F1 開幕直前特集:レッドブル・ホンダは2020年にメルセデスを倒せるのか?
2020年のF1世界選手権の開幕が目前に迫っているが、今シーズンの最大の注目はレッドブル・ホンダが王者メルセデスの牙城を崩すことができるかに集まっている。

メルセデスF1とルイス・ハミルトンは、2021年にF1レギュレーションが大きく変わる前に、F1での優位性の時代を維持するべく、今年、それぞれの7回目のF1ワールドチャンピオンを狙っている。

しかし、2020年のF1レギュレーションは安定しており、各チームの実力は拮抗。それは2月に行われたF1バルセロナテストでも明らかだった。プレシーズンテストでは、燃料搭載量、エンジンモード、タイヤなどの要因によって、各F1チームの新車の勢力図を把握するのは常に困難なことだが、少なからず今年の傾向は見えてきている。

6日間のF1バルセロナでは、メルセデスのバルテリ・ボッタスが第1週に最速タイムとなる1分15秒732をマークし、早くも昨年のF1スペインGPで自身が記録したコースレコードに0.326秒差に迫った。しかし、第2週でそれが更新されなかったことには理由がある。メルセデスはF1エンジンに複数回の問題が発生。それにより、第2週ではエンジン出力を最大にして走行することができなかった。だが、レースシミュレーションではロングランの強さも見せており、今年も優勝候補の筆頭であるとは間違いないだろう。

一方、レッドブル・ホンダはマックス・フェルスタッペンが第2週の最終日に2番手タイムとなる1分16秒269を記録。ただし、ボッタスがC5でのタイムなのに対し、フェルスタッペンはC4でタイムを記録している。レッドブル・ホンダは最終日にメルボルン仕様の空力パッケージを導入したが、タイヤ選択からもわかる通り、実力を隠そうとしたのは明らかだ。現にレッドブル・ホンダは最新のパッケージであえて実力を垣間見せてしまうレースシミュレーションをせずにテストを終えている。

そして、不気味な存在なのがフェラーリだ。昨年のF1プレシーズンテストの王様だったフェラーリは、今年は一転して静かな6日間を過ごした。だが、ロングランのペースでは特に燃料が軽い状態の平均タイムでメルセデスに0.2秒差まで迫っており、区間ベストタイムを合計した“理想タイム”ではメルセデスを上回っている。フェラーリは“開幕戦では勝てない”とメディアに語っているが、実際にそれほど状況は悪くなく、それはブラフである可能性がある。

だが、Auto Motor und Sportは、6日間のテストを総合的に分析し、生のペースではメルセデスがトップであり、レッドブル・ホンダは0.3秒差、フェラーリは0.5秒差との評価し、メルセデスとレッドブル・ホンダとのタイトル争いになるとみている。

マックス・フェルスタッペンという存在
マックス・フェルスタッペンには初のF1ワールドチャンピオン獲得の期待が高まっている。フェルスタッペンはF1に情熱的なファン層を築き、ほとんどのグランプリで“フェルスタッペン・マニア”がスタンドをオレンジ色に染めている。そして、ついにフェルスタッペンがタイトルを獲得する時が来たかもしれない。

「最初のレースに向けて、マックスがF1ワールドチャンピオンに勝つ平等なチャンスがあると思いたい」と Sky F1 のマーティン・ブランドルは語る。

すでにF1史上最年少のドライバーであり、史上最年少レースウィナーであるマックス・フェルスタッペンにとって、今年は、F1史上最年少ワールドチャンピオンになる最後のチャンスとなる。フェルスタッペンの才能は、2015年にトロロッソで17歳でF1デビューして以来、疑いの余地はなかった。次のシーズンにすぐにレッドブルに昇格し、チームとの初レースであるスペインGPで優勝。F1ブラジルの雨の中で見事なドライブはアイルトン・セナやミハエル・シューマッハとの比較を生んだ。

それ以降、マックス・フェルスタッペンはレースクラフト、成熟性といったあらゆる点で完成されたドライバーに近づいた。多くの場合、3番目に速いマシンでさらに7勝を挙げ、22歳でF1での6シーズン目を迎えるマックス・フェルスタッペンは、ライバルにとって脅威となっている。これまで、その若さでこれほど経験豊富なドライバーはいなかった。

元F1ワールドチャンピオンのニコ・ロズベルグは「マックスは、絶対的な若さで、弾丸のようなスピード反応、絶対的なピークの人体反応時間、そして経験を兼ね備えている。それは信じられないほど強力な組み合わせになる」と語る。

その攻撃的なレースへのアプローチに、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテル、バルテリ・ボッタスといったドライバーが“余分にスペースを空けなければならない”と語る。裏を返せば、それは脅威と感じているとも解釈できる。。

そして、マックス・フェルスタッペンは、F1キャリアで初めてワールドチャンピオンに挑戦するマシンを手に入れることができた可能性がある。ホンダF1とレッドブルの新しいパートナーシップの初年度である2019年にフェルスタッペンのF1ベストリザルトとなる3位でシーズンを終えている。ホンダのF1エンジンはシーズン終了に向けて大幅に改善され、ルイス・ハミルトンはメルセデスよりも強力なエンジンであることを示唆している。2020年にホンダF1はレッドブルに理想的なプラットフォームを提供した。

今年の初期の兆候はポジティブで、レッドブルはメルセデスのペースと走行距離からわずかに外れているものの、近年でベストともいえるテストを終えた。

「レッドブル・ホンダのマシンは、これまでのシーズン開幕前で最も準備されたマシンだと聞いている」とマーティン・ブランドルは語る。

レッドブル・ホンダは、フェラーリに先んじてメルセデスに挑戦する最有力候補の地位を確立しており、シーズンを通してメルセデウスが開発を試みる前に、今週末のF1オーストラリアGPで可能な限り6回の世界チャンピオンに近いスタートをすることが期待されている。

セバスチャン・ベッテルは現在、F1の史上少世界チャンピオンであり、23歳134日でレッドブルで初の王座を獲得している。マックス・フェルスタッペンはシーズン終了の3か月前の9月30日に23歳になるので、2020年にF1ワールドチャンピオンを獲得すれば、その記録を更新できる。

マックス・フェルスタッペンは史上最年少F1ワールドチャンピオンについては考えていないと主張しているが、メルセデスはレッドブル・ホンダがその記録のために必死であることを確信している。

「マックスが優勝すればF1史上最年少ワールドチャンピオンになるので、レッドブルが主な挑戦だと思う」とメルセデスのF1チーム代表を務めるトト・ヴォルフは語る。

「レッドブルとヘルムート(マルコ/レッドブル モータースポーツアドバイザー)はこれに大きな重点を置くと思う。それは彼らにとって良いことだと思う。レッドブルは2020年に集中していると思う。」

ヘルムート・マルコは“最低5勝”という予想を繰り返しているが、ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史も特定な目標は設定していはいないものの、それらはホンダの期待からそれほど遠くないと認める。

「我々はチャンピオンシップを争うためにあらゆる努力をしています」と山本雅史はコメント。

「昨年はいくつかの不運なレースがあり、そのうちのいくつかを失いましたが、今年はそのようなレースを避ける必要があります。マックスは、すべてのレースで表彰台に上がりたいと言っています。それは私たちがサポートしなければならない目標です」

「具体的な目標はありませんが、昨年、ヘルムートは5勝と言い続けていました。私の見解では、おそらく4勝でした。最終的には3勝しましたが、メキシコなどいくつか逃したレースがあります。モンツァもそうだったかもしれません。なので、もっと勝つことができたと思います」

「ホンダとしては、マックスとアレックス(アルボン)に可能性のある結果を争い、最大化できるようにすべてを提供していく必要があります。そうすれば、何勝できるか見ていくことができます」

「昨年、レッドブルで9回、トロロッソで2回の表彰台を獲得しました。そのため、レッドブルが何らかの優位性を持つ11のサーキットがあると考えています。我々はそれらの11のうち、どれだけ勝つことができるかを見なければなりません。なぜなら、私たちにそのチャンスがあるからです」

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1