F1 レッドブル・レーシング ダニエル・リカルド
レッドブル・レーシングは、2019年にむけてホンダとのF1エンジン契約を結んだ2カ月後に、ダニエル・リカルドの移籍による後任ドライバー問題に直面することとなった。

ダニエル・リカルドは、レッドブル・レーシングへの残留に合意したと報じられていたが、その後一転してルノー加入が決定。この電撃的なオペレーションは少なからずF1界を驚かせた。

今年で29歳となったダニエル・リカルドは、今シーズン限りでレッドブルとの契約が次の契約ではF1ワールドチャンピオンを狙える体制を希望しており、フェラーリやメルセデスへの移籍が噂されていた。しかし、メルセデスがラインナップを確定し、フェラーリ移籍の可能性も低くなったことで、ダニエル・リカルドは3強チームの一角であるレッドブル・レーシングに残留するのはほぼ確実とみられていた。

実際、レッドブル・レーシングはダニエル・リカルドの契約更新を発表するための動画撮影を済ませており、後は契約書にサインするだけの状態になっていたと報じられていた。だが、ダニエル・リカルドが選んだのは、ワークス復帰してからまだ表彰台すら獲得できていないルノーだった。それはレッドブル・レーシングにとっては予測できない移籍先だった。

「アメリカへのロングフライトの後、ダニエルは変化を望んで決断したと言っていた。それが合理的な理由と考えて理解するのは難しいと思うが、ダニエルには間違いなく彼なりの理由があったはずだ」とレッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは語る。

「木曜日の午後に彼がルノーに行くと言ったきたときはおちょっくっているのかと思った。だが、そのあと、それが彼の決断だということが非常に明白になった。それを尊重しなければならない。ルノーは成長しているチームだし、彼らはそこにリソースを投入している。素晴らしい選択になるかもしれない」

だが、レッドブル・レーシングから見ればまだ競争力の劣っているルノーへの移籍は、マックス・フェルスタッペンの急成長を目の当たりにして、自分が“サポート役”に回ることになるとの懸念があったからではないかとクリスチャン・ホーナーは考えている。

「彼がチームを離れるという決断をしたのは非常に残念だが、5年間を経て、彼は新しいチャレンジ、新しい入学案内が必要だという思いが強くなったんだと思う。もちろん、彼がルノーF1チームに加入するという選択をしたのは、彼らが優位に立てると感じたからだと思う。彼は我々と過ごしていた時間のなかでルノーのプロダクトを非常に良く知っている。それに彼はおそらくもっと小さな環境で主導的な役割を果たすことを望んでいたんだと考えずにはいられない。彼とマックスとの間の競争は非常に激しかった。マックスはますます強くなっている。ダニエルは立ち去って何か他のことをするにはちょうどいいタイミングだと決断したんだと思う。彼はスピードと強さという点でマックスが成長しているのを目の当たりにしているし、もっとわかりやすく言えば、彼はサポート役に回りたくはなかったんだと思う。だが、彼らは決して異なった方法で扱われているわけではない。それがダニエルの意思決定の大部分を占めていたかもしれないと考えずにはいられない。それがフェラーリやメルセデスであれば、理解はできる。だが、彼のキャリアのこの段階ではそれは大きなリスクになる」

そして、クリスチャン・ホーナーは、マックス・フェルスタッペンとダニエル・リカルドの関係を以前に失敗したセバスチャン・ベッテルとマーク・ウェバーの関係に例えた。「潜在的にリカルド-フェルスタッペンは今後数年で終わりを迎える可能性があった。当時、マークにとっては受け梨れるのは難しいことだった。今、全体像と誠実さで振り返れば、とにかくセバチャンの方が速かった」

クリスチャン・ホーナーは、レッドブルはダニエル・リカルドの契約要求のすべてを満たす準備をしており、そこには新しいパートナーであるホンダの性能を見極め、1年でフェラーリやメルセデスに移籍できるための1年契約も含まれていたと明かす。

「彼は2つのエンジンの比較パフォーマンスと信頼性を知っている。我々はフェラーリとメルセデスが彼を連れにやってこなかったので、12か月後に彼らがやってきたときに移籍可能なように1年契約に合意する準備さえしていた。かなり控えめに言えば、付き合いたいと思っている少女を説得しているような感じだった。誰かが見ていたら、きっとそう思ったはずだ。ダニエルは、ディートリッヒ(マテシッツ/レッドブル オーナー)、ヘルムート(マルコ/レッドブル モータースポーツアドバイザー)、そして、私自身と会話をしていた。そして、我々はそれを実現しようと努力していた。心が実際にそこになければどうにもならない。ちょうどそのような感じだった。最終的に我々はダニエルが望み、求めてきた全てを与えたが、それでも彼の心に『レッドブルで続けていきたい』と言わせるには十分ではなかったんだと思う。お金でもなく、ステータスでもなく、ポジションやコミットメント、期間でもなかった。彼は『今、キャリアのこの段階で何か他のことをする必要がある』と感じたんだと思う。素晴らしい選択かもしれないし、後悔することになる選択かもしれない」

問題は誰がダニエル・リカルドの後任を務めるかだ。今年、カルロス・サインツをルノーにローン移籍されたのは、ダニエル・リカルドが離脱した場合のセーフティーネットだとクリスチャン・ホーナーは語っていた。しかし、カルロス・サインツの復帰はまだ発表されておらず、マクラーレンへの移籍が噂されている。そこには実質的な“ナンバー1ドライバー”となったマックス・フェルスタッペンがサインツと組みのを拒否しているとの報道もある。そこで最有力候補として浮上したのが今年トロロッソ・ホンダで走るピエール・ガスリーだ。ガスリーにはホンダとの仕事を経験済というメリットがある。

クリスチャン・ホーナーは、レッドブル育ちのカルロス・サインツとピエール・ガスリーがダニエル・リカルドの後任候補であると認める。

「幸いにも我々には素晴らしい才能を持った契約を結んでいるドライバーがいる。ゆっくりと腰を据えて状況を評価し、どうなるか見極めていくつもりだ。ドライブするには信じられないほど魅力的なクルマだ。要求やオファーが不十分だとは思っていない。すべてを見ていくつもりだ。優先ルートは、成功を収めてきた自分たちの才能に投資をすることだ。ベッテル、フェルスタッペン、リカルド、サインツ、ガスリー、彼ら全員が我々が結果を出してきたジュニアプログラムのプロダクトだ。サインツとガスリーは二人とも非常に速いドライバーであり、我々に一呼吸する時間を与えてくれると思う。いずれにしろ、彼らは夏の終わり、もしくはそれ以降まで契約下にある。我々は理想可能なオプションを検討し、チームのために正しい決断をしていくつもりだ」

そして、一部で報じられているフェルナンド・アロンソ獲得の噂についてクリスチャン・ホーナーは明確に否定した。

「彼は偉大なドライバーだし、素晴らしいドライバーだ。だが、それは非常に難しいと思う・・・彼はどこに行ってもちょっとしたカオスを引き起こす傾向がある。フェルナンドがチームに加わることが、チームにとって最も健全なものになるとは思えない。キャリアの終焉に近づいているドライバーを起用することよりも、若者に投資を続けることの方が我々の好みだ」

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング