レッドブル・ホンダF1のグリッド上での修理が驚異的だった理由
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マックス・フェルスタッペンは、ピットからダミーグリッドに向かうレコノサンスラップでターン12のタイヤバリアにクラッシュ。フロントウイングと左フロントサスペンションを破損したが、チームはマシンをピットに戻さずにそのままグリッドに向かうよう指示した。
フォーメーションラップの5分前までにマシンを修理することができれば、マックス・フェルスタッペンは7番手からスタートできる。だが、時間内に作業を完了することができず、また、予選出走時と異なる仕様となった場合にはピットレーンスタートとなる。
レッドブル・ホンダF1のメカニックは20分以内にRB16のプッシュロッドとトラックロッドを交換しなければならなかった。この任務はスタートの25秒前に完了し、ライバルチームもスタンディングオベーションでその作業を称えた。マックス・フェルスタッペンはチームが“新品同様”に修理したマシンで2位表彰台を獲得してチームの努力に応えた。
レース後、レッドブル・ホンダF1のチーム代表クリスチャン・ホーナーは「スクリーン上ですでにトラックロッドとプッシュロッドが破損しているのを確認していたが、サスペンションのウィッシュボーンとアップライトの状態は分かっていなかった。これらが破損していたらゲームオーバーになっていた」と振り返った。
「だから、その点ではとてもラッキーだったが、ホイールが動いていたのでギリギリだった。汗をしたたらせながらメカニックが頑張ったのは素晴らしかった」
しかし、レッドブル・ホンダF1の作業は、レッドブル RB16のフロントサスペンションのユニークなレイアウトによってさらに厄介になった。特にステアリングラックが露出して手が届きやすいグリッド上の他のマシンとは異なり、交換しなければならないトラックロッドは、バルクヘッドの後ろのシャシー内側にあるステアリングラックに取りつけられているからだ。
ウィッシュボーンは、ホイールアップライトを通じてタイヤからのコーナリング負荷を移動させ、シャシーに向かわせる。これらが破損するとマシンは安全に走行できなくなり、おそらく操縦不可能になる。対角線上に取りつけられたプッシュロッドは、ホイールの垂直運動を車内のロッカースプリングに伝える。トラックロッドはステアリング・ラックをホイールに接続する。

上図は、プッシュロッドがナックル(関節)に取りつけられている場所を示している。ナックルは、一定のステアリング角度を超えた際にマシン前部を下げるために使用される。メカニックは、ナックル側の端と車内のロッカーの端(下図の上の赤い矢印)も取り外さなければならない。
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この図の下の矢印は、トラックロッドが、隠れたステアリング・ラックに向かう途中でシャシーに合流する場所を示している。RB16と昨年のRB15(上図)を比べると、メカニックはかなり簡単に昨年のトラックロッドを交換できることがわかる。
レッドブル・ホンダF1のメカニックたちは、金曜日に徹夜で両マシンのスペックを変更し、レース直前に完全にマシンを修復し、レース中にはマックス・フェルスタッペンのピットストップを2秒以内で完了した。あらゆる点で見事な仕事ぶりだった。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1