ピアストリ「マクラーレンF1にチームオーダーは不要」チーム内競争に自信
F1スペインGPを前に、“フレキシブル・ウイング”規制強化や、バルセロナのサーキット特性がレッドブルF1に有利に働く可能性といった話題が注目される中、オスカー・ピアストリに向けられた質問の多くは、マクラーレンのチームメイトであるランド・ノリスに関するものだった。

今季ここまでに4勝を挙げたピアストリは、特にフェルスタッペンが優勝した鈴鹿とイモラの間に3連勝を達成したことで、開幕戦メルボルンでのスピンによる9位という痛手を乗り越え、ドライバーズ選手権でノリスを逆転した。

しかしモナコでのノリスの勝利によって流れは再び変わり、現在はピアストリが161ポイント、ノリスが158ポイントで、その差はわずか3点。追うフェルスタッペンが136ポイントで三つ巴の様相を呈している。

昨シーズン、マクラーレンはノリスがフェルスタッペンに次ぐタイトル争いの有力候補として台頭したにもかかわらず、チームとしてその立場を強く後押ししない場面があった。特にハンガリーやモンツァでは微妙な空気が漂い、モンツァではピアストリがオープニングラップでノリスを抜いて先行し、結果的にノリスのポイントを奪う形となった。

今年の状況は多少異なるが、ピアストリはチーム内でのこのような事態を事前に想定し、準備してきたことを明言している。チームの好調や信頼を台無しにするような争いは誰も望んでいないのだという。

「シーズン前から、個人の目標とチームの目標が完全に一致するのは不可能だということは分かっていた」とピアストリは語る。

「それについては、僕ら2人とも率直に話し合ってきたし、チームもよく理解していると思う。昨年末の時点で、もし今年も昨年終盤と同じくらい強いクルマで戦えるなら、こういう状況になると予想していたから、しっかり話してきた」

「でも、僕らは決してスポーツマンらしくない行動をしたり、チームや自分自身を悪く見せるようなことはしない。そんな人間じゃない。毎週末お互いに勝ちたいと思っているけど、取り返しのつかないダメージを与えるような一線は決して越えない。それは何度も言ってきたけど、僕たちは今回だけじゃなくて、これからもずっとチャンピオン争いを続けたいと思っているから。1回のタイトルを取るためにすべてを壊すのは愚かなことだと理解している」

オスカー・ピアストリ マクラーレン F1 スペインGP

この姿勢は、かつてマクラーレンに在籍したアイルトン・セナとアラン・プロストという2人の名ドライバーの関係に重なる部分がある。1988年と89年にそれぞれタイトルを獲得した2人は、やがてチーム内での対立が深刻化し、最終的には会話すら仲介者を通して行う状態にまで悪化した。

当時のきっかけは1988年イモラでの、スタート直後に順位を争わないという事前合意をセナが破ったとプロストが感じたことだとされる。セナにとっては再スタート後のレースだったため合意は無効という認識だったが、これを機に両者の対立は激化した。

それ以降、プロ意識にまつわる議論は、機材の優遇やオフコースでの駆け引きといった小競り合いに発展し、最終的には89年の鈴鹿での接触など、チームにもダメージを与える結果となった。

このようなケースはマクラーレンに限ったことではない。1986年と87年には、ウィリアムズのネルソン・ピケとナイジェル・マンセルが互いにポイントを奪い合い、アラン・プロストがその隙を突いて2年連続でタイトルを手にした。

昨年、マクラーレンは1998年以来となるコンストラクターズタイトルを獲得しており、今年はそれに加えて2008年ルイス・ハミルトン以来のドライバーズタイトル獲得も狙っている。そうした中で、2026年以降も契約が続くチームメイト同士が内輪揉めするような状況は避けたいところだ。

ノリスは少なくとも2026年末まで契約があるとされ、ピアストリも2026年以降の延長契約を結んでいる。したがって、マクラーレンがどちらか一方にチームオーダーを出すことは、ポイント差が大きく開き、かつ外部のライバルからの脅威が続いている状況にならない限り、可能性は低い。

ピアストリは次のように語っている。

「たぶん数学的に(逆転が)不可能になれば、そうなるかもしれない。でも今のところ、僕たちはどちらも自分の力でチャンピオンを目指したいし、自分のポイントを稼ぎたいと思っている」

「もちろん、後半戦になって本当に不可能、あるいはほとんど不可能な状況になれば、そこは変わるかもしれない。でも、少なくとも当面はそうなるとは思っていない」

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カテゴリー: F1 / オスカー・ピアストリ / マクラーレンF1チーム / F1スペインGP