026年F1パワーユニット革命 電動50%時代の実像

2026年シーズンに向けたF1レギュレーションの刷新は、空力だけにとどまらない。パワーユニットもまた、この変革の中心的存在となり、新エンジンこそが来季に目にする変化の真の要になると言っていい。
1月26日から30日にかけて行われるバルセロナ=カタルーニャ・サーキットでの最初の非公開テストまで、残りは1か月あまり。パドックでは、いまだ不確実性が支配している。
すべてのチームにとって、確かな事実はほとんど存在しない。だからこそ、イタリアチームのシーズン終了後プレスデブリーフの場で、RacingNews365はフェラーリのパワーユニット技術責任者であるエンリコ・グアルティエリに話を聞き、今後の見通しに少しでも光を当てようとした。
フェラーリは1月23日に新車を発表予定であり、マシン発表と初走行に向けたカウントダウンが進む中での取材だった。
2026年パワーユニットの大きな変更点
2026年仕様のパワーユニットは、2025年まで使用されてきたものと比べて、2つの根本的な違いがある。
最も際立つのは、内燃エンジンと電動コンポーネントの最大出力が等分される点だ。おおよそ内燃エンジンが500馬力、電動側も500馬力という構成になる。
具体的には、電動側は350kWを発生し、これまでの120kWからほぼ3倍に増加する。従来の80/20という内燃優位の配分から、50/50へと完全に変わる。
もう一つの大きな変更はエネルギー回生だ。2026年からは、減速時やアクセルオフ時にMGU-Kのみでエネルギーを回収することになる。
ターボシャフトに接続されたモータージェネレーターであるMGU-Hは、完全に廃止される。
グアルティエリによれば、これら2つのレギュレーション変更によって、新パワーユニットの設計思想そのものが根本から作り替えられたという。
最大の課題
エンジニアたちが直面してきた最も明白な課題は、電動出力が3倍に増えたことだ。
これにより、2つの重要な結果が生じている。第一に、バッテリーはもはや1周を通して電動パワーを供給し続けることができなくなった。
サーキットによっては、最も長いストレートの終わりを迎える前に、電動ブーストが尽きてしまうケースもある。
第二に、バッテリーの再充電がはるかに複雑になった。MGU-Hが廃止されたことで、MGU-Kが唯一の回生源となり、ブレーキング効率と全体的なエネルギーマネジメントの重要性が飛躍的に高まっている。
サーキットで何が見られるのか
こうした大きな変更がある一方で、グアルティエリは、ドライバーが電力を温存するためにアクセルオフを多用する「リフト&コースト」がレースを支配するような展開にはならないと見ている。
代わりに決定的な要素となるのはソフトウェアだ。エネルギーの放出と回収を司るマネジメントシステムが性能の中核となり、重要な競争上の差別化要因になり得る。
純粋な速さとバッテリー管理の最適なバランスを見つけたチームが、大きなアドバンテージを得ることになる。
FIAが導入したアクティブエアロダイナミクスは、直接的な性能向上ではなく、エネルギー制約を補うための手段として位置づけられており、マシン間に大きな性能差を生むことはないとグアルティエリは説明する。
その効果は、電子制御戦略とどれだけ巧みに統合されているかに、ほぼ完全に依存するという。
またグアルティエリは、ドライバーの役割がこれまで以上に重要になると認めている。
ピットウォールからの直接的な指示はレギュレーションで制限され続けるが、ドライバー自身がステアリング上のコントロールを使い、レース状況やバッテリー残量に応じてエネルギー展開モードを、より頻繁かつ体系的に調整する必要がある。

すでに先行するチームはいるのか
パワーユニットのレギュレーションは、2026年シーズンの2年半以上前に最終確定された。これは、安定した強固な枠組みを作るための措置だった。
グアルティエリによれば、このアプローチにより、2014年から2020年にかけてメルセデスが築いたような、ハイブリッド時代初期の一方的な支配が再現される可能性は低いという。
現時点では、どのチームもライバルに対する自分たちの立ち位置を明確には把握していない。ただし、信頼できる情報筋によると、ダイノテストでは各陣営で信頼性の問題が発生しているという。
その多くは、100%持続可能燃料に関連している。ただし燃料そのものの品質ではなく、燃焼効率を極限まで高めつつ、同時に軽量化を進めていることが原因だとされる。
これは、2026年に最低重量が798kgから768kgへと引き下げられることを考えれば、極めて重要な要素となる。
フェラーリの進捗と全体像
夏の終わりにヴォルフ・ツィンマーマンとラース・シュミットがフェラーリを離脱したことで、2026年パワーユニット計画に遅れが生じているのではないかという憶測が広がったが、グアルティエリはそれを確認しなかった。
また、シリンダーヘッド素材を巡る噂についても、彼は明言を避けている。当初は熱伝導性に優れ、ラジエーターを小型化できる鋼材が有力とされていたが、信頼性の懸念や全開時テストでの最高出力低下を理由に、アルミニウムへ回帰する可能性が取り沙汰されていた。
グアルティエリが指摘するように、すべてのメーカーが、極めて複雑な初期認証フェーズを経験してきた。
電動と内燃の出力が前例のない形で均衡することで、全チームが未踏の領域に足を踏み入れている。
明らかなのは、F1が完全に新しい技術領域へ突入しているということだ。シーズンが始まり、実走行での効率や性能データが明らかになれば、開発曲線は極めて急峻なものになるだろう。
マシンの進化は止まることなく続き、単にラップタイムを追い求めるだけでなく、場合によってはパワーユニット自体の弱点を補うための開発も求められていくことになる。
カテゴリー: F1 / スクーデリア・フェラーリ
