レーシングブルズF1:シェイクダウン版VCARB03で見えたレーキ回帰
レーシングブルズF1が2026年F1シーズンに向けて実施したVCARB03のシェイクダウン走行により、新レギュレーション下でのマシン思想の一端が明らかになった。

イモラで行われた限られた走行距離の中でも、フロントおよびリアサスペンション構成やフロア形状から、従来とは異なる空力アプローチが読み取れる。とりわけ注目されるのは、2022年以降の低レーキ潮流から一転し、レーキを積極的に活用する方向性が見えた点だ。

元F1テクニカル責任者のゲイリー・アンダーソンは、VCARB03の実走映像をもとに、アンダーフロア、サスペンション、バージボード周辺の設計を分析し、このマシンが示す「レーキ回帰」の意味を読み解いている。

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フロントサスペンションに表れたアンチダイブ低減
VCARB03のフロントサスペンションは、プッシュロッド式を採用している。トップウィッシュボーンのジオメトリーを見ると、前年と比べてアンチダイブ量が明確に抑えられていることが分かる。

ゲイリー・アンダーソンは、この変更がライドハイトの上昇、そして何よりレーキ増加と整合していると指摘する。アンダーフロアトンネルが縮小され、ディフューザーも小型化された2026年規則下では、2022年以前のコンセプトに近いアプローチが再び有効になりつつあるという見立てだ。

レーキ増加が生むアンダーフロア空力
レーキを増やすことで、車体前方から後方にかけてアンダーフロア下の空気流を加速させることができる。アンダーソンは、これによりアンダーフロアダウンフォースが増加すると説明する。

さらに、ブレーキング時にレーキが増すことで、理屈の上ではダウンフォースも増えることになる。単純化した考え方ではあるものの、VCARB03が示している空力思想の方向性としては十分に示唆的だとしている。

マルチリンク化が示唆するタイヤ最適化
フロントサスペンションには、単純なAアームとは異なるリンク構成も確認できる。アンダーソンは、これがマルチリンク式である可能性に言及している。

この構成であれば、ステアリング舵角の変化に応じてキングピン角やキャンバー角を大きく変化させることができ、タイヤの接地面最適化に大きな自由度をもたらす。VCARB03では、そうした特性が活用されている可能性があるという。

フロントウイングとエンドプレートの変化
2025年型との比較では、フロントサスペンションの変更に加え、フロントウイングエンドプレートの形状変化も明確だ。垂直部分は内側へ移動し、全体の構成も簡素化されている。

一方で、下側の水平トレイは脆弱に見え、ハースやキャデラックで見られた幅広の上部ブレードと同様、接触時の破損リスクを抱えているようにも映る。3枚構成となったフロントウイングは、スロットギャップが減少したことで、フラップ角を抑えた運用が求められる。

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リアサスペンションが支えるハイレーキ哲学
リアサスペンションもプッシュロッド式のインボード構成だ。トップおよびロアウィッシュボーンには、十分、もしくはそれ以上のリアアンチリフト量が確保されている。

アンダーソンは、これは高レーキ運用と密接に関係していると見る。ブレーキング時にレーキが過度に増え、フロア側面の空力シーリングが破綻すれば、必要な局面でリアダウンフォースを大きく失う。その事態を避けるための設計だという。

フロアとバージボードに見える開発余地
車体中央部では、大きなフラットフロアを支えるボディステイが確認できる。アンダーソンは、このフラットフロア領域が、今後最も早く開発が集中するエリアになると予測している。

また、フロア前縁下のスプリッターは、2022年以前の単純な曲率定義とは異なり、新レギュレーション下でより大胆な設計が可能な領域となっている。バージボードエリアも、2021年型を想起させるマルチエレメント構成への回帰が見られ、フロア側面をシールするための渦生成デバイスが今後発展していく余地がある。

レーシングブルズ VCARB03 エンジン・エアインテーク

ラディカルなエンジン・エアインテーク
しかし、実走で確認されたレーシングブルズのマシンにおいて、最も目を引いた要素は、エンジンのエアボックス形状と、そのフロント部分が極端にワイドである点だった。それは、実に異例な寸法を持つ二等辺台形の形状をしている。

その表面積を考えると、一般的なエアインテークと比べてほぼ倍に近い大きさであると主張することもでき、ラジエーターや熱交換器の配置を強く示唆している。これが、側面が極端に絞り込まれたプロファイルを採用している理由だ。

実際、このサイズは、当初想像される3分割構造以上に、内部に非常に複雑なダクト構成が存在することを示している。

この大型エアインテークには、2024年のRB20のように、コクピット両脇に2本ずつ設けられていたケースと同様、追加のダクトが組み込まれている可能性がある。

VCARB03はレッドブル本隊の前触れか
今回のシェイクダウンは、レッドブル・パワートレインズが自社開発したDM01パワーユニットの初走行という意味でも重要だった。ノーズやサイドポッドに見られる小さなフォードロゴが象徴するように、その関与は限定的に映る。

アンダーソンが最後に投げかける疑問は明確だ。レーシングブルズがジュニアチームである以上、今回実走したVCARB03は、果たしてレッドブル・レーシングが実戦で投入するマシンに、どこまで近い存在なのか。その答えは、今後の開発と実戦投入で明らかになっていくことになる。

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カテゴリー: F1 / ビザ・キャッシュアップRB / F1マシン