レッドブル・ホンダ F1特集:「目標は勝つこと。それは揺るがない」
ホンダにとって5年目となるF1シーズンがいよいよオーストラリアで新シーズンが開幕した。ファンにとっては待ちに待った本番であり、“2つのチーム”とともにすでに勝負が始まっている。
ホンダは今季から、トロロッソに加えて新たにレッドブル・レーシングとパートナーシップを結んでいるが、ホンダF1 テクニカルディレクターの田辺豊治によれば、この新たな提携のためにチームスタッフの拡充を行ったと語る。
「サーキット現場でのホンダのスタッフを2倍に増やしました。そして、レース経験のあるスタッフを両チームに加えるために、去年からチームにいるスタッフをそれぞれのチームに半数ずつ入れました」
「Sakuraを拠点としていたエンジニアがサーキットメンバーに加わったことに加え、MK側でもF1の経験があるエンジニアを補強したことにより、チーム規模は拡大しています」
「日本は、文化も言語も欧州とは全く異なりますし、そういった環境で働いてきていないエンジニアも加わりましたので、簡単ではありませんでした。現在、ホンダ F1には日本人と英国拠点のヨーロッパ人のメンバーがいるので、これを2チーム体制に合わせて組織していくのは、面白い取り組みです」
これまでの1年半で、ホンダはトロロッソを通じてレッドブル・テクノロジーと連携してきたが、今年はレッドブル・レーシングのメンバーとも関係を築いていかなければならない。
レッドブル・レーシングのテクニカルディレクター、ピエール・ワシェは文化やバックグラウンドの違いがあっても、コミュニケーションの支障にはならないと語る。
「新たなパートナーシップのスタートですから、相手がどのようなコミュニケーションを取るのか、学んでいかねばなりません。昨年から、いい意味で驚きの連続です。ホンダはとてもオープンな人が多いですし、我々にはレースに勝利するという共通の目標があります。こうした同じ考え方が、関係構築に役立っているんです」
「初めて一緒に仕事をする場合、どのようにコミュニケーションをとればいいのかを考える必要があります。これは、会社や組織としての関係以外にも当てはまることだと思います」
「私はフランス人なので、英語でのコミュニケーションに苦しむ気持ちはよくわかります。ただ、ホンダとのコミュニケーションについてはそれが問題になるとは思えません。このパートナーシップはかねてから臨んでいたものですし、お互いの組織構造や人物について理解していくプロセスのほうが大切だと思っていました。だから、ここまでは、すべてがとてもスムーズに進んでいます」
レッドブル・レーシングチーム代表のクリスチャン・ホーナーがプレシーズンテストの前に言及していたように、新シーズンに向けたスムーズな移行は、トロロッソのおかげでもある。ワシェはそれがコミュニケーションや仕事上の人間関係だけでなく、テクニカル面においても効果があると考えている。
「昨シーズンのトロロッソとホンダのパートナーシップは、今季の我々にかなりの効果をもたらしてくれています。ギアボックスの配置などドライブトレインをホンダのPUとどう組み合わせるのかといったことを考えるのにとても参考になりますし、エンジンマッピングやギアボックスのコントロールなどについても同様です」
「トロロッソのおかげで、PUについての理解が深まっていますし、逆にホンダにとっても、我々のマシンにPUをどう合わせていくのかということを知ることができているのではないでしょうか」
「さまざまな側面で、この連携は素晴らしいものだと言えます。デザイン部分では、ホンダのPUのおかげでシャシー側の自由度が大きく広がりました」
「シャシー側、PU側ともに、お互いのアイデアを出し、その折衷案を探ることが必要でした。互いにとってベストなバランスが見つかれば、最大のパフォーマンスを得られるわけです。例えば、冷却について考えるとき、ホンダは排気系の取り回しについて検討してくれます。そのおかげで、我々車体側はダウンフォースやメカニカルグリップを増加させることができるようになるのです」
「このように、なんでもオープンに話し合える関係性は、これまでなかったものです。というのも、我々は‘ワークス’ チームではなかったからです。でも、今はホンダがRed Bullファミリーのために懸命に取り組んでくれるので、シャシーとの統合は素晴らしい仕上がりですし、パフォーマンスを最大限に引き出せるのではないかと思っています」
設計やシャシーとの統合は、田辺豊治が重点的に取り組んできたことだが、レッドブルに合わせたものを作り、それをトロロッソにもそのまま適用できるわけではない。それぞれのチームでシャシーは異なるので、PUも合わせ込みが必要になる。
「いいマシン、速いマシンを作るために、ここまで議論を重ねてきました。車体を司るチーム側は我々への要望を伝えてくれましたし、逆に我々がどうしたいのか、どんなデザインにしてほしいのか、といったことも聞いてきてくれました」
「ですから、車体、PUの設計を見ながら、お互いにここはもっとこうしてほしいというような議論をして、マシンパフォーマンスの観点から最善の折衷案を見つけることに腐心して、意思決定をしていきました」
「もちろん、両チームのPUは、組付け角度や位置など細かいところに違いはありますが、基本設計は同じものです」
PUのコンセプトは昨年と同様だが、今季のテストは2チームで走れたので、さまざまな開発テストを行うことができ、多くの面でアップデートが施されている。ドライバーからのフィードバックも増え、収集可能なデータも昨年以上となったことで、テスト終了時からオーストラリアGPの開幕までにさらに開発を重ねている。
「データを見直すとともに、テストで使用したPUを分解して解析しました。かなり慎重に細部をチェックしたんです。外見上で何か壊れた箇所はないか、変な接触は起きていないかといったことや振動の影響などを調査しました。また、それぞれの部品の摩耗率も確認しました」
「8日間で多くのデータが集まり、ドライバーのフィードバックもたくさんありました。そこで出てきた課題をテスト期間中に潰し込み、一部は持ち帰って対策をしました。ダイナモで開幕戦に向けて細部の調整も行い、ハード面、セッティング面ともに取り組みました」
レッドブルもメルボルンに向けて車体のセットアップと開発に取り組んできたが、新PUを使ってみて、シーズンの目標はより明確になったようだ。
「パフォーマンスについてはある程度予測を立てられます。難しいのは、燃料についてまだ疑念がある点です。10年前と比べて、エンジンモードがパフォーマンスに影響を与えるのを見ることが多くなりました。さらに、テストのあったバルセロナとメルボルンはタイプの違うサーキットですから、ライバルたちがメルボルンにどんな仕様を持ち込むのかも分かりません」とピエール・ワシェは語る。
「ホンダは期待通りのパフォーマンスをもたらしてくれました。我々がトップ争いに近づけていることは、大きな前進です。昨年の序盤は、トップからかなり離されていたので、今その位置にいることは大きな希望です」
「目標は勝つことです。それは揺るぎません」
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1
ホンダは今季から、トロロッソに加えて新たにレッドブル・レーシングとパートナーシップを結んでいるが、ホンダF1 テクニカルディレクターの田辺豊治によれば、この新たな提携のためにチームスタッフの拡充を行ったと語る。
「サーキット現場でのホンダのスタッフを2倍に増やしました。そして、レース経験のあるスタッフを両チームに加えるために、去年からチームにいるスタッフをそれぞれのチームに半数ずつ入れました」
「Sakuraを拠点としていたエンジニアがサーキットメンバーに加わったことに加え、MK側でもF1の経験があるエンジニアを補強したことにより、チーム規模は拡大しています」
「日本は、文化も言語も欧州とは全く異なりますし、そういった環境で働いてきていないエンジニアも加わりましたので、簡単ではありませんでした。現在、ホンダ F1には日本人と英国拠点のヨーロッパ人のメンバーがいるので、これを2チーム体制に合わせて組織していくのは、面白い取り組みです」
これまでの1年半で、ホンダはトロロッソを通じてレッドブル・テクノロジーと連携してきたが、今年はレッドブル・レーシングのメンバーとも関係を築いていかなければならない。
レッドブル・レーシングのテクニカルディレクター、ピエール・ワシェは文化やバックグラウンドの違いがあっても、コミュニケーションの支障にはならないと語る。
「新たなパートナーシップのスタートですから、相手がどのようなコミュニケーションを取るのか、学んでいかねばなりません。昨年から、いい意味で驚きの連続です。ホンダはとてもオープンな人が多いですし、我々にはレースに勝利するという共通の目標があります。こうした同じ考え方が、関係構築に役立っているんです」
「初めて一緒に仕事をする場合、どのようにコミュニケーションをとればいいのかを考える必要があります。これは、会社や組織としての関係以外にも当てはまることだと思います」
「私はフランス人なので、英語でのコミュニケーションに苦しむ気持ちはよくわかります。ただ、ホンダとのコミュニケーションについてはそれが問題になるとは思えません。このパートナーシップはかねてから臨んでいたものですし、お互いの組織構造や人物について理解していくプロセスのほうが大切だと思っていました。だから、ここまでは、すべてがとてもスムーズに進んでいます」
レッドブル・レーシングチーム代表のクリスチャン・ホーナーがプレシーズンテストの前に言及していたように、新シーズンに向けたスムーズな移行は、トロロッソのおかげでもある。ワシェはそれがコミュニケーションや仕事上の人間関係だけでなく、テクニカル面においても効果があると考えている。
「昨シーズンのトロロッソとホンダのパートナーシップは、今季の我々にかなりの効果をもたらしてくれています。ギアボックスの配置などドライブトレインをホンダのPUとどう組み合わせるのかといったことを考えるのにとても参考になりますし、エンジンマッピングやギアボックスのコントロールなどについても同様です」
「トロロッソのおかげで、PUについての理解が深まっていますし、逆にホンダにとっても、我々のマシンにPUをどう合わせていくのかということを知ることができているのではないでしょうか」
「さまざまな側面で、この連携は素晴らしいものだと言えます。デザイン部分では、ホンダのPUのおかげでシャシー側の自由度が大きく広がりました」
「シャシー側、PU側ともに、お互いのアイデアを出し、その折衷案を探ることが必要でした。互いにとってベストなバランスが見つかれば、最大のパフォーマンスを得られるわけです。例えば、冷却について考えるとき、ホンダは排気系の取り回しについて検討してくれます。そのおかげで、我々車体側はダウンフォースやメカニカルグリップを増加させることができるようになるのです」
「このように、なんでもオープンに話し合える関係性は、これまでなかったものです。というのも、我々は‘ワークス’ チームではなかったからです。でも、今はホンダがRed Bullファミリーのために懸命に取り組んでくれるので、シャシーとの統合は素晴らしい仕上がりですし、パフォーマンスを最大限に引き出せるのではないかと思っています」
設計やシャシーとの統合は、田辺豊治が重点的に取り組んできたことだが、レッドブルに合わせたものを作り、それをトロロッソにもそのまま適用できるわけではない。それぞれのチームでシャシーは異なるので、PUも合わせ込みが必要になる。
「いいマシン、速いマシンを作るために、ここまで議論を重ねてきました。車体を司るチーム側は我々への要望を伝えてくれましたし、逆に我々がどうしたいのか、どんなデザインにしてほしいのか、といったことも聞いてきてくれました」
「ですから、車体、PUの設計を見ながら、お互いにここはもっとこうしてほしいというような議論をして、マシンパフォーマンスの観点から最善の折衷案を見つけることに腐心して、意思決定をしていきました」
「もちろん、両チームのPUは、組付け角度や位置など細かいところに違いはありますが、基本設計は同じものです」
PUのコンセプトは昨年と同様だが、今季のテストは2チームで走れたので、さまざまな開発テストを行うことができ、多くの面でアップデートが施されている。ドライバーからのフィードバックも増え、収集可能なデータも昨年以上となったことで、テスト終了時からオーストラリアGPの開幕までにさらに開発を重ねている。
「データを見直すとともに、テストで使用したPUを分解して解析しました。かなり慎重に細部をチェックしたんです。外見上で何か壊れた箇所はないか、変な接触は起きていないかといったことや振動の影響などを調査しました。また、それぞれの部品の摩耗率も確認しました」
「8日間で多くのデータが集まり、ドライバーのフィードバックもたくさんありました。そこで出てきた課題をテスト期間中に潰し込み、一部は持ち帰って対策をしました。ダイナモで開幕戦に向けて細部の調整も行い、ハード面、セッティング面ともに取り組みました」
レッドブルもメルボルンに向けて車体のセットアップと開発に取り組んできたが、新PUを使ってみて、シーズンの目標はより明確になったようだ。
「パフォーマンスについてはある程度予測を立てられます。難しいのは、燃料についてまだ疑念がある点です。10年前と比べて、エンジンモードがパフォーマンスに影響を与えるのを見ることが多くなりました。さらに、テストのあったバルセロナとメルボルンはタイプの違うサーキットですから、ライバルたちがメルボルンにどんな仕様を持ち込むのかも分かりません」とピエール・ワシェは語る。
「ホンダは期待通りのパフォーマンスをもたらしてくれました。我々がトップ争いに近づけていることは、大きな前進です。昨年の序盤は、トップからかなり離されていたので、今その位置にいることは大きな希望です」
「目標は勝つことです。それは揺るぎません」
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1