メルセデスF1 W17の優位性はPUだけではない 本当の強さはシャシー

しかし、この優位性は単純にパワーユニットの性能だけで説明できるものではない。エネルギーマネジメント、ドライビング特性、そしてシャシー性能など複数の要素が組み合わさることで、メルセデスはライバルよりも総合的な競争力を発揮している。
予想通りの優位性を示したメルセデス
メルボルンで行われた2026年F1開幕戦は、事前の予想を裏付ける結果となった。メルセデスはフェラーリ、マクラーレン、レッドブル・レーシングに対して明確なアドバンテージを持っているように見える。
ライバル勢の見立てでは、その差は少なくともコンマ5秒程度に及ぶとされている。ただし、アルバートパークの特性が特定の性能差を強調する傾向があることも事実である。
予選ではその差がさらに顕著だった。W17は他のトップ3チームに対してコンマ8秒もの差をつけた。一方でフェラーリ、マクラーレン、レッドブル・レーシングの3チーム同士の差はコンマ1秒未満に収まっていた。
決勝ではやや差が縮まったものの、シルバーアローズに最も迫れたのはフェラーリだけだった。マクラーレンは複数の問題に苦しみ、さらに遅れを取る結果となった。
鍵はハイブリッドのエネルギーマネジメント
メルセデスの強みは単一の要素から生まれているわけではない。複数の要素が互いに作用し合い、総合的なパフォーマンスを高めている。
その中でも特に重要なのがエネルギーマネジメントだ。
現在のF1では、FIAがリフト&コーストを過度に必要としないようにするため、1周あたり使用できるエネルギー量を7MJに制限している。この状況では内燃エンジンの性能だけでなく、エネルギーの使い方と回収方法が非常に重要になる。
メルセデスはこの分野でライバルよりも優れた理解を持っているように見える。特にブレーキングゾーンが少ない高速サーキットでは、その優位性が顕著だ。
エンジンモードを引き上げた瞬間、W17は本来の性能を発揮し始めた。特にストレートでは明確にライバルを引き離すスピードを見せた。
金曜日には大きく見えていた速度の落ち込みも、土曜日にはより小さく、そして滑らかなものになっていた。過度なリフト&コーストに頼る必要もなく、ラップの他の部分を犠牲にする必要もなかった。
これはメルセデスがエネルギーマネジメントを極めて正確に解釈していることを示している。同時に、内燃エンジンがピークパワー時にMGU-Kの負担を軽減し、ターボラグ低減にも寄与している可能性がある。
リフト&コーストではなく“スーパークリッピング”
W17の特徴のひとつは、バッテリー回収の方法にある。
メルセデスはリフト&コーストよりも、リアウイングを開いた状態でのスーパークリッピングによってエネルギーを回収するアプローチを取っている。
現在のレギュレーションでは、ブレーキングなどでのエネルギー回収は最大350kWまで許可されている。一方でスーパークリッピングによる回収は安全上の理由から250kWに制限されている。
この差は決して小さくない。そのため各チームはどの場面でどの回収方法を使うかを慎重に検討する必要がある。
フェラーリはリフト&コーストをより多用する傾向があるのに対し、メルセデスはスーパークリッピングを主な充電手段として使用している。特に予選ラップではその傾向が顕著だ。

異なるドライビング特性が生む差
この違いはドライビングスタイルにも影響する。
リフト&コーストを多用する場合、ブレーキングゾーンにはより低い速度で到達する。その結果、コーナー進入時のブレーキング負荷は比較的小さくなる。
フェラーリがターン6〜7のシケインで非常に高いミッドコーナースピードを示していた理由のひとつがこれだ。
メルセデスがまだブレーキングフェーズにある時、フェラーリはすでに加速フェーズに近づいている。そのため最低速度をより高く保つことができる。
一方でW17は逆のアプローチを取る。スーパークリッピングを使うため、ブレーキングをコーナーの奥まで引きずる傾向がある。
このスタイルで良好なミッドコーナースピードを維持するためには、強力なシャシー性能と優れたバランスが不可欠となる。
シャシー性能も高いW17
この点については、マクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラも指摘している。
ステラはハイブリッドの使い方に差があることに加え、MCL40は純粋な空力ダウンフォースが不足していると説明した。そしてW17はコーナリング性能でも見た目以上に強力だと評価している。
これらすべての要素が組み合わさった結果、メルボルンのようなエネルギー管理が重要なサーキットでは、メルセデスの強みが最大限に発揮された。
次戦の上海はまた異なる挑戦となる。長いストレートはあるものの、高速コーナーやエネルギー回収の機会も多く、シーズンの中でも特にエネルギー要求が厳しいサーキットではないからだ。
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