セルジオ・ペレス、F1キャリア初優勝を回想「この世界では勝利がすべて」
レッドブル・ホンダF1のセルジオ・ペレスが、F1出走190戦目で記録した初優勝を振り返った。

“チェコ”の愛称で知られるセルジオ・ペレスは2020年 第16戦サヒールGPで、F1キャリア初優勝を記録したが、この悲願の初優勝が実に素晴らしい形で達成されたことはついつい忘れられがちだ。

セルジオ・ペレスは、5番グリッドから決勝レースをスタートしたあとすぐに4位に浮上すると、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と3位争いを展開するが、いきなり出鼻をくじかれてしまう。ターン4でルクレールがブレーキングを遅らせたことで、チェコと接触してしまったのだ。

この接触でルクレールはフロントサスペンションを損傷してリタイアとなり、マックスも巻き込まれてリタイアとなったが、チェコはなんとか最終位からレースに復帰した。

このインシデントを受けてセーフティーカーが導入されると、チェコはピットインしてタイヤを交換し、彼のヘルメットに刻まれている「Never Give Up」そのものの猛追をスタートさせると、20周目までに10位までポジションを上げる。そして、2回目のピットストップで再びフレッシュなタイヤを手にして9位に浮上すると、チーム戦略も見事にはまる。54周目、バーチャルセーフティカー導入のタイミングでチェコはステイアウトを選択し、3位を手にする。

そして、62周目に2回目のバーチャルセーフティカーが導入されると、首位を走っていたジョージ・ラッセル(新型コロナウイルス陽性のルイス・ハミルトンに代わりメルセデスをドライブしていた)とバルテリ・ボッタスがピットインする。しかし、クルーの連絡ミスがあり、ラッセルはピットアウト直後に再びピットインしてタイヤを再交換することになった。

チェコはこのトラブルに乗じて首位を奪取し、そのままチェッカーフラッグを受けて87周のレースを終えた。この瞬間、チェコは50年ぶりのF1優勝メキシコ人ドライバーとなった。

そのF1初優勝からこれまでの間にチェコには様々なことが起きたが、2021シーズン開幕戦直前の時点でも、F1初優勝は彼の中でとても大きな意味を持っていた。開幕戦前にインタビューに応じたチェコは次のように語っている。

「最高の気分だった。長年を経てようやくF1初勝利を記録できたからね。一生忘れないだろう。自分と家族にとってとても大きな意味を持っている。素晴らしい瞬間だった」

サヒールGPはシーズン屈指の混戦となり、レース中に集中を失ってしまっても誰も文句を言えない展開が続いたが、チェコはプロ中のプロであり、集中を失うことはなかった。

「レースにだけ集中していた。どのレースでも上位進出と完走を意識している」

チェコはF1キャリア初優勝を冷静に振り返るが、ポディウムの頂点に立った瞬間を語る声には感情が残っており、ポディウムの頂点で彼が少し涙ぐんでいたことが思い出される。

「国歌が流れ始め、国旗が掲揚され、全員が自分のためにハッピーな気持ちになっている様子を眺める瞬間は本当に特別だ。僕はこの瞬間を10年待ち続けた。こういう瞬間は自分がなぜこの世界にいるのかをあらためて思い出させてくれる。そして自分がこの世界を愛している理由とこの世界では勝利がすべてだということも教えてくれる」

シャンパンファイトで目に赤くしたチェコがポディウムから降りると、今度は祝電が待っていた。「家族全員と電話で話して、自分の気持ちを伝えたよ。みんなが僕と同じくらい喜んでいた。最高に楽しい時間だったね」

しかし、チェコは、F1を目指している若きドライバーたちに「電話番号をむやみに教えるべきではない」とアドバイスを送っている。

「優勝すると、僕のキャリアなんてフォローしていないだろうと思っていた人たちから祝電が次々にかかってきた。正直に言えば、僕の電話番号をあそこまで多くの人が知っていることに驚いたよ。優勝するとF1ファンが世界にどれだけいるのかを実感できる(笑)」

レッドブル・レーシング・ホンダのドライバーとなったチェコがこれからも優勝を記録し続けることに期待しよう。

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カテゴリー: F1 / セルジオ・ペレス / レッドブル・レーシング / ホンダF1