レッドブル・ホンダF1決勝分析:現実を見せられたメルセデスとの実力差 / F1スペインGP 決勝
レッドブル・ホンダにとって、F1スペインGPの決勝は、前戦の優勝ムードから一転して現実を見せられたレースとなった。

前戦F1 70周年記念GPではタイヤ戦略が奏功して優勝を果たしたマックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダ。決して“まぐれ”での勝利とは言えないが、1段階柔らかいタイヤ、高い気温、タイヤ圧の増加がメルセデスを悪い方向へと導いたことの結果でもあった。

その答え合わせの機会となったF1スペインGP。8月開催ということで気温はシルバーストンと同じくらい高かったが、タイヤは前戦とは異なり最も硬いレンジのコンパウンドが選択された。同じような条件のなかでレッドブル・ホンダの連勝を期待する声もわずかながらあった。

当然ながら、予選ペースに関しては大きな違いはなかった。初日からメルセデスに対してレッドブル・ホンダは再び1秒の差をつけられた。だが、ロングランに関しては、メルセデスと同等以上のペースを発揮したことでレッドブル・ホンダ陣営は“ロングランでは戦える”と期待をかけた。

しかし、その希望は当てが外れることになる。

当然ながら、メルセデスはブリスターに苦しんだF1 70周年記念GPの敗戦の教訓を生かして、初日から走行プランを立てていた。初日のロングランもペースはコントロールされていたようだ。そして、予選での差が約7秒に縮まった時点でそれはある程度予測できていた。

今大会は路面の荒く、オーバーテイクが難しいカタルニア・サーキットが舞台。タイヤで問題となったのは、ブリスター(水泡)ではなく、デグラデーション(摩耗)だった。そして、先に音を上げたのはレッドブル・ホンダの方だった。

序盤こそルイス・ハミルトンと同等のペースで走れていたマックス・フェルスタッペンだったが、それはハミルトンが秀逸なタイヤマネジメントでペースを抑えていたため。ハミルトンのソフトタイヤは驚くほど綺麗なままだった。

しかし、1回目のピットストップまでにタイヤを使い切ることを決めたルイス・ハミルトンがペースアップした12周目あたりからその差は0.5~1秒に広がり、堪らずフェルスタッペンがピットインしたときにはギャップは7秒にまで広がっていた。

ソフトでの圧倒的な差を見せつけられたマックス・フェルスタッペンは、それでもピットストップを遅らせて優勝を諦めないチームに対して、“自分たちの仕事=2位を堅持”することを提案した。

常にアグレッシブなマックス・フェルスタッペンも『ルイスに目を向けるのではなく、まずは自分たちのレースに集中しない? 僕たちがソフトタイヤで彼らほど速くないのは明らかだったんだからさ。とにかく自分たちの仕事を確実にやって、彼らには彼らの仕事をさせない?』とチームに半分呆れたメッセージを無線で伝えた。

レース後の記者会見でマックス・フェルスタッペンは「結局のところ、彼らがやっていることをコントロールすることはできない。自分たちがやっていることをしかコントロールできないわけだし、自分たちが可能な限り最速の戦略を実行することを確認する必要がある」と説明した。

「ハミルトンはタイヤをセーブしていた。僕もセーブしてはいたけど、レーシング・ポイントがいたのでそこまで減速する余裕はなかった。ある時点でバルテリがレーシング・ポイントをオーバーテイクして、さらに減速することはできなくなった。ハミルトンが加速しはじめて、自分のペースで走り出すと、もはや彼についていくことはできなかった」

ピットストップ後にトラフィックに引っかかることはわかっていたけど、新品タイヤを履いたら、彼らを簡単に追い抜くことができた。バルテリが先にピットインして、アンダーカットを仕掛けることを心配していた。僕の意見では最終的にピットに入るのは2周遅かったと思う。多くのタイムを失ったからね。理想的ではなかった」

幸運だったのは、メルセデスがバルテリ・ボッタスに第3スティントでソフトを履かせる不可解な戦略をとってくれたこと。第2スティント交換には1.5秒まで差を縮められていたが、デグラデーションが強く出るソフトでボッタスはペースを上げることができず、最終的に3回目のピットストップを行っている。40周目に2回目のピットストップをするというレッドブル・ホンダの判断も光った。

次戦F1ベルギーGPでは、メルセデスの“予選モード”が禁止されるという報道もある。しかし、問題はそこではない。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1