元レッドブルF1メカニックが語る「完璧なピットストップの重要性」

ニコラスは『The Line』ポッドキャストに出演し、現在最も優れたチームはマクラーレンかと問われると、「そうは思わない。彼らが今もっとも速いマシンを持っているとは言えるけれど」と語り始めた。
マクラーレンのモンツァでの判断を評価
番組では、2025年のF1イタリアGP(モンツァ)で発生したランド・ノリスのスローピットストップ映像も紹介された。この際、オスカー・ピアストリが一時的にチームメイトを抜いたものの、チームオーダーにより順位を戻している。
「このケースでは、マクラーレンはかなり運が良かった。影響がチーム内だけに留まったし、サーキット上で訂正できた。結果をどう受け取るかは別としてね」とニコラスは振り返った。
2021年オースティンの「10秒ピット」からの教訓
さらにニコラスは、自身がレッドブルで担当していた2021年のアメリカGP(オースティン)での出来事を例に挙げた。
「2021年の激しいタイトル争いの最中、オースティンで僕らは遅いピットストップをしてしまった。約10秒もかかってしまい、通常の平均は2.3秒なんだ」と述懐。
「幸いなことに、マックス(フェルスタッペン)はそのタイムロスを取り返して優勝できた。でも、毎回そうなるとは限らない。あれはいい教訓になった」と続けた。

「わずかなズレ」で全てが狂う
最後にニコラスは、ピットストップの世界がどれほど繊細かをこう語った。
「ピットでは本当に多くのことが間違う可能性がある。重要なのは精度だ。ピット作業を行うメカニックだけでなく、ドライバーも完璧にこなさなければならない。ドライバーがわずかに停止位置を間違えるだけで、すべてが狂ってしまう。それが大きなタイムロスにつながるんだ」
レッドブルとマクラーレンの“ピットカルチャー”の違い
ニコラスの言葉は、F1のピット作業が単なるタイヤ交換以上の“チーム総合力”であることを示している。レッドブルは長年、2秒を切る超高速ストップで知られ、メカニックの反射的連携と統一された動作で世界最速のピットを実現してきた。一方、近年のマクラーレンはスピードよりも確実性を重視し、チーム間の情報共有と判断力でバランスを取る戦略を採っている。
モンツァのケースはその象徴だ。ピアストリとノリスの間で順位を調整する冷静な判断ができたのは、作業の失敗を“現場でリカバーする力”が備わっていたからこそだ。
とはいえ、1回の遅れがタイトルを左右することもある――それを誰より知るのが、フェルスタッペンのピットガンを握っていたカラム・ニコラスなのである。
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